第13話:神々の事情
「チジョーンさんは、どうしてダンジョンを破壊しようとするんだ?」
「そんなの決まっておるじゃろう? 神の世界の発展の為じゃ」
「決まってねーし! 知らねーし! 初耳だし!」
「なんじゃ、そのムカつく喋り方は!」
なんじゃもんじゃ、じゃって使う女子多いよね……ここの人外の人達って。
「知るか! こちとら、勝手にダンジョンマスターやらされた挙句、ゆっくりしようとした矢先に喧嘩売ってきやがって!」
「それこそ、こっちの知った都合じゃないわ!」
それから約20分に渡って、魔力が神の世界にもたらす恩恵について語られた。
相槌打ってたら、すげー調子乗ってペチャクチャ脱線しまくるから、途中で無視したら凄い不安そうにチラチラ見てくんの。
この子どこか変の、違和感美少女にそれをされるとつい相槌を打ちたくもなるってもんだ。
でもって、ようやく話が終わったらしい。
正直、何を言ってたのか分からない。
「三行で」
「魔力強い善なる心を持った生き物死ぬ。
天使や神獣、稀に神になる。
天使や神の仕事が楽になる!
以上!」
ようは、魔力強い人達が死ぬと、天界にスカウトされるらしい。
割と人員不足でブラックな環境らしく、退職者も後を絶たないようだ。
にも関らず、管理対象の世界や生物が増える一方。
トホホといった状況らしい。
「でもさ、入ってもすぐやめてくんだろ?」
「いや、最初は神や天使になった喜びで盲目的に働いてくれるのじゃ!」
「それ、なんてねずみの王国?」
「なんじゃ、それは?」
「ワーカホリックも、行き過ぎると周りはドン引き」
「言ってる意味が分からんのじゃが」
分からんなら分からんでいい。
こっちの話だ。
「でもさ、地球とかって殆ど手が掛かって無いんだろ?」
「そうじゃのう、奴らはある程度自分達で環境をコントロールできるくらいになっておるからのう」
環境をコントロール?
ああ、まあ一部そうじゃない国も多いけど。
概ね、大国は将来を見据えてあれこれやってるね……
地球を諦めて、そうだ、宇宙へ行こう! みたいな流れもあるけど。
あ~あ、宇宙のどこかで~♪
3番線、月行きスペースシャトル、400系アポロが間もなく到着します。
白線の内側までお下がり下さいみたいな駅が出来るのだろうか?
「地球の奴等の知識欲というのは、恐れ入る」
「そうか? 魔力が無いから科学に頼るしか無いってだけだし。正直、魔法で出来る事の大半が機械で出来るしね? 転移とか以外」
やっぱり、魔力いらなくね?
人間放り込んで、数千年まったら自己管理か、崩壊に進むと思うんだけど?
「やっぱり、魔力無くして自己管理の道に進むの待った方が良く無いか?」
「現状、こっちは人手不足で殆どの神が休みすら碌に取れておらんのじゃ」
「じゃあ、世界作るのやめたら?」
「いや、そしたら妾達の存在意義が……」
面倒くせ。
「存在意義って?」
「森羅万象のトップとして、尊敬されるのが気持ちいいのじゃ」
「神など滅んでしまえ!」
「痛い! 何をするのじゃ!」
あまりにも、理由がくだらな過ぎてつい殴ってしまった。
向こうも、このタイミングで殴られると思って無かったらしく割と良いのが入った。
「結局、ダンジョーンのやり方が正解じゃん! 魔力無くして、人の手で管理するよう進歩するのを待つってのが、大体魔物のせいで結構悲惨な事も多いんだろ? 剣と魔法の世界」
「じゃが、その魔物に対応するために、人は魔力を鍛え強くなる。それに、魔物に殺された者の方が、案外モチベーション高かったり」
神様って、自己中の塊かい?
やっぱり、滅ぼした方が良い気がしてきた。
「隙だらけだよ!」
「どこに隙がある?」
と思ったら、後ろからガイアがでっかい岩の塊飛ばしてきた。
残念、喋ってら意味が無い。
声が聞こえた瞬間に、覚えたての魔法障壁を張ってみた。
「なっ、こっちを見ずに防いだだと!」
「いま、大事な話してるとこだから、ちょっとあっち行ってろ!」
「くっ!」
今度は気を使ってみる。
指鉄砲でバッキューン!
キ・ガンと名付けよう。
語呂が悪い。
普通に光線銃にしとこう。
「ぬおっ! 凄いパワーじゃないか!」
おお、耐えるのか。
流石は、ゼウスのお母さん。
「妾が、いま話しておるのじゃ! 控えておれ!」
「えっ! きゃっ!」
と思ったら、チジョーンが地面を浮かせてエイって感じでひっくり返してた。
やっぱ、物理で力押しが最強のような気がしてきた。
「大体、管理が楽なせいで殆どの神がアーリータイアして、地球に隠居してるのじゃ! 日本が特にひどい! 神様全部オッケーみたいなふざけた宗教のせいで、有象無象の神がこぞって神社とやらに住んでおるし」
「まあ、空港に礼拝室作っちゃうような国民性だからね。対して専門の信者いないくせに」
「そのせいで、いまや妾の職場の新卒倍率は0.2倍とかじゃぞ!」
それは酷い。
採用枠の2割くらいしか応募が無いのか。
っていうか、神に就職って?
仏教でいう、解脱システムみたいなもんか?
まあ、神になろうと思って人生頑張って死ぬようなストイックな人間って、ほぼ居なさそうだし。
最低条件は、一度死んで生き返るとかかな?
「まあ、理解出来ないことは分かった。取りあえず、ダンジョン潰すのやめるか、俺に消滅されるか選んで」
「なんと不遜な! 神になりたての小童の分際で! 吐いた唾は飲まさんぞ?」
チジョーンがようやくやる気になったようだ。
なんか、どっかで聞いたようなセリフをはいてるが。
「お前を滅してやろう! 妾の本気で」
「あっ……」
嘗めてた。
チジョーンが手を翳した瞬間に、地面に身体がめり込む。
でも……滅することは出来ない気がする。
「このまま、地中深くに埋めて潰してやろう」
「よいしょ」
でも落ち着いて考えたら、普通に筋力だけでどうにか出来る問題だと思ったが……
腕力で出ようにも、手応えなく水中のように沈んでいく。
これ……地中深く潜っても死なないからかなり辛い状況になるんじゃ……
まあ、いざとなったらクロノに殺して貰うとして。
「それは困りますね」
ん?
この声は?
「彼には、有意義な使い道があるのでね」
こっちは……あいつだ!
「なんじゃ、お主ら! 貴様! 何しにここに来た!」
チジョーンさんも知り合いか。
というか、クロノの言った通りか……
残念。
信じてたのに。
すいません、嘘吐きました。
本日の投稿はこの1話になります。
体調不良とか、マシントラブルとかではなく、師走だからです。
忙しくなってしまいました。
ネタに走らなければあと4話くらいで完結予定ですので、来週の水曜日には完結予定です。
今しばらく、お付き合いお願いしますm(__)m




