表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lily in Black  作者: 小佐内 美星
第三章 夜の追憶
16/87

第十五話 .Dream

「うんうん、優雅に飛んでみたい」


 幼いころのリリーとシャーリィの二人は、翼を持つ天使が英雄となる物語の絵本を読んでいた。当時、二人の間では翼というものが流行していたのだ。あらゆる物語に出てくる、潔白と強さの象徴。とはいえ、二人は別に強さを求めていたわけではない。純白の翼を手に入れて、自由に空を駆け回りたかっただけ。空であれば、何をしていても大人に咎められることはない。二人で遊ぶにはとっておきの場所に思えていたのだ。


 そんな二人を見て、お爺は溜息をついた。当時はお爺と言うほど歳はとっていなかったけれど、その頃にはもう、そう呼ばれていた。


「絶対に、翼を授かろうとはしないことですよ」


 強い口調で言うお爺に対して、幼い二人は反発した。


「なぜ? いいことずくしじゃない。空も飛べるし、強いし、何より美しいもの」


 それに対してお爺は真っ向に否定するようなことはしなかった。


「確かに空を飛べるし、強いかもしれないし、美しいかもしれませんな。でもその本にも書いてあるはずです。二人はそのために、命を失うことができますか?」


 死。とにかくその言葉が恐ろしい時期がある。まだ生を受けて、楽しいことばかりが蔓延している幼い子どもなんかは特にそうだろう。だからお爺の言う「命を失う」ということが胸につっかえ、途端に不安になって、本を勢い良く閉じたことを覚えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