第3話:残念吸血姫再び
「ようこそ、我がダンジョンへ」
相変わらずブラムスのダンジョンだったりするけど。
まあ、俺の物は俺の物、部下の物も俺の物理論だ。
ガタガタガタガタ……
めっちゃ、カーミラたん怯えてたりするけど大丈夫かな?
『ここは、面を上げよとでも言った方がいいのでは?』
「そうかなあ? なんか偉そうじゃない? まあいいか……面を上げよ」
「ひっ!」
元主従揃って同じ反応だった。
てか、ひっ! って酷くないかい?
何気に傷付くんだけど?
石ころの言うことなんか、信じるんじゃなかった。
「ヴラドは一緒じゃないんだね。普通はこういう時って、元上司が同行して連れてくるもんだと思ってた」
「ひゃいっ!」
誰この子?
前来たときの不遜な態度はどこに行った?
「もうちょっと、リラックスしてもらって大丈夫なんだけど?」
「へへー」
お前はどこの農民だ。
また、頭を下げちゃった。
話が全然進まないんだけど?
「今日はなんで呼ばれたか聞いてるよね?」
「……」
「ストップ!」
何故、急に服を脱ぎ始めた?
いや、嬉しいけどさ。
本当に何を聞いてきたんだ?
「あー、色々と誤解があるみたいだな?」
「?」
ドレスの胸元を開いた状態で固まって、首を傾げるカーミラ。
ヴラドナイス! と言いたいところだがそうじゃない。
あいつ……本当に偉い吸血鬼なのか?
「まず、ブラムスが俺の配下になったは知ってるな?」
「ひゃい」
いい加減、落ち着いて欲しい。
困った表情でヘルを見る。
「あー、カーミラ。そう緊張しなくても良いのよ? 旦那様は、凄くお優しいお方だから」
「えっ? ブラムス様を首だけ残して、四肢を切り落としたうえで、全てを別々の容器で聖水漬けにされたとお伺いしたのですが?」
あー……あれって、本当に鬼畜な所業だったんだね。
石ころに聞いたら、人間で例えると硫酸風呂に首まで浸からせた状態で、延々フルポーションを飲み続けるような罰だと言われた。
うん、最悪だ。
それ、なんて拷問?
いや、まあ目的としてはそれに近いものがあったけど。
途中で痛覚緩和を覚えそうだけど。
普通の人は無理なのかな?
痛覚無効までいったら、炭酸風呂みたいな……その前に、酸耐性が育ち始めるから……
うん、割と早い段階で炭酸風呂みたいな感じで、心地よくなれそうだけど。
『痛く無ければ良いじゃないか、という問題でも無いのですが』
「そういう問題だと思うけどね。死んでやり直せたら、なお良いけどさ……というか、その硫酸風呂に俺は何度も入って来たんだけど」
『あれは、相当きてましたね……汚れも一緒に溶けるような気がするとか……』
頭がおかしい人みたいに言われた。
確かに復活したら、汚れは消えるんだけどさ。
硫酸風呂から生還して、再生したら確実にデトックスできる気がするんだけど?
あっ、放置されてるカーミラたんの目が、虚ろになって宙を彷徨ってる。
だめだ、だめだ。
しっかりと、心と身体のケアをしないと。
『どちらも必要ありません』
身体のケアをしないと。
『はぁ……』
文字で溜息を吐くな、溜息を。
その後、暫くカーミラたんに懇々とここに来てもらった理由を話したりして、ようやく少し落ち着いた。
「にしても、主は無茶苦茶じゃのう……まさか、ヴラドではなくブラムス様に直接向かわれるとは。ただ、簡単にどうにか出来る実力を持っておったらそれもさもありなんか」
おお、カーミラたん復活。
あと、ヴラドがカーミラたんを売った話を、ある事無い事含めて話したらヴラド様からヴラドになった。
あんなに部下として、一生懸命仕えてたっぽいのにな。
「取りあえず、カーミラは俺の秘書2号ね」
「2号?」
「1号は一応、俺のとこのダンジョンコアだから」
「なるほど……」
いったんカーミラを連れて、自分のダンジョンに戻る。
『宜しくお願いしますね……そういえば、以前一度貴女に割られそうになったのですが、その事は気にしてませんので』
「ひっ!」
気にしてないなら、何故わざわざ言った?
『えっ? 一応、本当に気にしてないので、そのアピールをしたのですが?』
こいつ、表情も声の抑揚も無いから分かりにくいんだよね。
どっちが本心なんだろう?
「申し訳ありませんでした」
ほらー、カーミラたんがまた怯えちゃったじゃん。
頭を下げてガタガタ震えているので、肩にそっと手を置く。
ビクッてなったし。
しかも、めっちゃこっちを不安そうな表情で見つめてくる。
それから、覚悟を決めたような表情で服を脱ぎ始める。
「ストップ! 何故脱ぎだした?」
「ひっ? ここは寝室ですよね? まずは、奉仕せよということかと」
そうだった……
ダンジョンコア、もといセーブストーンがある部屋って俺の寝室だった。
いや、秘書1号を紹介するって言って連れてこなかったっけ?
でもって、寝室に連れ込んだと……
古い手口だね。
珍しいものがあるから、俺の部屋に来ない? みたいな?
まあ、嬉しいから許すけど。
「取りあえず、奉仕はしてもらいたいけど、仕事としてされるのは違うから! 俺はそこらへん、本人の意志を尊重すらから!」
「ふむっ、てっきり無理矢理が好きなのかと思うたが。主様はお優しいのじゃな?」
普通じゃね?
この世界の普通が分からないけど。
取りあえず、カーミラたんが俺の秘書として一緒に行動することは決まった。
ヘルも急にべったりになったけど。
まあ、いっか。
というか、ブラムス帰って来ないな……
――――――
「ブラムスが、イコールに捕まりました」
「やっぱり!」
ベルゼブブから借りた蠅が、報告してきた。
やれやれだぜ!
どうやら、直接イコールさんと話に……いや、別に放っておいてもよくね?
もう、ブラムスを配下にした目的は達成してるし。
次は17時頃投稿予定です。




