第16話:ファンタジー系のMMOだと思ってたら、まさかのダンジョンメイカーだったでござる
『という訳で、貴方はここのマスターとなります。』
「Oh……」
セーブポイントの説明だと、ここは時止まりのダンジョンと呼ばれる場所らしい。
このダンジョン内部では外部と時間の流れが異なっていて、時間が止まっているらしい。
ちなみに俺は転生して、ここのダンジョンマスターになったと説明された。
でも、マスターとして身体構造を変えている途中で、世界中のダンジョンを司る神ダンジョーンが死んでしまった為、終了する前に意識が覚醒したらしい。
よってダンジョンマスターとしては中途半端な状態らしく、マスターと呼ぶのも憚られるが他に呼び方が無いためセーブポイントさんは、俺をマスターと呼んでいる。
何故なら身体も、魔族に変化する途中だったので半分は人間のようだ。
デミデーモンといったところらしいけど、角やら羽やら色黒にするやらの外的特徴を揃える前にダンジョーンさんはお亡くなりになったようだ。
死因は脳梗塞らしい……うん、凝った設定を考えてそうで、雑な所もあるあたりやはりβ版と考えた方が良いか。
モニターとしてここで得た能力等が、製品版で引き継げるかが非常に気になるところだが……
『製品版も何も、ここは現実世界ですよ?』
と非現実的な場所で、非現実的な存在に突っ込まれてしまった。
お前が言うな!
まあ、ロールプレイをするにあたって、ガチの現実社会の話を持ち込むのはタブーって訳か。
むしろその辺りも含めて、ゲリラ的モニター試験を行ってるかな?
『まあ、いずれ自覚してもらえると思うので、好きにしてください……』
なんか、めっちゃ疲れた感じで言われたけど、俺はいきなり異世界転移キターとなる程能天気じゃない。
それに、異世界がこの狭いダンジョンだけとか嫌過ぎる。
『あっ、そこはまだダンジョンと紐づけされてないので外出は出来ますよ?というか、他のダンジョンマスター様も出来ますから』
それもそうか。
ここまでリアルに作り込まれたゲームで、町や村が見て回れないのは面白くないな。
というか、たぶん他にも居るであろうモニターさん達も同じような説明を受けてるに違いない。
『一応不本意ながらセーブをされましたので、死んでも復活の特典だけは得てますから……人として生きると辛いですよ?』
想像してみる……
――――――
「おじいさま!」
「おじいちゃん!」
「父さん!」
「ああ、お迎えが来たようじゃ……お前ら仲よう暮らせよ?わしはほんに幸せじゃ……った」
『おじいいいいいいちゃあああああん!』
孫や子供達に看取られ、自分の楽しかった人生を振り返り目を瞑った瞬間。
『老化耐性を獲得しました。セーブポイントから復活します』
なんてメッセージが流れて、若い時の姿でこの部屋からやり直しとかになったら最悪だな……
うん、最悪だ……
――――――
「セーブ取り消せないの?」
『無理ですね』
「オラッ!」
『無駄ですね……』
いきなりセーブポイントを破壊しようとぶん殴ってみたが、固すぎるだろ。
でも衝撃でデータが……
『水晶を記憶媒体とするのと同じような状態ですから、さらにそれよりも遥かに硬度の高いもので作られた私は、熱や衝撃程度では記録は飛びませんよ』
「クソッ……」
『これからも末永く、永久に宜しくお願いしますね』
「やめろ!洒落にならん」
現状で、俺の部下はこのセーブポイントさんだけだ。
本人はダンジョンコアと言っているが。
まあ、ゲームシステム的にはセーブポイントだな。
ただ一つ言えるのは、こいつ性格悪いぞ?
