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Second邂逅した少女と犬

私は、これから、君のためだけに、新しい演目を捧げよう。


しかし、君はこれを見たときに退屈だと感じるかもしれない。


本来なら在るはずがないモノだ。退屈に感じるのも仕方がないのか

もしれないね。


客人の退屈は名折れだろう。道化の、役者の、歌い手の、

それから……。


しかし、御客人が目の前に居るのに何も披露しない、演じない、歌わない、語らない、綴らない、描かない。魅せようとしない。

という事は在りえてはならない事だろう。例え、拙くとも。例え、その資格が無くとも。目の前に御客人が居るのなら。

全力を尽くした結果が退屈だとしても何も成さなかった退屈よりは幾分かはマシだろう。御客人が退屈だと感じても、創ったそいつが大声で好きだ。と言えるモノならばこの世の中数人には刺さるだろうサ。


っと、御客人にはどうでも良い事だね。言い訳にもならないかもしれないが、言い出すと止まらない性分でね。


さぁさぁ御客人!

始まりますは、一つのお話。在りえるはずがなかったナニカです。


だが、先に言っておこう。この話には、意味はあるけど教訓はない。

教訓を。教訓を。教訓を。教訓を。教訓を。教訓を。教訓を。


人々は、口々にそんなものを求めるけどね。叫んでも無駄さ。

どこにも在りはしないんだ。これにも隠された意味くらいあるけれど、教訓なんてお綺麗なものはありはしない。


それでもよければ、席に着いて聞くといい。紅茶もコーヒーも緑茶だって望めば何でもある。菓子も望めば、山ほどに。


どうせ、これは下らない。少女と犬の話だよ。


とある所に一人の女性がおりました。

彼女は少女の時に交通事故で目が見えなくなっていました。


  ―彼の公園にて―


女性はかつて犬出会った公園に来ていました。

女性は懐かしい木々の声に誘われて来ました。

かつてあったベンチは新しいものになっていて、彼女はそれに座って懐かしいモノ達と話していました。

 しばらくすると、誰かが来たようで足音が近づいて来ました。

足音が止まると、息を呑む音が聞こえました。どうやら驚いている様子です。女性は人成らざるモノと会話しているのです。気味悪がられるのには慣れていました。しかし、普段は大人しいベンチの近くの大きな桜の樹の葵が騒ぎ始めるので、近づいてきた人が誰か、何故、驚いているのに気づきました。


「あぁ、貴方はいつかの犬さんなのね」

「――ッ。覚えていてくれたのか」

「犬さんを忘れる事は難しいかな」


  特殊な人だったからね。


 犬にはそう続けて聞こえた気がしました。犬は、そう言えば。と話し始めました。


「あれからキミが最後に残していった言葉をよく考えてみたんだ。だけど、やっぱり僕は犬だよ。僕を犬だ。と定義付けた人がいるからね」


犬はそう言い切りました。


「そう。じゃあ貴方はあの時と何も変わらずに犬さんなのね」


女性はただただ受け入れました。


「変わらずに。とは違うかも。キミも僕も成長しているからね」


犬は明るく言いました。


「ところで質問があるのだけれど……」


犬は躊躇いがちに言いました。


「ええ。長い間会っていなかったもの。お互いに聞きたい事はたくさん在るでしょう? 」

「それもそうだね。たくさん在る」

「それで? 犬さんが一番聞きたかった事はなぁに? 」

「あぁ、うん。その……」


犬は言い淀みます。


「それじゃあ、心が決まるまで別の話をしましょうか。大丈夫。時間はまだまだたっぷり在るもの」

「いや。いい。先に言うよ」


犬は深呼吸をして口を開けます。


「キミには僕は生者か死者どちらに感じる? 」

「分からないわ」


女性は即答でした。


「私ね。この間墓地で知り合った人がいるのだけど、その人とお喋りしていたら、その人が実は幽霊だったって事に気づいたの」

「その人はどうなったの? 」


犬は女性の話を断って聞きました。予想もしていなかった理由に

興味を惹かれ、もはや自分の質問は二の次です。


「犬さんは本当に変わってないのね」

   

懐かしいわ。と女性は笑いました。


「その人はね、最期にThank you.って言ってどこかに行ってしまったわ。なんだが辺りが不思議な感覚に包まれたから、あれが成仏だったんじゃないかしら」


女性は懐かしそうに語ります。が、


「……え⁉ 英語圏の人だったの⁉ と言うか、キミ英語話せる様になったの⁉ 」


犬は驚きの連続です。


「いいえ。ロシアの方よ。あぁ、でもその人が生きていた時はまだソビエト社会主義共和国連邦だったみたい」

「キミどこの墓地に行っていたの⁉ 」


女性は、ふふふ。と笑って答えませんでした。


「変わらないわね」

「キミもね」


犬は、思わず溜息を落とします。随分と疲れた様です。


「私にとっては、犬さんが生きていようが死んでいようが、また、こうやってお話出来ているから関係ないわ」

「私の目が不自由でないのなら、犬さんの生死を観測して定義付ける事は容易だけれど、私は生者と死者どころか無機物なんかの声も聞こえるから、今の私が一般的な生死を観測する事は出来ないわ。もし、この目が見えたのなら、私はきっと犬さんと一生お話する事も無かったでしょうから、見えていてもいなくても、犬さんは私の中では生死の定義付けは無理ね」


どう? なんだか賢そうでしょ? と、ほほ笑む女性に犬は巡らせていた考えが馬鹿らしくなり、この件について考える事を止めました。なんて言ったって、そもそもの元凶である女性がどうでも良いといったのだから。




今日、この日は公園に居るのは二人。


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