第19話:黄泉のダンジョン
「ブラムスの配下が既にボロボロに!」
「まあ、ゾンビですからね」
ついいましがた、ダンジョンの外の時間停止をクロノに解除させたばかりだというのに、すでにボロボロのブラムスの部下達。
一部、白骨化まで進んでいる。
「スケルトンですからね」
「雰囲気だよ、雰囲気!」
クロノが真面目すぎて全然楽しくない。
「本当に、まだ1階層なのか……」
横で、アテネが驚いているけど信じてなかったようだ。
これで、分かって貰えたとおもう。
「あれは?」
「どうやら、黄泉のダンジョンの制圧に本気のようですね。アテネに次ぐ強さを誇る戦神アレスですよ?」
そうなんだ。
「アテネよりは弱いの?」
「はい!」
「じゃあ、クソ雑魚じゃん!」
「えっ?」
俺とクロノのやり取りにアテネがショックを受けている。
事実だ。
素直に受け取れ。
「まあ、兄は確かに戦争ともなると私より弱いが、時に個としては私を凌駕するぞ?」
「たまに雑魚ってことか?」
「雑魚……」
そもそも、最近またゲーム説が俺の中で復活しつつあるんだよね。
だって、神がこんなに弱いわけないし。
神様だよ?
不思議パワーでエイッと、俺くらい簡単に倒せそうだし。
所詮は作られた偽物。
ゲーム内なら、神を倒したりってのも良くある話だしね。
「ゲームなどではない! 私は本物だ!」
「なに、突然叫んで」
「口に出てましたよ?」
……
気まずいから、ブラムスに集中しよう。
天使は200人くらいか?
うちのダンジョンに来た、力天使ってのらしいけど……
「ははは、みろクロノ! ゾンビが豆腐のようだ!」
「そうですね……」
その天使が剣を、槍を、斧をふるう度にゾンビの身体が弾け飛んでいる。
しばらく、あの階層には踏み込めそうも無いな。
臭いが気になる。
「ははは、みろクロノ! スケルトンがポッキーのようだ!」
「そうですね……」
その横では、天使が剣を、槍を、斧をふるう度にスケルトンの身体がポッキリポッキー折れていってる。
「あれは、ちょっと楽しそう」
「ストレス解消に良さそうですね」
「おまっ! 配下の部下だろ! その感想はどうなのだ?」
流石、女神様。
優しい。
敵の配下の部下に同情しちゃうなんて。
そんなこんなで、ワイトキングのところまで数を減らさずにきたアレス一行。
とこがどっこい、ここで想定外の事態発生。
グリとグラ?
何故か不在だった。
と思ったら、ワイトキングさんの両横に居た。
「【超重力圧】!」
なんか、魔法が強化されてない?
罠を警戒しつつ進んでいた天使の先行隊70名が、地面に一気に叩き落とされる。
そして、発動する罠。
「なっ!」
「馬鹿な!」
「しまった、罠が!」
地面から死霊が湧き出て来て、天使を掴むと魂だけを地中に引きずり込んでいく。
クロノをチラッとみる。
ブラムスとイコールさんのダンジョンって危ないんじゃ無かった?
「想定外です! 重力魔法がここまで効果的に効くとは」
「ブラムスより優秀!」
後続隊が、慌てて部屋に入らずに止まっている。
「グリ、グラ! 頼んだぞ!」
「「了解!」」
「【堕落】!」
「【死霊復活】!」
グリによって、堕落させられた天使がアンデッドとして復活する。
敵戦力をそのまま味方に引き込んだか。
あれっ?
いや、こいつらブラムスより全然使えね?
「ちっ、仕えん奴らめ! 【戦火招来!】」
軍団の後ろから声が聞こえたかと思うと、室内が炎に包まれせっかく召喚した天使のアンデッドが消し炭に変わる。
ついでに、ワイトキング達も。
あれっ?
なんか、君たち輝いてない?
「ここは?」
「あれっ? お兄さん?」
「ひいっ!」
それはあまりにも勿体ないので、火が目隠しになっている間にブラムスのダンジョンに転移して3人を回収して戻ってきた。
あと、酷いぞワイトキング。
あんなに、仲良く特訓した中じゃないか。
「あー、やり直してますのでその当時の記憶は無いはずです」
「あれっ? じゃあ、なんで怯えてるの?」
「何か、感じるものがあるのでしょう」
なおさら酷いわ!