『という事で基礎的な事から説明していきましょう』
「ああ、そういうのは最初に聞きたかった」
そして、色々と衝撃な事実があった。
まず……
セーブポイントに収納機能があった。
お陰で部屋にポイしてあった剣や盾等は全てセーブポイントさんに突っ込んどいた。
さらに、体内に自称ダンジョンコアの一部が埋め込まれているらしく、離れた場所からセーブポイント内のアイテムを出し入れしたり、自身をセーブルームに転移させたりできるらしい。
やり方聞いたけど、簡単だった。
胸を押さえて、収納や取り出しを強くイメージするだけだった。
あと、同じように胸を押さえて帰りたいと強くイメージすれば戻って来られるらしい。
ちなみに、ダンジョンの外からでもここに戻ってこられるとか。
うん、ああ……割と優しいゲームだったわ。
『で、基本的なダンジョンの目的は強い魔物を作り出して、ダンジョンの外に送り込み人間の世界を滅ぼすのです……が』
「が?」
『目的を設定する前にダンジョーン様が崩御されましたし、自分で目的を決めても良いですよ』
有難う……こういうところがオンラインゲームらしくて良いわ。
自由度が割と高いゲームみたいだ。
ただ、拠点が与えられて悪にも正義にもなれやすいというとっても有難い仕様みたいだ。
「じゃあ、ここを出て他のダンジョンを制覇したり?」
『オススメはしたくないですが、ご自由に……私自身になんの指示もありませんし、ダンジョーン様が居ないから世界征服したところで何の意味も無いですからね』
「そうですか……」
これあれだ、自由度が高すぎて目標設定がしにくいパターンだ。
結局スローライフを楽しみつつ、唐突に目的を消失して何をしてたんだろう状態になって放置になる奴だね。
むしろ暇潰しには良いゲームだけど、そこまで本格的にやろうとは思いません、
ですのでお家に帰してください。
『まあ、最後はここからやり直しですけどね……ププ』
「おまえ、分かった……目的決まったわ!お前をぶっ壊す方法考えるわ」
『ご自由にどうぞ……あとアホみたいにラスボス予定のアスモデウス……あっ、マスターが名付けた牛男ですね。とここの守護者たるフェンリル……そこの駄犬を殺しまくってレベル上がった分のボーナスポイントが無駄に余りまくってますが使います?』
「そんなのあるの?てか、ファングってフェンリルだったの?弱すぎじゃね?」
『まだ、子供ですからね』
「あっ、あれで子犬」
『狼です』
「ああ、そっか」
『数百年掛けてマスターの魔力を譲渡しつつ育てていく予定でしたので、大器晩成型であと80年くらいで牛男より遥かに強くなりますよ?』
「うん、数百年もゲームに引きこもるつもりないから。あと俺マスターなのになんで襲ってきたの?」
『マスターの成りそこないですからね……私以外は部下じゃないですよ?そこも設定する前でしたので』
偉く物騒な部下予定達が居たもんだ。
でも、部下じゃないならここから出す気ないでしょ?
というか、完全にボッチスタートじゃねーか!
ダンジョンの最深部でレベル1スタートで魔物全部敵とか、いきなり心折れる設定過ぎるわ。
「取りあえず、そのボーナスポイントで取れるもの教えて……」
『スキルと日用品と武器防具と家具と食料品と住居関連とどれが良いですか?』
「うん……選択肢多くね?スキルと武器防具まではいいや、でも日用品って……聖剣とトイレットペーパーが同列なのか?」
『ハッハッハ……魔族が聖剣を扱えるわけないじゃないですか』
「例えだよ!」
こいつ分かってて突っ込んでやがるな!
ああ、もう少しまともなの部下にしてほしかったわ……てか、もう少し頑張って長生きしてよダンジョーンさん。
――――――
レベル:551
名前:ヨシキ・クラタ
スキル
初級スキル
罠探知レベル:20
格闘レベル:20
中級スキル
武術レベル:20
槍術レベル:7
剣盾術レベル:4
棍術レベル:2
罠回避レベル:20
従魔使役レベル:10
上級スキル
状態異常無効レベル:7(飢餓、毒、窒息、恐怖、威圧、溶解、石化)
痛覚調整
物理攻撃無効レベル:12
4属性吸収レベル:5(炎熱、雷電、風刃、冷気)
クラタ近接流格闘術:開祖
クラタ一刀流:開祖
クラタ二刀流:開祖
罠無効レベル:20
特殊スキル
罠操作
従魔召喚
収納←NEW
帰還←NEW
――――――
最後までお読みいただき有難うございます。
次話は16時投稿予定です。
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