第5話:祝同盟締結
「ハハハ、元が凡人ですからね。もし才あるものが私と同じだけの年月を過ごせば、恐らくここら辺一帯をまとめるくらいにはなってたと思いますよ」
「いやいや、凡人って。まあ、努力の数千年と思えば、それも一つの才能ですよ」
「うーん、でも実際200年くらい寝てた時期もありますし」
イコール君、結構な経歴を持ってた。
一時期、どこぞの国王なんてのもやってたらしい。
その時に、歳を取らない事が原因で吸血鬼王として国を追われたらしい。
最初の家臣は、歳を取らない理由を知ってたとか。
でも、世代交代を繰り返すうちに反イコール勢力なるものが、水面下でじわじわと力を増していたらしく。
最終的には、半数以上の貴族が発起して謀反になったらしい。
イコール君は、自分が赤子の頃から見ている者達を殺すのは忍びないと黙って姿を消したとか。
といっても、実際はイコール君の力で持ってたような国だから。
すぐに周辺国家に飲み込まれて、バラバラになったとか。
「あー、ヘルシングは私をヴァンパイアとして退治に来たんだけどね。意気投合しちゃって」
「ええ、不死者となればより多くのヴァンパイアの被害を防げるかと」
イコールの右後ろに控えていたヘルシングが誇らしげにしている。
それもそうだろう。
イコールは種族的には半神族になるらしく。
神に仕える系の意識が高いヘルシングにとっては、現世神にあたるらしい。
ただ、ダンジョン内の部下達の気持ち悪さに慣れるのに当分掛かったと。
ジルは、ヴァンパイアの神を探して辿り着いたらしい。
で、実際会ってみると気のいい若者。
十字架付きの棺桶で眠るような古風なヴァンパイアの彼もこの地の神を信仰していたらしく、イコールに降ったとか。
チジョーンとは違う神らしい。
セーブポイントに聞いたら、一時この世界の運営を手伝ったあと地球に戻ったらしい。
結構な数の神様が地球で隠居を決め込んでて、割と神の世界もブラック化しつつあるとか。
八百万の神が一斉に日本に移住した時は、ガチで天界戦争……第二次ラグナロクが勃発しそうになったとか。
「それで、一応ダンジョーンが居なくなったからね。この世界のダンジョンはこれ以上増えないんだわ」
「そうなりますね」
「となると、人間共に攻略されてダンジョンコアを壊された分だけダンジョンの数が減ってくらしい」
全部、セーブポイントの言い分だから、らしいとしか言いようが無いけど。
ぶっちゃけ、俺には関係無いと言いたいところはある。
全てのダンジョンが無くなったところで、残念ながら俺のダンジョンの攻略は実質不可能らしいし。
でも、そうなると常に周辺国家の連合軍に囲まれて、ダンジョンから一歩も出られなくなるレベル。
しかも勇者から常に襲われるというオマケ付き。
それは、ちょっと勘弁願いたい。
現状、ダンジョン間の転移は出来るが外の世界に直接転移が出来ない。
出かけようと思ったら、取りあえず入り口周辺の兵士を蹴散らしてからのお出かけ。
凄く面倒。
だから、ある程度のバランスは必要だと。
「で、ダンジョン同士で同盟を組んで、人間に対抗しようという訳ですね」
「まあ、いずれは人間にダンジョンの必要性を知ってもらって、人間の協力者も欲しいところだが」
「そのためには、無秩序にダンジョンの外に魔物を放つようなダンジョンマスターも配下に加えないといけないですね」
そうなのだ。
人間が来なくても、こっちから喧嘩を売るダンマスも居る。
致し方ない部分もある。
「ぶっちゃけ、動物系のダンジョンや虫系のダンジョンって、数が増えすぎて勝手に出てってるらしいな」
「そうですね。ネズミとか、20日置きに出産を繰り返す種類も居ますし、虫なんて数千匹、数万匹単位で生まれるものも居ますから」
「頭が痛い……」
流石に、子供を産むなとは言えない。
できれば、ダンジョン内で食物連鎖を完結してもらいたいところだけど。
中には繁殖力も、力も強い魔物も居るらしくそうなると最悪だ。
そいつらが外に出ると災厄となる。
そいつらの所為で、ダンジョン内に居場所が無くなって外に出る奴等も人を襲う。
そういったダンジョンを優先的に勇者が潰してくれているのは、唯一の救い。
「ところで、こういった同盟を組むにあたって話を通した方が良い連中は大体コアから聞いた。だが、まとめ役に適しているのが誰かと思ってな。話した感じイコールは元人間だし、結構向いてる気がするんだけど? 盟主とかどう?」
「謹んで辞退致します」
「だよね? 面倒くさそうだもんね」
「いや、目の前に私より遥かに強い人が居るのに、その人の上に立つとか」
「上に立つのに必要なのは力よりも、カリスマだぞ? その点は半分神なら申し分無いと思うが」
できれば引き受けて頂きたい。
人格も問題無いし。
というか、見た目の所為でつい年下を相手にしてるつもりになる。
実際は遥かに年上。
むしろ、類人猿?
