第6話:領主とご飯!厄介事は回避してもやってくる件
「それにしても傑作だったな。ヨシキあれわざとだろう?」
「フフフ、あの強面に詰め寄られたら仕方ないんじゃないのか?」
ミランが博士モード、メイベルが領主モードで談笑している。
話題は俺がギルドで、荒くれものを撃退したついでにギルマスをのした話だ。
話の主役である俺は、机の上に並べられた料理に夢中だが。
久しぶりにまともな手料理を食った。
最近はセーブポイントが食料を出せる事を知ったから、ちゃんと食べてたけどいつ収納されたものか分からないし、見た目出来立てホカホカの料理だったりするけど賞味期限とか確実に過ぎてるだろうしね。
『私が能力で作り出して収納してます。時間は経過しないので出来立てですが何か?』
手も足も無い存在が作った料理とか。
無機質な存在が作っただけあって、味も無機質なものに感じるし。
『酷いです。真心こめてお作りしたのに』
プログラムで無機物に心があるかすら怪しいけど。
『いい加減、その設定から離れてください』
取りあえず静かにしてほしい。
最近はバイブ機能ならぬ、電流ビリビリ機能でお知らせしてくる技を覚えやがった。
まあ、電気だから吸収するだけだけど地味にビックリする。
それにしても肉もちゃんとあるけど、芋が多いな。
流石中世風異世界。
主食はジャガイモか。
いや、この頃のジャガイモは悪魔の植物か?
観賞用の植物で、毒があるというのが世間の認識だったはず。
まあ、キリスト教も無いだろうか、関係ないか。
うん、やっぱり現代人が作った、無駄に技術力の高いVRなんだろう。
味付けも似たりよったりだから、調味料もオーソドックスなものしかないと。
いや、データ量の問題で味にそこまで、バラエティを付けられなかったのか?
ただ鶏ガラや、胡椒、砂糖、塩、香草があるお陰で別の料理だとは分かるけどね。
加工調味料とかは無いらしい。
それと、セーブポイントが後から付ける調味料は大体持ってるから別に良いか。
ということは、データ量の問題ではなく設定か。
なら、マヨネーズ無双で、俺SUGEEEE! も可能なのかな?
そこらへんの事は、まだ見ぬ知識チート担当のトラベラーに期待しとこう。
「しかし、Aランクの冒険者すら一撃とは……トラベラーとはいえ、そこまで強い奴は見た事無いな」
ん? 料理に舌鼓を打って居たら、メイベルが何やら気になる事を言っている。
トラベラーってのは、みんなチートじゃないのか?
チート俺TUEEEを楽しむゲームだと思っていたのだが。
まあ自由度が高いから、それぞれの楽しみ方があるんだろう。
「確かトラベラーでそのレベルっていったら、代々の勇者以外は100年に一人現れるかどうかといったところだったと思う」
100年って、スパン長いなー。
それだけチーターがこの世界に来てるなら、もっと世界観が発展してても良い気がするんだが。
「勇者とか居るのか?」
「ああ、300年前の勇者で剣神アレク、180年前の聖神クリスは勇者でトラベラーだな。まあ勇者ってのは早い話が、この世界の主神である女神チジョーン様に遣わされたダンジョンブレイカーの事らしいが」
「痴女?」
『チジョーン様ですよ! そのネタ毎回やるつもりですか?』
「それはトラベラーとはいえ、不謹慎だぞ?」
ミランとメイベルと話してるのに、セーブポイントが突っ込んでくる。
そういう事は言わないお約束だろ?
