第4話:ダンマス会議
「第3回、チキチキダンジョン相互保護互助会会議!」
「チキチキの意味は?」
「無い!」
ブラムスのダンジョンで、ダンマス会議を開催。
今後の方針を決めるためだ。
「まずは、俺から提案! ちょっと、神々滅ぼしてくる」
「いきなり、突っ込みどころ満載の提案ですね」
これは、ゴアルガさん。
イコールさんポジションが居てくれて良かった。
うう……イコールさん。
良い人だったのに。
「まあ、わしも同じ気持ちじゃ。久しぶりに、神殺しの血が騒ぐわい」
「えっ? いや、一人でダンジョンの連中連れてサクッと殺ってこようと思ってるんだけど?」
テューポーンが、首をポキポキと鳴らしながら息巻いているが。
連れていく気ないんだけど?
「はっ? 何故じゃ!」
「いや、これ以上こっちの勢力減らしてどうすんの?」
他の連中連れて行って、死んでもらっちゃ困るし。
「俺は付いて行きますよ? クラタ様の為なら地獄にだって」
「ああ、この世界に来て地獄が割と身近に感じるんだよね。嫁の家だし。まあ、ブラムスくらいなら居なくなっても痛くないし良いか……」
「その、死ぬこと前提に考えなくても」
机の上にモヒカンの先っぽだけ出してる状態のくせに。
椅子は、座椅子に戻したよ?
ロダン作の、高級座椅子。
イコールさんの椅子?
ゴアルガさんが使ってるから。
「しかし、我々が直接参加して万が一が起こるのを危惧されるのは分かるのですが、任せきりという訳にも」
「じゃな、じゃあわしが行こう」
これはテューポーンじゃなくて、リカルドさんね。
うん、意味の無い提案をありがとう。
「なんで、じゃあわしになるんだ?」
「わしなら、そう簡単に死ぬこともないし……何より、イコールとの付き合いも長かったしのう。怒っているのは会長だけじゃないって事だ!」
おお、カッコいいじゃないか。
でも、却下。
「それじゃ、なんのために皆のダンジョンを防衛特化させたか分かんねーじゃん。マスターが死んだら、防衛力が一気に落ちて、ダンジョンコア破壊まったなしだし」
「うちのもんはそこまで柔じゃないぞ?」
「わしのとこもじゃ!」
「うちは、喜々として後釜を決めるための戦争が起こりそうですね」
「卵さえ残しておけば、会長がなんとかしてくれるよきっと!」
テューポーンとリカルドの脳筋コンビは手の施しようが無いな。
というか、リカルドは普通に獣人の王でもあるんだから。
あと、ゴアルガさんの呟きが切な過ぎて。
せっかくゴタゴタが収まったばっかりなのにね。
それとメガララさん。
そこ期待されても、応える気無いからね?
「俺一人じゃ、不安なのか?」
魔人化して、テューポーンとリカルドを威圧する。
「そんなまさか! 暴れたいだけです」
テューポーン……
自信満々に……そんな。
なんのために、魔人化して威圧したか分からんじゃん!
