第23話:イコールの血
ブチ切れたポセイドンさんは凄かった。
それしか、表現のしようがない。
まず、イコールさんの部屋にぶちまかれた海水。
それが、まるで水竜のように意志をもって狭くない室内で荒れ狂う。
その一撃一撃が重く、いくら物理無効があろうが衝撃で壁に叩きつけられたり、天井に張り付けられたりと苦労した。
その状況で、ポセイドンさんがトリアイナを投げつけてくる。
ご丁寧に、魂への直接攻撃を付与して。
ポセイドンさんも死霊を扱う事が出来た。
ああ、幽霊船とか水死者関連ね。
しかも、引き抜かれた魂は海に縛り付けられるとか。
いわゆる、ポセイドンさんの配下になるって事ね。
スキュラさんも息を吹き返して、狼がヘルシングとジルの頭をガジガジ噛んでた。
お腹から犬が生えてて、その犬の口から人間の腰から下が生えてる感じ。
天井に張り付けられた状態で、そっちについ目をやって思わず吹き出してしまった。
結果腹筋の力が緩んで、さらにお腹に衝撃が。
「うっ……さっき食べたものが出て来そう」
「おいっ!」
真下には、こちらに槍を投げた姿勢のまま上を見上げてるポセイドンさん。
物凄く嫌そうな顔してた。
まあ、出ないけどね。
「クラタ様!」
「えっ?」
次の瞬間、目の前が鮮血に染まった。
視線の先には背中から槍を生やしたイコールさん。
ここにいる人たちは、いろんなもん生やしてんなと思ったり。
いや、スキュラとイコールさんだけか。
というかなんで?
イコールさんが俺の盾になって槍を受けてた。
「なんで?」
「貴方は、この世界に必要な方です……それに私は不死者ですし……」
「いや、魂奪われたら……」
そして引きずり出される魂。
言いにくいけど、ぶっちゃけ俺ならレジスト出来るレベルなのに。
直後さらに背中から血が噴き出す。
そして俺の全身を包み込む。
「古来より、竜の血、神の血を浴びた者はその存在に近い力を得ると言います」
「あー、ちょっと待ってて。やり直すから」
俺の言葉に首を横に振って、微笑むイコールさん。
「この時を待っていたんですよ……」
うん、それってそういう意味で使う言葉?
相手に止めを刺す時に言う言葉じゃない?
自分の窮地に言う言葉ではないと思う。
「私の血を託すに相応しい人が現れるのを……そして死ぬ時を……」
「ゴチャゴチャ喋ってないで、お主も死ね!」
空気を読まないポセイドンさんが槍を手元に引き寄せて投げつけてくる。
「黙れ!」
魔人化形態に変形して、翼を広げ宙に浮く俺。
手抜きしてたのは、それでも勝てると思ってたから。
嘗めプした結果、イコールさんが死にそう。
いや、やり直せるから犠牲の事とか、あまり考えて無かった。
「なっ! まだ力を隠しておったのか!」
本当に、こいつらって情報の共有が出来てないよね。
「もう、何千年も生きて来て疲れたんですよ」
いや、君の配下もっと長生きの生物とか居るよね?
「死ねる時に死ぬ……これが生物の理ですから」
そうか……
死にたかったのか。
だったら、何も言うまい。
「ふふふ……最後に、貴方と出会えて良かったですよ……あの方もきっと……」
イコールさんがそう呟くと、身体が光に包まれて消えてった。
えっ?
あれっ?
そんな感じ?
死体とか残らないんだ。
「フハハハハ! これで、目的は達成できた! そこのマスターも一緒にといきたいところじゃが、ちょっと雲行きが怪しいからのう……この場は引かせてもらおう」
「待てっ!」
一瞬でポセイドンが水中に消える。
スキュラも同時に。
空中に生えてたヘルシングとジルが地面に落ちる。
「マスターが……」
「イコール様」
二人が狼狽してる。
うん、俺もうろたえてるから。
本人は復活を望んでなかったけど、ここでのイコールさんの離脱は痛い。
本人の意思を無視して復活させた方が。
いや……ここは、弔い合戦にして他の面子の士気を高めた方が。
駄目だ、頭が上手く働かない。
「神の血を浴びた事で、マスターの半神化が始まります」
やけに嬉しそうにクロノが報告してくるのがイラつく。
「嬉しそうだな……イコールさんが死んだというのに」
「いえ……イコールにはいつか思い知らせてやりますから」
ポセイドンじゃなくて?
ああ、こいつなら死者の国にも……ヘルが居るから頼むつもりかな?
ヘルに頼んで……
いや、先にこのクソ神どもの処遇が先だな。
方針を変えよう……
待ちの姿勢じゃ駄目だな。
こっちから攻めていくか。
俺の軍背を持って、この世界のヴァルハラを滅ぼしてやろう。
――――――
半人部分が半神化しました。
咎人が邪神に進化します。
半魔神化が可能になりました。
魔神化状態時
ステータスが大幅に強化されます。
称号神の悪戯を獲得しました。
超速再生が、瞬時再生へと進化します。
完全状態異常【真】が完全状態異常無効へと進化します。
――――――
イコールがくれた力を持って。
神に思い知らせてやろう。
虎の尾を踏んだ代償を……
嘗めてかかるのは、やめだ。
第6章完結です。
少年漫画にありがちなバトル展開も一旦終了です。
次回から、またクラタが真面目に不真面目に頑張ります。
ここまでで、評価頂けたらと思います。
最終章は、明日6時に第一話投稿予定です。