黙って見守ってくれ。
あとミランに怒られた。
そんな昔から異世界人が来てるなら、スチームパンク宜しくな異世界ファンタジーになってるはずだな。
うん、これも設定ってことにしておこう。
それよりも、話題を変えよう。
「ちなみに勇者ってのは何人も居るのか?」
「いや、勇者は常に一人だ。現在の勇者は北の大陸に居る、武王ローレルだったっけ?」
「ふーん、じゃあ北の大陸のダンジョン以外は手付かずなのか?」
おお、ダンジョンブレイカーなら俺のダンジョンコアを破壊できそうだと一瞬期待したが、別の大陸に居るらしい。
ガッカリ。
「そうガッカリするな、勇者は女神の加護により転移魔法が使えるからな。大規模なダンジョンを順に攻略しているだけだ。あと、小さなダンジョンであれば、普通に冒険者達でもどうにか出来る」
ええ、流石地上を司る神陣営に居るだけあって、地上なら転移し放題なのか。
うちの部下とは偉い違いだ。
ダンジョーン陣営は、ダンジョン内のみ自由に転移できるだけだし。
『ダンジョン内のみじゃないですよ? 回収なら世界中どこに居たってできますから。試しにやってみましょうか?』
「やめれ!」
セーブポイントが物騒な事を言ってくる。
まあ、そんな事をしたら死に直すだけなんだけどね。
「という現状にあってだな、こっちのダンジョンは後回しなのだが……その中の一つが活性化を始めていると付近の村から情報が入った」
おおう……厄介事のニホイ……
言い終わった後、メイベルがチラッとこっち見たし。
「ああ、ビーストのダンジョンか……確かマスターはカーミラと呼ばれる吸血鬼だ」
「トゥルーヴァンパイアの1人。基本的にダンジョンから出てくるのは、狼や蝙蝠、ネズミと言った使い魔ばかりだが、奥の方には攻略に失敗した冒険者のヴァンパイアやグールなどが居ると報告があったな」
ほう! これはボスキャラっぽい!
ダンジョンマスターは、俺みたいなプレイヤーばかりという訳じゃないみたいだ。
経験値美味しそうだけど、どう考えてもうちんとこの牛男の方が強そうなんだけど?
『鮮血のダンジョンのマスターですね。人間にはビーストのダンジョンと呼ばれているみたいですけど、ダサいですね』
そう言ってやるな。
たぶん、一生懸命集めた情報で頑張って名付けたんだろうから。
それに、分かりやすい方がユーザー的にも、受け入れやすいし。
動物系の魔物が出るダンジョンだと予測が出来るから、対策グッズも事前に用意できるしな。
うーん、親切設計。
『お隣さんですが、正直オリジンヴァンパイアのヴラドの下についている小物ですよ?』
おい、やめろ!
余計な情報を、教えてくれるな。
フラグを立つだろ!
これ……カーミラと衝突したら、ヴラドが出てくるパターンじゃ無いか。
「ものは相談なのだが、特に目的が無ければそのダンジョンの調査をしてもらう訳にはいかないか? ギルマスを一撃で倒せるような人材なら、なんとか出来る気がするのだが」
「うん、断る。面倒くさい」
「なっ、ヨシキそんな言い方は無いだろう!」
メイベルの申し出を丁重に断ったら、ミランに怒られた。
博士モードの時は、割としっかりしてるんだけどな。
これ、断れない系の、強制イベントかな?
『流石マスターです! ダンジョーン様亡きいま、ダンマス達が結束して人間を間引きしないと、ダンジョンはいずれ全て滅びてしまうでしょうし……うち以外』
こいつの自信はどこから出てくるのだろうか?
『ダンジョーン様の命と引き換えに作り出した、最高のダンジョンですから』
はいはい、そうですか。
そんなやり取りをしていたら、不意に周りの音が途切れるのを感じる。
不審に思って、ミランとメイベルの方に顔を向けると片や喋っている途中、片やパンを口に運ぶ途中の姿勢のまま固まっている。
というよりも、周囲の時間が止まっているように見える。
『ダンジョンに侵入者です……相手はトゥルーヴァンパイアカーミラです。明確な敵意を持っておりますが、配下のワーウルフ8匹と眷族のヴァンパイア二人と共に転移の罠に掛かり、24階層にてじきアシッドスライムと会敵します。』
フラグの回収早くね?
やっぱり、強制イベントだった。
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次回投稿は17時予定です。