「あー、皆さんクラタさんみたいなら良いんですけど、魔族や獣人族とかって力こそ正義。力こそカリスマみたいなところがありますからね……あとドラゴンとかって、結構相手するの面倒くさいんですよね」
「あー、有り難くない情報を有難う」
そうか、ドラゴン……面倒臭いのか。
どうやら、勝っても負けても面倒臭いらしい。
こっちが勝ったら勝ったで、度々再戦を挑んでくるとか。
そのくせ、わざと負けたら負けたで、今度はあっちが凄い上から目線で偉そうになるとか。
もう、すでに俺の中で嫌な奴認定確定なんだけど。
『取りあえず、トップのドラゴンさえ倒せば3番手以下は挑んできませんよ?』
「2番手は?」
『まあ、倒した者に勝てば実質最強の座を得られるので、トップと同じ勢いで挑んでくるでしょうね』
なにそれ?
マジで面倒くさいんですけど。
取りあえず、イコールとは同等の格付けで現状の盟主は俺。
俺とイコールと同じ考えを持ってくれたマスターは同じく同格の同盟員。
意見が合わないだけで、別に敵対する気が無いマスターはお互い不干渉。
歯向かう奴は、容赦なくボコって配下に。
現状おさらい。
盟主は俺。
同盟員はイコール。
配下はブラムス。
やっぱり、イコールの方が格が上だった。
人格という格が。
――――――
イコールが神聖魔法という、聖属性魔法の1段階上のレアスキルを持っていたので、一方的に俺が防御するという手合わせを受けた。
一応、セーブしに戻ってから喰らい続けた。
他にも、痒くなる攻撃とか。
「お前の攻撃めちゃくちゃ痒いぜ!」
と言ったら
「そうでしょう、そうでしょう! 地味に嫌な魔法ですよねー。これ、足の親指とかの皮膚の硬いところとか、あと背中の微妙に分かりづらい場所かにすると、皆さんの面白い表情が見れたりもするんですよー」
普通の返事が返ってきた。
流石努力の数千年。
確かに痒いから掻くけど、微妙にピンポイントでそこがどこか分からないとか嫌すぎるもんね。
たまにあるよね?
あれ、なんなんだろう……
とりあえず、イコールが色んな状態異常魔法持ってて、嬉しい。
女性に嫌われる魔法。
うん、完全に耐性を取るまで喰らい続けた。
気分的に、これをマスターしたら女性に何があっても嫌われない気がしたし。
目が見えなくなる魔法はまだいい。
でも……
視界が白黒になる魔法。
視界が反転する魔法。
動体視力皆無になる魔法。
視界が真っ赤になる魔法。
視野が狭くなる魔法。
目に関して、嫌らし過ぎる魔法が多すぎる。
何か、よっぽど嫌な思いでもした奴が居たのだろうか?
反転は本当に気持ち悪かった。
味覚が無くなる魔法や、耳が聞こえなくなる魔法。
嗅覚が無くなる魔法。
なんだろう?
どこぞの金色の鎧のイケメンみたいなレパートリー。
状態異常って色々あるのね?
全部喰らいまくった結果、なんか完全状態異常耐性【序】とかってスキル覚えた。
完全状態異常耐性【序】:全ての異常に対して正常な状態を保つようにレジストする。初級スキルは全て完全レジスト、上級異常も平均で3割レジスト出来るらしい。
特殊状態異常に怪我や、普通の病気も入るらしい。
完全状態異常無効【無印】まで昇華させると、そういった特殊異常も防ぐらしい。
あー、これ絶対欲しいわ。
もう、物理無効とか、魔法無効どころの騒ぎじゃないもんね。
水虫や腋臭とか、剥げとか、肥満とか?
体温の変動も状態異常。
だから、発汗もしなくなる。
素晴らしい!
ん?
もしかして、俺の息子が成長するのも状態異常に当たるのか?
これって、マスターしたら……
超有能スキルとったら、無能になりましたとか……笑えないんだけど?
『それは正常な反応ですので、大丈夫です。天秤に掛けるものがくだらなさすぎます。仮に無能になっても元々使い道が無いので問題ありませんから、安心して取ってください』
「いや、ゆくゆくはカーミラたんに、ヘルたんに……メイベルたんとか?」
セーブポイントに怒られた。
失礼な。
他に言い方があるだろう。
でも安心した
イコールと話し合って、一種族ずつトップと話すことにした。
最初は、力こそ正義の獣人族。
ここは、トップ一強なのでそこさえ押さえれば楽との事だった。
よし、頑張ろう。
次は一応17時予定です。
この章は、ほぼほぼ進行回になっていくかと。
そう、侵攻回章ですね……なんでも無いです。
少し疲労が……




