第6話:サクッとね
「誰だ貴様!」
「何故魔族が、ここに!」
かなり良い装備をした天使が二人、俺達の前に立ちはだかる。
駄目だよ、そんなとこに立っちゃ。
「ブルル!」
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
「突破されたぞ!」
「ウリエル様!」
そりゃそうだろ。
音速を遥かに超えた速度で落下する馬の前に立つとか、馬鹿じゃねーの?
急に止まれる訳無いだろ。
むしろ、隕石に近い状態なのに。
案の定、良い装備の二人が轢かれて遥か遠くに飛ばされてった。
「馬鹿じゃねーの?」
「度し難いくらに……」
「ヒンッ!」
クロノとシルバも呆れた様子だ。
「すぐに地上に連絡を」
「もうあんな遠くに!」
後ろでかなり小さくなった声が聞こえるが。
今から連絡しても、手遅れだと思う。
「ここから、敵の本拠地までどのくらい?」
「真っすぐ進んで、2~3分くらいですね」
もう、そんなに近くにまで来たらしい。
テューポーンはどのくらい後に居るのかな?
「明日には着くかと」
「あっ、そう」
物凄く遅かった。
結果、シルバに乗って来られて良かったかも。
テューポーンの背中だと、まだ宇宙だろう。
「見えてきました」
「おお、デカい宮殿からワラワラと天使が」
眼下に見える白い宮殿から、たくさんの武装した天使達が。
それと、神様っぽいのが数人……いや、10人くらい?
取りあえず、上空50mくらいの位置で止まる。
「止まれ!」
「もう止まってる」
止まった後で、神様っぽい人に呼び止められる。
「お前は、誰だ! 何をしにここに!」
「んー……迷子?」
「そうか、じゃあ転移でもと居た場所に送り届けてやろう」
冗談が通じなかった。
普通に心配された。
これから、ぶち殺そうと思ってた相手だけに、やり辛い。
「おいっ! あいつダンマスだぞ! それもいま話題のクラタってやつだ!」
「そうなのか? でも、迷子らしいからな。送り届けてやるのが、人の情けってやつだろう」
うん、同僚の神様っぽい人が、警戒しつつ最初に声を掛けた人に進言してるけど。
どこまでも、お人好しな神様みたいだった。
良い神様って事だな。
この人は、殲滅対象から外しとこう。
「もう良い! アスクレーピオスは下がれ!」
「えっ? でも、あの人困ってるし」
「だあ、もう誰かこいつを宮殿に戻して来い! 軍医がこんなとこまで出張ってくるのが、元から間違いなんだから」
周囲の天使に、強引に宮殿に押し戻されるアスクなんたらさん。
「アスクレーピオス、医療の神です。まあ、神の医者ですね。人も救いますが」
「おお、普通に良い人だった」
申し訳無さそうに、こっちを何度もチラチラと振り返って頭を下げて退場する、アスクレーなんたらさん。
「マスターのINTのA+は何かの間違いじゃないかと言いたくなるレベルの記憶力ですね」
「興味無いし、名前が長いのが悪い」
っと、目の前の連中もどうやらようやく人数が……あっ、追加で宮殿から天使が。
「貴様をここで滅ぼせば、全てが丸く収ま「すいませーん! その人、止めてくださーい!」
目の前の人が何かを叫んでる途中で、俺のさらに上空から声が。
あっ、シルバに轢き飛ばされた人。
「はあはあ、クラトス様有難うございます」
「はっ? いや、別にお前のためにやった訳じゃねーし! たまたま、侵入者が近付いてきたから追い払いに来ただけだし。勘違いすんなよな!」
なに、そのツンデレみたいな感じ。
いや、言ってることはマルッと事実だから、ツンでもデレでも無いけどさ。
「もう、クラトス様は素直じゃ無いですからね」
「ちょっ、おまっ! 取り消せって! 本当にたまたまだから。マジだから」
そんな必死に否定するから、余計にそれらしく見える。
「まあ、ここは俺に任せてお前らは帰ってろって」
でもって、普通にデレると……
なんか、自分で事態をややこしくするタイプだな。
「なにあれ? 誤解の神かなんか?」
「いえ、力の神です」
脳筋っぽい神様だった。
司ってるものと全然関係ない展開にさらに肩の力が抜ける。
「さてと……たかがダンマス一人に過剰戦力かもしれんが、ユーノー様からも慎重に慎重を重ねても足りないレベルと評されていたからなお前。すげーな。だから、こっちも全力以上で行かせてもらわねーと」
途中で、普通に褒め言葉頂いた。
なんだろう、別にこの人も悪い人じゃ無さそうな。
まあ、それもそうか?
と思いかけたが、クロノに聞いた話だと碌なやつ居なかったし。
子供が半分腐ってたから、地獄にぽいしたやつ。
足が悪くて、見た目があれだから海にぽいしたやつ。
母親の孫ラブ発言をマジにして、嫁ごとまだ生まれてない娘を食っちゃうやつ。
姪っ子の家で、愛人とちちくり合うやつ。
叔父さんの愛人を怪物にして、人間の英雄に殺させたあげくその頭を盾に埋め込んだやつ。
ああ、立場が上にいくほどクズなのかな?
「お前ら! あいつを滅ぼせ! 塵も残すなよ!」
「イエッサー!」
クラなんたらさんの号令で、天使達が一斉にこっちに飛び立ってくる。
うん……接近戦で潰すつもりかな?
数の利を生かして、遠距離から波状攻撃を仕掛けた方が確実っぽいのに。
「3000人の天使の攻撃に耐えられるかな?」
「馬鹿なの?」
3000人居ても、同時に俺を攻撃できるもんじゃないだろ?
いや、地上から魔法とか使ってきたら……ああ、空中で他の人の魔法とぶつかったりして半分以上届かなさそう。
まあ良いや。
飛んでくれて都合が良い。
「キンさん!」
「はいっ! 早いですね……てか、多くないですか?」
「3000人の天使さんらしい。ってことで、サクッとやっちゃって」
「はっ?」
「【千倍重力空間】!」
「鬼ですか!」
キンさんが何やら言ってるけど、これ命令だから。
とか言いつつも、渋々使ってくれるキンさん。
「……」
凄い音がした。
地面が穴だらけ。
ああ……そうだよね。
結構みんな近くまで来てたもんね。
それでも、30mくらいの高さかな?
天使さんの体重をスタイル良いから、50kg平均として……
1000倍。
50トン?
の人間大の物体が、上空30mから降って来ると。
大災害だね。
まあ、落ちてったのは先発の100人くらいかな?
下に待機してた2900人くらいの天使も地面にめり込んでるし。
そこに100体の超重量級の砲弾が降り注ぐ訳か。
あー……
地獄絵図だわ。
地面に赤白の絨毯が広がってる感じ?
クラトスなら耐えられたかもしれないけど、自分は耐えられても50トンの落下物には耐えられないよね?
「気配が消えましたね。宮殿で復活すると思いますが、向かってくるかは別問題です」
「あの……レベルアップが止まらないのですが?」
キンさんが大幅に強化されてるらしい。
まあ、天使3000人と神を殺したらそうなるか。
あれ?
神殺し達成?
あー、これキンさんブラムス超えちゃったね。
完全に。
まあ、良いけどさ。
サクッといきましょう。
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