「わしは、イコールを殺したポセイドンとやらを殺さねば気がすまんのじゃ!」
ごめんリカルドさん。
テューポーンと同列に並べてしまって。
申し訳ない。
リカルドさんが怒っているのが、はっきりと伝わってくる。
空気がピリピリと振動するレベルだ。
サタンを連れて行けば、リカルドは戦力になるかもしれないけど。
相手の戦力が分からない以上、そんな危険な賭けに出る訳にはいかないし。
「じゃあ、ポセイドンは半殺しでリカルドさんの前に連れてくるから」
「わしは?」
テューポーンは黙ってろ。
「一応、ゼウス様に勝った事もある竜ですからね。連れて行っても足手纏いにはならないかと」
「でも馬鹿だぜ?」
「そこは、マスターが上手くコントロールすれば」
クロノに言われてチラッとテューポーンを見る。
ムフーと鼻息荒く、拳をぶつけてアピールしているが。
無理。
絶対暴走するから……こいつ。
「取りあえず、マスタークラスが減ると今後の互助会の運営に支障もきたしますし、配下から選抜して貸し出すというのは?」
「貴重な戦力を借りるのも気が引けるから、ブラムスのところのキンさんだけで良い」
「キンさん?」
ゴアルガさんの提案をやんわりと断る。
「キンさんって、うちに居ましたっけ?」
「ワイトキングのキンさん。俺の従魔にしてるから」
「えっ?」
ブラムスがビックリしたような表情を浮かべている。
そして俺の召喚に応えて、出てくるキンさん。
「すいません。クラタ様がいちいち迎えに来るのが面倒だから、召喚出来るように従魔になれと」
あっさりと、チクられた。
まあ、ブラムス相手だし問題ない。
「これが、ワイトキング?」
「わしの知ってるワイトキングとは、全然違うが」
「一応進化して、死の超越者って種族になったらしい」
俺の言葉にちょっと恥ずかしそうなキンさん。
よくよく考えたら、こいつも常識人サイドの住人だった。
あー、ブラムスと交代させたい。
「たぶん、俺のところで鍛えたからブラムスよりも強くなってるかと」
「ハッハッハ! マスターよりも強い部下などいるはずが」
「キンさん、【千倍重力空間】使って?」
「えっ?」
「使って?」
「でも……」
「使え」
「はい……【千倍重力空間】」
キンさんがスキルを発動した瞬間、一気に重圧が増す。
まあ、俺は魔人形態で10倍の重力部屋で500倍まで耐えれてるから余裕だけど。
「アガガ!」
「馬鹿な……」
「くっ!」
「これは……」
「……」
流石に元々重量の思いテューポーンには耐えられなかったらしい。
アガガとかって言って、地面で潰れてる。
リカルドも椅子ごとめり込んで、身動きが取れないようだ。
ゴアルガさんも、口から血を出している。
メガララさんは、元々の体重が軽いからかどうにか耐えてた。
というか、ブラムスが紙切れみたいになってるけど大丈夫かあれ。
「解除して」
「はい……」
キンさんが、申し訳無さそうにブラムスを見つつスキルを解除する。
「本当にブラムスより強いのでは?」
「いや、これはテューポーン様を凌ぐ強さかと」
「まさか、ただの死霊がここまで進化するとは」
「なかなかに優秀な部下をお持ちですね」
「えっ? ワイトキング? えっ?」
皆が口々にキンさんを褒めたたえる……ブラムス以外。
ブラムスだけが、困惑した表情。
「ちなみに、キンさんの【重力の墓場】は、俺でも最終形態に変身しないと瞬殺されるから」
「「「「えっ?」」」」
テューポーン、リカルド、ゴアルガさん、メガララさんの目が点になる。
「ちくしょー!」
そして、ブラムスが泣きながら逃走してった。
「ブラムス様!」
そして、キンさんがそれを追いかけていく。
放っておいてやれよ。
お前が行って慰めて、余計に傷口が広がるだけだから。
「ということで、俺と俺の配下とキンさんで神々を滅ぼしてくるのに反対の人!」
「はいっ!」
テューポーン以外は、賛成と。
テューポーンだけ元気いっぱいに、反対と手を上げている。
「わしも暴れたい!」
「もう良いや、このバカだけ連れていくわ」
「馬鹿とは失礼な!」
テューポーンが笑っているが、俺を含め全員呆れ顔。
真っ先に誤射って事にして、俺が殺しちゃおうかな?
経験値美味しそうだし。
取りあえず、侵攻の方針は決まった。
クラタ軍とキンさんとテューポーンで。
相手は、神々。
決戦の地は、天上界。
場所は?
「空の浮島ですよ?」
「俺飛べないんだけど?」
「シルバが空も走れますので問題無いかと。 現地で配下は召喚すれば」
「わしが、背中に乗せて運ぶから問題ない」
テューポーンが、翼を広げてアピールしてくる。
「シルバの方が100倍速いですよ?」
「だそうだが?」
「……」
テューポーンの表情から笑みが消えたけど、どうでも良い。
取りあえず、神を滅ぼそう。
いよいよ、最終決戦に!
どうなるんでしょうか……本当に。
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