閑話:セーブさんの憂鬱2
閑話です。
私の名前はクロノ……これでも神界ではそこそこ名の知れた女神。
でも、今はただのダンジョンコア。
ちょっとハイスペックで、最新式で、オリジナルスキルてんこもりの最高品質ではあるけども、ただののダンジョンコア。
簡単に言うと、石ころでしかない。
物理的な行動が全て制限されて、何もできない。
とてつもなく退屈な人生ならぬ神生と思われるかもしれない。
でも、実はそこまで苦痛じゃない。
目の前でフンフン言ってるのが私のマスター。
見てて飽きない、ちょっとおバカな子。
主と言うよりも、抜けた可愛げのある弟みたいな存在かな?
「よーし、腹筋50回終わり! ふはぁ、疲れたー!」
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
「さあ、体力全開! 腹筋再開!」
何が彼をここまで駆り立てるのだろうか?
目の前で腹筋50回をまた始めるマスター。
それが終わったら腕立て20回、背筋を50回、スクワットを30回やる。
それから、全力でこの部屋を走り回る。
それが終わったら、また腹筋が始まる。
「もう、無理だー!」
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
「元気100%! フンフンフン……」
正直言うと、もう少し賢そうな人を選んで欲しかったんですけど。
いや、確かに可愛いですけどね。
――――――
確かに、筋トレして私に触れたら超回復の効果で筋力が上がるのは知ってますよ?
でも、そんなにずっとやらなくても。
20回目の筋トレを終えたマスターをジッと見る。
かなり、スリムなマッチョになったように思える。
腹筋も50回だったのが150回に増えてるし、他も約3倍くらいになってるからかなり強化はされてると思う。
ただ、あくまでまだ人間の領域は越えてないけど。
「ああ、お腹空いた」
『だったら、食料を「さて、こないだ見つけた濃硫酸の水たまりの罠に突っ込んで来よう」』
『……』
取りあえずマスターの身体を再構築して、セーブした地点から復活させる。
私の能力はこう言ってはなんだけど、かなりいかれてる気がする。
ダンジョーン様と色々と魔改造したこのダンジョンと、私の持つ時間操作に特化したスキル。
ダンジョーン様の知識や技術、魔法やスキルを併せてかなり反則的な凶悪ダンジョンを作り上げた上に、ダンジョンコアに私自らがなった事でおそらくこのダンジョンは破壊される事はまず無いだろう。
そもそも、このダンジョンに入り込んだ時点で確実に生殺与奪の権利は、このアホマスターの手に握られる事になる。
「うんうん、飢餓耐性がまた上がったから今度はもっと鍛えてから死のう。あとは痛覚緩和も良い感じに伸びて来たしこれなら……」
これならの後に続く言葉が、凄く不安だ。
「ひゃー! こんなになってるのに、ジンジンする程度とか凄いわ」
いま目の前で、拳がグシャグシャに割れて、足が変な方向を向いているマスターが大はしゃぎしている。
うん、トレーニングに壁との格闘が追加された。
お陰で、行動が完全に頭がおかしい人だ。
とはいえ、本人はその効果をはっきりと体感しているから、そんな事は……はたから見たら頭がおかしい行動というのは自覚はしているようだ。
良かった。
「ああ……トイレ行くの面倒くさい……というか、トイレとか無いし! 尻拭く紙も無いしな……そうだ! 死んで来よう」
『馬鹿ですか!』
声が届かないのが、本当に辛い。
せめて魔力を操る器官だけでも作ってたら、念話を届ける事が出来るのに。
マスターがトイレという名の、強酸の罠から戻って来る。
飢餓耐性がかなり上がった結果、便意を催すまで特訓して死ぬという日常が始まった。
アホだ……
かなりアホなマスターだ……
と言うか、地球人って皆こうなのだろうか?
「そろそろ、先に進もっかな」
『えらくアクティブな引きこもり生活もようやく終わりですか?』
「よっしゃ、行くぞー!」
『こっち見ろ!』
マスターが勝手に宣言して飛び出していく。
というか、一人の時間が長くなると独り言が増えるって本当だったんだ。
最近、めっちゃマスターの独り言が増えて退屈しなくなってきた。
しかも精神力がガンガン上がってるから、気が狂う心配も……いや、行動自体はかなり狂ってるけど。
あれが、正常な思考だというのだから地球人怖い。
そして死んだ。
普通にフェンリルの子供に殺されてた。
弱っ!
マスター弱すぎでしょ!
まあ、何があっても私の元に戻って来てくれるのは嬉しいけど……
――――――
ダンジョンコア(クロノ)
称号:至高のダンジョンコア
スキル
セーブレベル:1
再構築レベル:3
時間操作レベル:∞
その他色々……
目標の一つが達成出来ているので、もう1話閑話を考えたいと思います。
また、書きあがったら投稿します。
次はファングの予定です。




