第21話:クアザイ・ヴァルハラ
取り敢えず帰宅。
疲れた。
「クアザイ・ヴァルハラのダンジョンの方はどうされますか?」
「ん?」
クロノの報告を受けて、ベルゼバブにビジョンを切り替えてもらう。
イコールさんのところだから、あまり心配はしてないけど。
案の定酷い惨劇だった。
落下を利用した、転移無限ループ系の罠ばかりだから天使なら簡単に攻略できると思うだろ?
そこはイコールさん。
抜け目がない。
さらにダンジョンを改良して、クッパ城みたいにしてるんだよね。
いや、もっと凶悪に。
不規則に矢が飛び交い、火が放たれる常時発動型の罠。
これを避けるには、地面を歩くか天井すれすれを飛ぶしかない。
でもって、天井。
ドッスンならぬ、四角いゴーレムが定期的に降って来る。
強力な磁気を帯びて。
鉄製の装備を持ってる人はご愁傷様。
ゴーレムに磔にされて、地面に叩きつけられゴーレムごと無限ループの罠に引き込まれる。
巻き込まれゴーレムが可哀想。
等のゴーレムたちは無限落下とか楽しんでそうに見えるから、良いけど。
「特に問題無さそうじゃん」
「そうですね。以外と真面目に対応を考えておられたようで何よりです」
クロノも褒めてる。
ということで、ゆっくりしよう。
あっ、その前にワイトキング御一行を送り返さないと。
「あー、ガレットが復活したら、ブラムス様助けられるかな?」
「え? 生者になっても硫酸で腕が……」
「そこは、気合で!」
「いや、装備でなんとかなるじゃろうが!」
グリの質問に、黒騎士が嫌そうな顔をする。
さらにグラが突っ込む。
気合で硫酸に腕を突っ込むのか?
無理だろう。
そして、ワイトキングの突っ込み。
正しい。
ワイトキングって、ブラムスのダンジョンに置いておくのは勿体ないよね?
今度スカウトしよう。
わーわーうるさいので、4人をブラムスの元に送り返す。
「取りあえず、アテネを自由にしよう!」
「はいっ!」
先ほどから白い顔をしたまま、微動だにしないアテネの時間停止を解除する。
「大丈夫?」
「ヒッ!」
声掛けただけなのに、怯えられた。
「お前は……地獄の獄卒か何かなのか? アンデッドを聖水と硫酸の水に五体切り分けて突っ込むなど、正気の沙汰じゃないぞ!」
どうやら、神にとってもかなりの拷問に映ったらしい。
文化の違いかな?
「マスター固有の文化をお持ちなのですか?」
「いや、日本じゃ割と当たり前?」
「そんな訳ないでしょう!」
クロノに怒鳴られた。
日本じゃ、普通だぞ?
だって、日本の地獄の観念とか酷いもんだぞ?
他の生き物を殺して懺悔しないだけで落ちる等活地獄とか……
罪人同士で殺し合う地獄だ。
参加しなければ、鬼に殺される。
でもって、死んだらすぐに復活させられてまた殺し合い。
あれっ?
俺って、いまこれ等活地獄に居るんじゃ……
まあ、良いや。
つーかそんなとこに居たら殺されるくらいなら殺してやるつって、反省どころか余計に拗らせそうな地獄だけどね。
ちなみに、刑期は1兆年後半。
恐ろしいのは、蚊を殺してよっしゃー! って思う人間もここに落とされる。
ようは、大半が普通の人じゃん!
みたいな地獄。
普通の人が2兆年近く殺し合ってようやく、許される地獄。
これが序の口。
そんな地獄が、日本には272個もある。
面白い地獄もある。
衆合地獄とか。
エッチな人が落ちる地獄。
刑期は約107兆年。
ありえんだろ!
そこにある小地獄も面白い。
例、団処地獄。
牛や馬に獣姦したら落とされる。
そこには、牛や馬が居て同じように獣姦しようとしたら牛や馬の体内の炎が性器を通じて、罪人を焼き尽くすとか。
なんのこっちゃな地獄だよ。
そんなのが沢山。
それを真面目が仏僧たちが考えて、伝えてる。
そんな国に生まれた俺からしたら、アンデッドの聖水漬けなんて温いと思うけどね。
「日本人は異常です」
「ありがとう」
取りあえず、テューポーンのところはすでに天使隊が全滅とのこと。
そりゃそうか。
第1階層で、分断されて竜に殺されるだけのダンジョンだもんね。
天使一人で竜に適うはずもなし。
のきなみ、天使殺しで進化してるし。
派遣された神はアポロン。
遠くから矢でテューポーンを殺す予定が、罠に掛かって天使殺しで進化した火竜のもとに。
まあ、神の中でも上位神で戦闘も出来る彼は善戦したと思うよ。
でも、若い火竜じゃ手に負えないと踏んだテューポーンが、そこにいってアポロンを食い殺してた。
元々天使殺しも、神殺しも成し遂げてたテューポーンは、レベルアップが捗った程度の認識だったみたいだけど。
アテネ曰く。アポロンもアレスもユーノーさんの元で復活してるんじゃないかな? とは言ってたけど。
ただ、2人ともこれからはダンジョン制圧に消極的になるだろうね。
「あー、アテネが居るとヘルがこの部屋に入れないのか、有難うカーミラ。ちょっと、行ってくる」
狭い密室に女神と二人きりということで、ヘルがかなり荒れているらしい。
いやいや、別に鍵とか掛けて無いし。
それに、アテネを襲うという掛けに出るのはちょっと早計。
いや、ヘルやカーミラたん、メイベルたんが居るのに他の女にうつつを抜かすわけないじゃ無いか。
「マスター……」
寝室に行くと、シルバに縋るような視線で見つめられる。
ハッハッハ!
野郎に見つめられても嬉しくないぞ。
でも、気持ちは分かった。
ヘル、シルバから離れようか。
「旦那様!」
「ヒヒ―――ン!」
ヘルが俺を見つけて嬉しそうに駆け寄ってくる。
と同時に、シルバの鬣がごっそりと引き抜かれる。
どうやら、シルバの鬣で花占いみたいなことをしてたらしい。
部屋の隅で、ファングも震えてた。
「ブル! ブルルル! ブル! ヒヒーン! (浮気……浮気じゃない……浮気……浮気じゃない……本気と呟きながら、一本ずつ毛を抜かれて怖かった)」
「そうかそうか……何言ってるか、分からんぞ!」
「ヒヒン」
「なんか、悲しかったことだけは伝わった」
もう少し、シルバともコミュニケーションを取った方が良さそうだ。
「もっと、私に構ってよー!」
「はいはい、良い子良い子」
腰にしがみ付いてきたヘルの頭を優しく撫でる。
ご機嫌が治ったようで、ファングも普通に俺のとこに寄って来る。
可愛い、可愛い。
ちょっと、癒された。
「マスター……クアザイ・ヴァルハラが……」
「えっ?」
3人で楽しく過ごしてたら、クロノが割って入って来る。
「墜ちそうです」
「はっ?」
あと、1話か2話で第6章も終わりです。
その後は、いよいよ最終章です♪
最終章は2週間くらいで完結予定です。
完結したら一週間くらい一旦閉じて、閑話や後日談を書き貯めて投稿します。
いましばらくのお付き合いお願いします。
完結するので、ブクマ剥がさないでーーー( ノД`)……くださいm(__)m
新作第3話公開中。
「(仮)邪神の左手 善神の右手」 下にリンク張ってます♪




