第8話:狼が仲間になりました
『レベルが上がりました!』
うーん、死んだら狼が復活するのは良かったけどさ……
またも宝箱から出てきたのは、狼の籠手だ。
いま両手に籠手を装備している状態だけど、セーブ部屋には……ああ、あの部屋の事はセーブ部屋と呼ぶことにしたんだけど、そこには大量に持ち帰った籠手が転がっている。
すでに10回以上狼を倒した結果だ。
もはや、ここの狼では敵にすらならない。
――――――
そしてレベルが90に届きそうになった時に、狼の行動に変化が起きる。
それまでは問答無用で襲い掛かってきた狼が、かなり慎重な様子でこっちを窺うようになってきたのだ。
こっちが前に出ると、向こうが同じだけ下がる。
こっちが下がると、向こうも前に出てくる。
ようやく敵として認めてもらえたようだ。
でもさ……
レベル的に十分かもしれないけど、耐性系のスキルがね。
「グアアア!」
こっちが後ろを向いた瞬間に狼が飛び掛かってくるが、振り向きざまに顔に蹴りを叩き込む。
思いっきり壁まで叩き付けられた狼が、怒りを露わに火の玉を乱射してくるが全てを正面から受けきって目の前まで詰め寄る。
苦し紛れに放ってきた爪を無防備に体で受ける。
「効かないっつーの!」
そして右手の爪を出した状態の籠手で、その腹部を貫く。
勿論その程度で死ぬような奴じゃないが、肩に噛み付かれようとその歯が通る事は無い。
それも無視して左手で喉を貫く。
『レベルが上がりました』
レベル85から1ずつしか上がらなくなったけど、まだまだ経験値はたくさんあるようで良かった。
というかさ……レベルカンストってどのくらいだろう?
まあ、カンストまで狼を倒し続けてもいいけど、99なのか、100なのか、255なのか、999なのか……
目的地が見えないと辛い。
ちなみに身体能力もヤバい事になってきた。
その場で垂直跳びして空中で3回転とか出来るようになったし。
壁を蹴って移動する事も出来るようになった。
さらに爪を壁に引っ掛けて登ることまで出来る。
これは、かなり強くなった気がする。
――――――
それからも狼を倒し続け、宝箱も無視し続ける事約200回くらいかな?
とうとうレベルアップに2回、3回と倒さなくならないといけなくなった時にそれは起こった。
レベルが135になった時だ。
てか、普通に100超えた……999が限界だとすると、まだまだ雑魚か。
「クーン」
部屋に入った途端に狼がガタガタと震え出して、耳をペタンと倒してその場に伏せてしまった。
尻尾を股に挟み、こっちを不安そうに上目遣いで見つめてくる。
こうなると不思議な事に、さっきまではレベル上げの餌にしか見えなかったのに、可愛く思えてくる。
試しに頭を撫でてやると、されるがままに目を細める。
手をのけると、その場でゴロンと横になり腹を見せてくる。
「ハッハッハッハッ!」
「おいおい……出会った当初の野生はどこいったよ……」
そんな事を思いながらも、ひとしきり狼の腹を撫でた後で、狼を連れて一旦セーブ部屋まで戻る。
部屋の中には狼の籠手を敷き詰めた絨毯状態になっていたが、その上で寝転ぶと意外と気持ち良いのでまあ良いか。
不思議と毛皮っぽいのに獣臭さも無いし。
連れ帰った狼もお気に召した様子で、その上をゴロゴロと転がっている。
うん、もはやただの犬だな。
ここらで、一度セーブしとくか。
犬部屋までダッシュで行って、犬連れて帰ってきただけだから時間も10分も経過してないし。
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
はいを選択すると、なんとなくセーブポイントが嬉しそうに明るく光った気がしたが、久しぶりにセーブしたからだろう。
セーブした時の光を、無意識のうちに勝手に前向きに解釈したんだろう。
特に気にする様子もなく、暫く犬……もとい狼と戯れる。
うーん、そろそろ真面目に探索しないとな。
こいつの餌も要るだろうし。
取りあえずステータス確認の為に死んでくるか。
――――――
レベル:135
名前:ヨシキ・クラタ
スキル
初級スキル
飢餓耐性レベル:10
酸耐性レベル:16
格闘レベル:18
電撃耐性レベル:8
罠探知レベル:15
中級スキル
痛覚無効レベル:10
恐怖無効レベル:10
威圧無効レベル:10
飢餓無効レベル:2←NEW
炎熱無効レベル:15
酸無効レベル:7←NEW
武術レベル:10
爪術レベル:7
罠回避レベル:15
上級スキル
物理攻撃無効レベル:4
炎吸収レベル:5
クラタ流格闘術:開祖
罠無効レベル:10
――――――
初級スキルが統合されて、上級スキルを獲得することも出来た。
罠無効レベルが上がって罠が殆ど発動しなくなった時は焦ったが、罠無効が10になってパッシブからアクティブに切り替わって一安心だ。
罠を認識した状態で、スキルを発動しなければ必ず発動してくれるので助かる。
けど酸も効かなくなってきたので、罠を踏みまくったら雷が放たれる罠を見つけてテンションが上がった。
あと、格闘がとうとう流派になったらしい。
しかもクラタ流って……俺が開祖らしい。
弟子は居ない。
というか、爪って主人公っぽくないから剣が欲しい。
でも、爪もカッコいいから良いけどね。




