第11話:第1回ダンマス代表者会議
「良く集まってくれた。私が仮盟主のクラタだ……時止まりのダンジョンのマスターやらされてる」
「では、皆さん順番に簡単な自己紹介を。クアザイ・ヴァルハラのダンジョンマスター、イコールです」
隣に立ってる、爽やか青年が自己紹介をして頭を下げる。
長命種や死んで無い不死者を司る存在だ。
ちなみに時止まりのダンジョンって、いきなりダンジョンの効果的なのバレるから誤魔化そうかと思ったけど、セーブストーンに相談したらバレたらバレたで良いかという事になった。
「獣王リカルド……ビーストルのダンジョンから来た」
一応表面上は森林都市のダンジョンのマスターだ。
獣人や獣タイプの魔物を取り仕切ってる。
「メルのダンジョンから来たメガララです。虫をまとめてます」
そのリカルドが連れてきた、美人さん。
いや、可愛いに近いかな?
眼も大きいし。
よく見ると、黒目が複眼。
ちょっと……
ありました、立派な顎も。
いや、しゃくれてる方じゃないよ?
なんでもかみ砕きそうな、凶悪な形をした虫の顎ですね。
「竜王テューポーン、タルタロスのダンジョンのマスターだ。竜の長だ」
うんうん、テューポーンも落ち着いているな。
テューポーンに付きしたがってるのは、竜だけじゃなくて悪魔や亜人の多くも居て割と最大派閥だった。
でも、魔族の多くは別。
魔族を取り仕切ってるダンジョンマスター、バベルのダンジョンに居る魔王ゴアルガさん。
残念ながら不参加。
不干渉を選んだ。
曰く、ちょっといま厄介事を持ち込むなと丁寧に言われた。
――――――
「初めましてクラタさん。お話は各方面から聞いてますよ?飛ぶ鳥を落とす勢いですね」
「いえ、今回はお会い頂けて有難うございます」
この人も常識人。
ダンジョンに近づくと、案内人を寄越してくれた。
ジャックさん。
悪魔を謀って天国と地獄両方から嫌われた男らしい。
蕪の提灯とか……しかも中に蝋燭入れてるのに蕪自体に光る魔法掛けてた。
残念。
いまお昼だから。
ダンジョン内も、俺が来ると分かって灯りをつけてくれてた。
なんでランタン持ってるの?
一応イメージ大事だから?
これ持ってないと、分からない人が多い?
うん、有名人なんだ。
誰?
ジャックオーランタンの人だった。
南瓜じゃないのね?
キョトンとされた。
そうですか。
案内された部屋に座ってたのは、初老の男性。
うん、ナイスミドル。
でも優しそうな顔してる。
「実は、ダンジョーンが死んだから、これ以上ダンジョン増えないので皆で人間に対抗してバランスが取れる数のダンジョンは、最低限死守しようという話になってまして」
「あー、聞いてます。でも残念ながら私達は不参加で」
にべもなく断られた。
その表情は申し訳無さそうだ。
何か事情が?
「実は、魔族のダンジョンが統一されたのって300年前で本当に最近の話なんですよね」
300年前が最近か。
それ、最近って言わないから。
こいつらも長命種か。
「でもって、一部のエルフやドワーフ、ハーフリンクとか人間のダンマスも取り込んでます」
「うんうん、なるほど」
「ただね……まだまだ一枚岩と呼ぶには拙い状況で、今はこっちを取りまとめるのに必死でして」
なら、是非同盟に参加して頂いて、お手伝いさせて頂ければ。
簡単にその絆、盤石なものにしてみせましょう。
簡単な話し合いで。
耐性ウハウハ出来そうだし。
「そう、単純でも無いんですよね? 参加するからには、他の魔族たちへの体面上私が盟主にならないといけない」
「いいよ! 是非盟主やってよ!」
まあ、せっかく魔族をまとめたのに訳の分からない団体に入ったあげく、一般参加の立場とかゴアルガさんに不満を持ってる連中にとっては格好の餌だもんね。
よし、盟主を是非やってもらおう。
これで、万事解決。
「ハッハッハ! ご冗談。私より強いテューポーン様や、尊敬するイコール様を差し置いて出来る訳無いじゃないですか。しかもそのテューポーン様を簡単にあしらうクラタ様が現盟主ですよね?私には到底無理ですよ」
笑いながら断られた。
割とマジなんだけど?
やって?
盟主。
「俺が口利いたら、普通に盟主になれるって」
「あの……そもそも、立ち上げたのクラタさんですよね? でもってイコール様意外は殆ど武力で降してますよね? 正直言って貴方の上に立つのが一番怖いんですよ」
「またまた! これでも話が通じる系だと自負してるけど?」
「ただでさえ、現状で胃が痛いのに……失策一つで簡単に私を殺せるような人達相手に代表とか……貴方が許せば他の人は反抗出来ないでしょうね……結果、無言の圧力に囲まれると。私、血を吐きますよ?」
あらやだ、意外と繊細なんですね。
魔族なのに。
まあ、色々なタイプの魔族が居るからね。
「むしろ、クラタさんがいま私を降して魔王を名乗って貰えれば」
「いや、良いよ。魔王ってなんかアレだし」
「本人を前に、アレとか言わないで下さいよ!」
――――――
「私の心の平穏の為に、陰ながら助け合いつつの表立っては不干渉でお願いします。都合の良い話だとは思いますが」
「まあ、そっちが潰れても困るから良いよ。落ち着いたら、声掛けてね。盟主の椅子も開けてるから! 魔族を取り仕切った手腕なら期待できそうだし」
「結構です。末席でも空けておいてください」
頑なだった。
という事で、魔族とそれに付き従う一部の亜人は不参加と。
取りあえず、主要所は組み込むことが出来た。
魔王?
いや、俺は今回の同盟……ダンジョン相互保護互助会の会長です。
魔王なんて名乗らないよ?
だから、会長って呼んでね。
「クラタ会長に忠誠を!」
「誓わなくて良いから! 同盟だから!」
テューポーンが変な事を言い出したから、場が変な空気になった。
「あそこに居るのが、黄泉のダンジョンのマスターブラムスね……今回の会場提供者です! 有難うな」
「いえ……お役に立てて幸せです」
死んだ魚の目で、メンバーを見つめるブラムス。
流石にもう可哀想だから、椅子を用意するか。
椅子足りない?
仕方ないなあ……ロダンの椅子使って良いから。
一番良い椅子なのに、座椅子だから頭がテーブルの下。
あっ、声を押し殺して泣き出した。
おい、ミカンの箱持ってこい。
木箱に布をかぶせてあげる。
すまんな、急ごしらえの椅子で。
「じゃあ、方針を決めようか」
次は17時予定です。
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