てっきり、特訓の時のことを思い出して怯えたのかと思ったら、本能で怯えてたらしい。
魂にも記録されてないはずなのに……
不思議。
「まあ、お前らはゲームオーバーだからここで一緒に見学な?」
「は……はあ」
「お兄さん見てたのに、助けにきてくれなかったの?」
「助けに言ったじゃ無いか」
本当に助けただけだけどね。
というか、物凄く強くなってるようなオーラを感じるんだけど?
ワイトキングに到っては、身に着けてる装備も2段階くらい上がってそうだし。
顔もなんとなく凛々しい。
「お前らさ? なん「先に行くぞ!」
ワイトキングに話を聞こうと思ったけど、現場が騒がしい。
現場の蠅さん、状況をお願いします。
なになに?
消しクズになった天使の灰を、アレスが復活させてまた侵攻を始めた?
死んでも復活出来るとか、ズルくね?
まあ、良いや。
3人がボサッと立ってて、目障り。
「まあ、立ちっぱもあれだからそこに座れよ」
「えっと、こちらの女性は?」
「アテネさん。俺のダンジョンを潰しに来た命知らず」
「あー……大丈夫ですか?」
「なんで、骸骨に心配されなきゃならん! 敵だろう! お前、こいつらに何したんだ!」
なんで、俺が怒られてるんだろう。
ちょっと、ダンジョンで暴れまくったけどやり直しで無かったことにしてるのに。
「うちのマスターの5体をバラバラにして、首を樽の上に置いた状態で身体、腕、足を聖水漬けにしてました」
「お前は鬼か!」
「魔人です!」
「そうじゃない! いや、種族でいったら鬼や悪魔の方がよっぽどマシじゃ無いか!
流石にそれは傷付く。
っていうか、あれってそんなにトラウマになるレベルで酷い拷問だったんだ。
「それ以上進むと、斬るぞ?」
「ソウル・イーターか……厄介だな」
そして、ブラムスのダンジョンに進展が……
どうやら、黒騎士が対峙しているようだ。
すでに何体かの天使が翼を捥がれて、地面に落ちて呻いている。
本当に、部下が優秀で羨ましい。
「大罪系一人で全員相手出来ますよ?」
「そうなの? あいつらそんなに優秀だったんだ」
「ボスシリーズ最強ですからね。強すぎて従えられるのがテューポーンかマスターくらいしか居ませんが」
おお、テューポーンってそんなに強いんだ。
「まあ、ゼウス様を降した事もありますし」
「凄い奴だった!」
「騙されて、力を無くす実を食べちゃって負けちゃいましたが」
「やっぱり、馬鹿だった!」
それよりも、黒騎士さんはっと……
「ふーん、まあまあだな」
「クソッ! 流石は神か……」
ああ、意外とあっさり。
そうでも無いか。
アレスもなんだかんだで、傷を負ってた。
「これで終わりだ! 【冥界葬送】!」
おおおおお!
なんか、これはヤバそうだ。
「馬鹿な! 神が何故闇属性を!」
「俺は、ハデスさんと仲が良いんでね」
そうなの?
ハデスってのは、いくら俺でも知ってる有名な神様だけど。
でも、黒騎士も連れてかれるのは勿体ないから回収しとこう。
転移鉄で転移して、クロノさんや……回収宜しく!
「ここは!」
「おお、ガレットも来たのか」
「ガレットっていう名前だったのか……まあ、良いや。黒騎士で」
「えっと……クラタ様?」
「まあ、お前も確実に負けてただろうからこっちで見学してこうな?」
「はい?」
状況がよく掴めていないようだけど。
気にするな。
「もうちょっと、寄ってもらっても良いか?」
「すまない、身体が固定されていて動けないのだ」
「ああ、それは悪い事を申した。ではわしがそっちに移ろう」
何気に、ワイトとアテネが普通に会話してて面白い。
なにも横一列に座らなくても、コーナーソファなんだから側面に座っても良いんやで。
黒柳徹子ポジション的な?
あれは、ソファと椅子か。
「僕、黒騎士の膝の上で良いよ?」
「だまれジジイ!」
「酷いよお兄さん!」
今更ショタぶっても、実年齢くそジジイなのは知ってるからな?
「酷いではないか! このような幼子に!」
「いや、そいつら300歳超えてるからな?」
「まだ、子供じゃ無いか!」
そういや、アテネさんって実年齢4桁中盤だったっけ?
