第22話:海皇
「すぐに救援に!」
「はいっ!」
転移鉄をポイント交換で即購入し、クアザイ・ヴァルハラに向かう。
「誰だ!」
「お前が、誰だ!」
三つ矛を持った、髭面のおっさん。
普通に強そう。
そして、その先で傷だらけの……傷だらけだったイコールさん。
おっさんが目を離した隙に回復してた。
「クラタ様!」
「お主が!」
イコールさんが、俺を見つけて叫ぶ。
敵の前で、簡単に名前を呼ばない。
正体が一瞬でバレちゃったじゃん。
「これはこれは……神もどきを相手するつまらぬ仕事を引き当てたと思うておったら、大物が釣れたか」
「おっさん質問に答えろよ! お前が誰だつってんの」
俺の言葉に、おっさんが片眉を上げる。
ちょっとイラッとしたようだ。
「お前如き矮小な存在に、名乗る名など持ち合わせておらんのでのう」
「ポセイドンです! 海皇ポセイドンです!」
「ああ、貴方が 色々と不遇な扱いの」
イコールさんが教えてくれた。
海の神様だね。
確か、くじ引きで海担当になったのに地上に出ようとして、地上戦全敗のポセイドンさん。
プププ……
「不遇とはなんじゃ!」
「ああ、すまん! 主役になれないキャラだと思ってな」
ポセイドンさんが、矛を突いてくるがなんだろう……
これは……銛だね。
うん、返しもついてるし。
フェンリルの籠手で、三又を絡めてそれぞれの先を折る。
「ほうっ! やるではないか!」
「いや、そういうあんたは期待外れだけどね」
すぐに目の前に移動して、あれっ? 消えた。
「クラタ様! 後ろです!」
「ナイス、イコール!」
「こっちじゃってブハッ!」
ブッハじゃ無かったけど、似たようなもんか。
どうやら、転移機能持ちなのか?
そして、ポセイドンが出てくる前に、場所を教えてくれたイコールに感謝。
「何故分かった!」
「それは、企業秘密ってやつだな」
種明かしはしない。
というか、イコールさんに教えてもらっただけだから。
「ポセイドンは水のある場所なら、どこでも行き来出来ます。 おそらく、その力で城内に侵入したのではと。 あと、戦闘中に水をまき散らしているようなので、身の回りの水溜まり等に気を付ければ大丈夫かと」
クロノが教えてくれた。
まず、転移先の水たまりに波紋が出来るらしい。
それから、ぬっといった感じでおっさんが生えてくるらしい。
想像したらちょっと、面白い光景。
「ふむ……遊んでいる場合では無いということか……」
おお? おおおお?
気持ち悪い美人来た!
下半身が魚だし。
腹部に三頭の犬。
スキュラさんか……
「おいっ、イコールを食い殺せ」
「はいっ!」
スキュラがイコールに飛び掛かるが、簡単に躱されてる。
まあ、あの人は神の血を引くマスターだからそこそこやるだろうし。
それよりも、おっさん。
新しい銛を取り出した途端に、迫力がました。
「我にトリアイナまで使わせるとは……誇ってよいぞ?」
「そんな銛一つで、何が変わるのやら」
「銛? これは、天変地異を起こす矛だぞ」
矛だった。
分かりにくい。
「うわっ!」
その矛を投げつけて来た。
滅茶苦茶早い。
取りあえず、躱す。
「戻ってきます!」
クロノの注意を向けて、後ろに目を向けると通り過ぎてった槍が戻って来る。
おいおい、自動追尾機能付きか。
こういう時はお約束。
ポセイドンの目の前に走って行き、直前で躱す作戦。
「ふんっ、その状況で矛を無視してわしを狙いに来るか! 豪気じゃな!」
「と思うだろ? 自分の矛で貫かれてろ!」
ポセイドンの目の前に移動して、しゃがむ。
「ぐあっ!」
背中に思いっきり鉾がぶち当たった。
……俺の。
優秀。
直角に曲がるとか無しだろう。
「お主は、何がしたいのか?」
「いや、このままおっさんに当たってくれたらと」
「はあ……自分の武器が当たる訳無いだろう」
思いっきり溜息を吐かれた。
というか、強すぎじゃね?
「準備が終わったぞ?」
「えっ?」
ポセイドンが上を指さす。
なんじゃありゃ!
大量の水が上空に集まってた。
「ほいっ!」
「しょっぺ!」
海水だった……
あたり一面水浸し。
どころじゃない。
腰くらいまで水が。
動き辛い。
「くっ!」
「ふっふっふ、こうなればわしの方が早いのう」
「油断禁物ですよ?」
「なっ!」
と思ったら、普通に空が飛べるイコールさんがポセイドンさんをぶん殴ってた。
あれ、スキュラは?
「配下達が相手してます」
時間を掛けすぎたらしい。
ダンジョン内の警備に当たってた、ヘルシングさんとジルさん。
というか、ヘルシングさんすげー。
さすが、ヴァンパイア・ハンター。
素早い攻撃で、スキュラさんを翻弄。
「ポセイドン様!」
「あー、そっちはそっちで頑張れ!」
スキュラをチラッと見たポセイドンが、こっちに視線を戻す。
遅いよ!
「くそがっ!」
「おわっ!」
と思ったら、ポセイドンさんが槍を地面に突き刺した瞬間、地割れと渦が……
あー……吸い込まれる―……
訳無いじゃん!
普通に抵抗出来る程度。
ただ、さらに動きが阻害されてちょっとタイミングがずれた。
「ふははは!」
「油断大敵ですって」
「いてっ!」
またイコールさんの事を忘れてたらしい。
ポセイドンが調子に乗って高笑いしてたところに、上から光る矢が降って来る。
上空に逃げたイコールさんに、地震も渦巻きも関係無いもんね。
「だあっ、ちょこまかと鬱陶しい!」
「こっちを忘れんなよ?」
そっちに視線を集中したところで、俺が銅貨を取り寄せて指弾で飛ばしてぶつける。
「貴様ら、わしを本気で怒らせたな?」
ポセイドンさんの顔が真っ赤だ。
本当に腹が立ってるらしい。
2体1って楽で良いよね。
別にこんな奴俺一人で、なんて正義感も持ち合わせちゃいないし。
利用できるものは、利用させてもらおう。
バトルが続いておりますが……
あと1話で6章終了。
7章日常回スタートです♪
次は、間に合えば17時投稿で。
新作第3話公開中。
「(仮)邪神の左手 善神の右手」 下にリンク張ってます♪




