第13話:時の神カイロス
『一応、私の能力の下位互換的存在なので、対応は可能ですが?』
「あー……一回会ってみて、面倒くさそうな奴だったら、死んでやり直すからその時は止めといて」
セーブポイントが気を遣ってくれたが、まあ会ってから決めても遅くない。
なんせ、死んだら無かったことに出来るわけだし。
ちなみにミカエルちゃんの巻き戻しと、セーブポイントの死に返りは全然別ものらしい。
ミカエルちゃんのは単純に、全ての存在に対して時間を巻き戻すスキル。
時間操作耐性を持つ上位神や、特別な存在からしたら面倒くさいスキルらしい。
なんせ、同じことを繰り返しやらないといけないから。
といっても、基本的には上位神と俺以外にその耐性を持ってるのは本当に僅からしい。
チジョーンが指示して勇者としてやらせている以上、他の上位神は文句が言えないとか。
逆にそれ以外の存在はいい迷惑だ。
仮にご飯を食べ終わったタイミングで、この子が時間を巻き戻したらまたご飯を食べないといけないとか?
今回は、大分巻き戻してたから、書類仕事をしてたり、力作業をしてた人とかしたら地獄だな。
あー、そういう作業をやらされるレベルの人には耐性がある事は殆ど無いらしい。
良かったね。
ただ、もしかしたら奇跡的な確率で一般的な魔物や人にその耐性があって、その事を気付いてなければ何度も同じ時間をやりなおす恐怖体験になるとか。
世にも奇妙なストーリー的な話が出来上がりそうだ。
ちなみにセーブポイントのやり直しはえげつなかった。
セーブした時点以降の未来を無かったことにするらしい。
完全にその後の時間の流れが消えるとか。
タイムパラドックス的なものも含め、全ての未来が消えると。
新たにセーブしてようやく、それまでの時間が確定した時間になるらしい。
こいつ、滅茶苦茶ハイスペックだよな。
時間を操る神を、下位互換と言ってのけるだけの事はある。
俺の魂はセーブした時間にとどまっているらしく、その魂と身体を繋いでいるとか。
うん、言ってる意味が分からない。
でもって、死んだ時点でそれまでの時間を全て消すのだが、そこで得た経験や技術、知識等は魂に刻まれているんだとか。
さらに、その情報を元に身体を新たに適応させて作り直すのがこいつの能力らしい。
『時空復活魔法とでも思って下さい。
前に言いましたよね? 転移や回復魔法に耐性は付かないと。
ポジティブな効果を発揮するスキルに対して、耐性は基本付きませんから。
身体強化耐性とか付いたら、身体強化は完全に死にスキルになりますし』
だってさ。
うん、ご都合主義だったわ。
まあ、助かってる面が大きいから良いんだけどね。
――――――
『取りあえず、カイロスを受け入れます』
セーブポイントが宣言した瞬間、とてつもなく大きなオーラ的なものを纏った何かがこのダンジョンに侵入したのが分かる。
ごめん、分からない。
言ってみただけ。
気配探知で何か来たのは分かるけど、所詮は感覚的なものだし。
とてつもなく大きなオーラ的なものは分からないけど、今まで会った中じゃトップクラスに強いのは分かる。
純粋な肉体能力だけ見ると。
テューポーンに匹敵するかもしれな。
そこに、時間を司るってくらいだから、時空魔法系のスキルが付いたらテューポーンよりは強いと思う。
入って来たと思ったら一直線にこっちに向かって来る。
凄い事のように言ってみたが、俺達も入り口付近で談笑してる訳だから入ったら視認出来るし。
そりゃ、誰だって一直線に向かってこれますね。
『相変わらず、真面目に出来ないのですか? 相手は一応神ですよ?』
「ほお! じゃあ、つえーんだな? オラ、ワクワクしてきたぞ!」
『多方面から色々とシャレにならない圧力が掛かりそうな発言ですね』
「死に直せるからでーじょぶだ!」
『はあ……神は死んだとかって展開にならなければ良いですけど』
「いや、ふざけた奴なら殺すけどね。もしくは、俺が死ぬけどね」
『もう、良いです』
セーブポイントとのんびりとやり取りをしたお陰で、かなり平常心を保ってられる。
というか、神様を相手にすることでテンションが上がってるのは事実だし。
「カ! カイロス様!」
侵入者の姿を捕らえたミカエルが、かなり狼狽えている。
どうやら、お知り合いらしい。
「誰?」
「いや、私は分かりませんよ」
「グルルル!」
ローレルがカオルちゃんに小声で訪ねているが、この二人は知らないらしい。
あと、ファングがめっちゃ威嚇してるとこを見ると、かなりつおいのかもしれない。
『つおいとか言わないで下さい。本当に緊張感が無い方ですね』
石ころがまた小言を言って来る。
お前はおかんか!
いや秘書だった。
「ふんっ、折角【再起必倒】のスキルを与えてやったのに、半人半魔も倒せないとはお前にはガッカリだよ」
「も……申し訳ありません」
おーお、可哀想に。
ミカエルちゃんが、カイロスの威圧にやられてガクブル状態だ。
あと、ハンマって地上最強だからね?
あっ、これもアウト?
セーブポイントさん厳しすぎやしないかい?
なんか、カイロスさんに胡散臭そうに見つめられてる。
ウィンクでもした方が良いのだろうか?
「貴様が最近勘違いしてる、小虫か?」
「ふっ……案外、勘違いしてるのはあんたの方じゃ無いのか?」
さっきまでミカエルちゃんに向けられてた威圧がこっちに向けられる。
取ってて良かった威圧耐性。
「ん? お前じゃ無いのか?」
「そうじゃねー! 俺を小虫と侮っていることが勘違いかもなって意味だよ! 自分で説明させんな! 照れるだろ!」
流石ミカエルちゃんの上司っぽい人。
俺の発言に驚いた様子を浮かべたあと、不安そうに訪ねてきた。
敵サイドに不安しか感じない。
あー……こっちの面々も割と酷いの多いわ。
取りあえず、常識人のイコールと、メガララ、ゴアルガを思い出して心の平穏を保つ。
相手側は……メイベルたんくらい……いや、彼女も若干怪しい空気が。
そうだ、メイベルたんに久しぶりに会いたくなった。
「この戦いが終わったら、メイベルたんに会いに行くんだ」
『戦う気満々ですね。あと、マスターの死亡フラグネタ天丼は寒いので、これっきりにしてください』
酷い……
こうなったら、後からジワジワくるレベルまで繰り返してやる。
2話書き上げる事が出来ました。
もう寝ます。
この頑張りを評価して頂けると嬉しいです。
えっ?誰もやれとは言って無い。
そうですね。
おやすみなさい。
次は明日の6時投稿予定です。