そこからみたら子供かもしれないけど、神様基準で考えんなし!
その理論でいったら、俺は赤ちゃんか?
もっと、優しくしてもええんやで?
「ばぶー!」
「馬鹿にしてるのか?」
怒られた……
解せん。
「貴様がマスターか!」
「ここまで来るとは……というか、戦神とか反則じゃね?」
誰だあいつ!
「ブラムスですよ」
「そうだった……」
相変わらずイタイタしい恰好だ。
とうとう、裸にダイレクトで黒革のベストを着るようになったのか。
しかも無駄に長い。
しかも腰から下は黒い布が継いである、ロングベスト。
ダサイ。
首にはジャラジャラとネックレスが増えてるし。
髪は緑のオールバックから、モヒカンになってるし。
あと、七分のパンツの下にカラフルなタイツまで……
耳にピアスまでしてる。
「クラタ様が褒めるからです」
黒騎士にジトッとした目で見られた。
フルフェイスのヘルムなのに、何故か分かる。
「あいつ……凄いな」
「それは、どういう意味で?」
アテネさんが、凄い表情をしているけど大丈夫だろうか?
「ブラムス様!」
「おいっ! お前! 足をどけろ!」
「なんだ、お前ここのマスターだろ? 正直、一番弱く無いか?」
「グググ」
うそ……だろ?
2~3言会話してる間に、ブラムスがアレスに足蹴にされてる。
弱すぎだろ!
「お前ら、俺に構わずクラタ様に助けをグハッ!」
「行かせるかよ!」
そのままアレスに、顎を踏み砕かれる。
なんか、ムカつくなあいつ。
あと、助けを求めるまでもなく現在進行形で見てたりするんだけどね。
「クラタ様! マスターを助けて!」
グラが俺の裾を引っ張って、見上げてくる。
円らな瞳で。
ウルウルさせながら。
でも、こいつジジイなんだよね……あっ、急に助ける気が萎えて来た。
「ブラムスさっ……」
ブラムスを助けに向かったカインが、天使達に囲まれて壁に磔にされる。
アベルも槍で地面に縫い付けられている。
「お前らでも、もうどうにでも出来るだろ? 俺はコアを探しに行くわ」
そう言って、アレスが部下の天使達に任せて先に進み始める。
うんうん、じゃあコアのある部屋に先回りしてこいつを殺してやるかな?
その前に、カインとアベルくらいは助けてやってもいいか。
「こんな奴がダンジョンマスターだってさ!」
「クソッ! お前ら……」
天使達に剣を突き立てられながら、ブラムスがアレスを睨み付ける。
流石、不死者の1人。
簡単に死にそうには無いが、それでも基本が聖属性付与の攻撃だ。
着実に削られていってるのが分かる。
そろそろ、本当にヤバいかな?
もう少し大丈夫かな?
「大丈夫に見えますか?」
クロノに突っ込まれた。
まあ、大事な会議室だし……そろそろ俺の本領発揮といきますか。
「こんなダサイ恰好しやがって!」
「本当、恥ずかしくねーのかよ!」
うんうん。
恰好の事は言わないであげて。
本人は気に入ってるんだから。
ちょっと、時代を先取りし過ぎただけだから。
ん?
凄い勢いでアレスの横を何かが飛んでった。
「なっ! こいつ!」
「えっ?」
アレスの先には、壁の染みになった天使の姿が。
あれっ?
誰か助けに行ったのかな?
「ブラムス様!」
「えっ?」
ブラムスの方に目を向けると、丁度ブラムスを甚振ってた天使が弾き飛ばされるところだった。
「なんだというのだ……」
後ろが騒がしくなったことで、アレスが不信に思い振り返る。
そのアレスの視線の先にはユラリと立ち上がるブラムスの姿。
うん、意味が分からん。
「きさまらああああああああああああ! 絶対に、許さんぞおおおおおおおおおおおお!」
そして、ブラムスの咆哮がダンジョンをこだました。
「マスター……宜しいか?」
「サタン?」
急にサタンが目の前に現れる。
こいつらが、自ら来るのって珍しいな。
「主の配下の者から、強烈な怒りの波動を感じました。助太刀の許可を」
「えっ? あっ、うん」
俺の返事を聞いたサタンが、目の前から消える。
どういう事だろう……
あと、君も転移が仕えるのね。
ズルい。
ブラムスに一体何が?
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ということで、続きはWEBで。
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