第12話:ロキの目的
「どうした婿君! 君の力はそんなものか? それじゃあ、娘はやれないな」
「おい、クロノ!」
「はいっ!」
攻撃を全て瞬間移動で躱されて、全然当たらない。
しかも、時々くる反撃が魂にずしりとくる一撃で、結構辛い。
それも手加減されてるのが分かるレベル。
「えっ?」
「もらった!」
「グハッ!」
なので、クロノにロキの足だけ時間を止めて貰った。
殴りかかったら足が固定されてたロキが、瞬間移動に失敗して前のめりに倒れてきたので膝を顎に叩き込んどいた。
「2対1とか恥ずかしくないのか?」
「全然?」
「痛い!」
殴り始めてから当たるまでの時間をクロノに消させた。
完璧なるノーモーションパンチ。
だって、殴る過程を時間消去で消したからね。
殴りはじめた瞬間、殴ったという結果に到達する攻撃だ。
クロノ……マジでこいつ最強じゃねーのか?
「あくまでサポーターですから。代わりに戦ったりはしませんけど……ロキはムカつくのでとことん力を出し切ります」
「おお、お義父さんうちの秘書にやったらと嫌われてるな?」
「ああ、パパは一部の神以外……というか、神以外には殆ど嫌われてるんじゃないかな? 嘘吐きの代名詞だし……私も嫌いだし」
「ハッハッハ! それはパパ傷付くぞー」
余裕だな、このおっさん。
結構殴ったり、蹴ったりしてるのに魂の総量自体が桁外れに多いのか?
「じゃあ、ちょっと本気出すかね?」
一応ヘル達のお義父さんって事で手加減してたけど、ちょっとイラついたので100%になってみる。
「うーん、それで殴られたら結構痛そうだねー」
「試してみたら分かるぞ?」
「いやん、か弱い女性を殴る気?」
ロキが一瞬でパッキン姉ちゃんに早変わりする。
残念。
おっさんの後に見せられても、完成度の高い女装にしか見えん。
ニューハーフでもおかまさんでも無い女装は、男だ!
「酷い!」
「だまれ変態!」
ベッピンな妻と庇護欲をそそる幸薄そうな美人妻が居るのに、牝馬に変身して子作りするような変態だ。
殴ったところで、何の罪悪感も無い。
ていうか、割と本気で殴ったのにこの反応。
マジで強いのか……この変態。
「まあ、おふざけはこのくらいにして」
「えっ?」
またも、一瞬でベッドに移動しやがった。
クロノ油断したな?
「神々に婿殿が狙われてしまったからね。まあ、俺は北欧の産まれだからヘーラーの呼び出しに応じるつもりは無いから安心して」
「急に真面目になるな! この振り上げた拳の下ろしどころに困るわ!」
まあ、真面目に話をしてくれるなら良いけどさ。
「元から真面目に話しに来たんだけど、娘達が突撃してきたからね」
「真面目に話をしに来た奴が、女装して相手の布団に潜り込むのか?」
「シャレだよシャレ」
それのどこが真面目なんだ?
扱い辛い。
まあ、ヘル達に嫌われているのがせめてもの救いかな。
「取りあえず、これをあげるよ」
「なにこれ?」
「レーヴァテインとグングニル。いるでしょ?」
良いのかな?
グングニルって確か、オーディンさんの武器じゃ。
「気にしなくて良いよ、それドゥベルグに新たに作らせたからやつだから。あっ、ドワーフの方が馴染み深いかな?」
「うん、分からんけど、分かった」
「パパ、またイーヴァルディさんとこの子供達騙したの?」
「騙したとは人聞きが悪いな。あれは彼らがトールの嫁のかつらを作った時についでに作ったのを貰ったんだよ」
「あれは、パパがシフおばちゃんの髪を悪戯で剃ったりするからでしょ?」
なんか話だけ聞くととんでもなパパさんだね。
悪戯で人妻の髪の毛を剃り落とすとか、子供か!
「まさかトールがあんなにブチ切れるとは思わなくてさ」
「普通キレるだろ!」
思わず突っ込んでしまった。
「だって、親友だよ?」
「余計に性質が悪いわ! 親友の嫁の髪を剃り落とすとかありえんだろ!」
「僕がおかしいかったのか?」
なんで、そこでショックを受けたような表情をするんだよ。
というか、普通に考えたら分かるだろ!
「北欧ジョークだったのに」
「それが、北欧ジョークだってんなら北欧人とは分かりあえんわ」
「北欧の神もジョークだって分からないから、パパは何度も殺されかけたのよ」
「僕は北欧でも、浮いてたのか!」
なんなんだよ、こいつは!
もうやだ、疲れる。
「あー、グングニルは取りあえずなんでも砕く、百発百中の槍で投げた後戻って来るから」
「戻って来る速度が速すぎて俺に刺さったりしないよね?」
「大丈夫だって! ちなみに絶対貫通どころじゃないからね? 結果付与【貫通】だから……投げたら貫通だから」
「もはや絶対貫通とはなんなのか……」
ちなみに世界中でグングニルのみに付与されたスキルらしい。
他には存在しないとのこと。
ドワーフの作り出した槍に、ロキがルーンを込めないといけないのでロキが作らない限りもう増えないらしい。
「滅茶苦茶疲れるから、もう1000年は作る気無いよ?」
そんな大変なものをくれるなんて、なんだかんだで娘が可愛いのかな?
「レーヴァテインはね……面白くて作っただけだから、普通の神剣くらいだよ」
「うん、神剣の普通が良く分からん」
「まあ、神を切れる剣とでも思っておいて」
なるほど。
それは有り難い。
でも、見返りは……
「義息子への援助さ。表立って僕が手伝うのはちょっと……」
「なんで?」
「ほらっ、他の神に嫌われたくないし」
こいつ、やっぱりサイテーだ。
「じゃあ、俺の事無視しても良かったんじゃね?」
「いやあ、神殺しの武器持たせたら面白い結果になりそうじゃん?」
違った。
こいつ、屑だ。
面白いとかって理由で、リーサルウェポンくれるのか。
面白くない。
「本格的に動き出すのは10日後くらいかな? それまでにしっかりと準備しといた方が良いよ?」
「ああ、取りあえずえいっ!」
「ちょっ!」
神殺しが本当か試したくて、レーヴァテインをロキに刺そうとしたらあっさり躱された。
残念。
じゃあ……
「ああ、当然だけどルーンを刻んだ僕にグングニルは当たらないからね? そのくらいのセーフティロックはかけてるに決まってるじゃん」
「残念、本当に残念」
「ちょっ、酷い義息子も居たもんだ」
ロキが笑いながらこっちを見る。
そして、徐々に身体が空けていく。
「まあ、これも本体じゃないからね? じゃないと、こんなガッチガチに変態スペックなダンジョンに忍び込めるわけないじゃん」
「あー、そうなの?」
「精神だけを空気に乗せて飛ばしてきたようですね。 しかしここまで具現化させるとは、本当に無駄に器用です」
クロノが何やら残念そうだ。
たぶん、本体じゃないから途中で手を抜いたんだろう。
殺しても意味が無いということか。
食えないおっさんだ。
「それじゃあ、アデュー!」
イラっとした。
いつか、本体に会ったらぶん殴ろう。
それにしても、あと10日か……
割と余裕があって、逆に悩む。
1週間くらいぼんやりしてても良いかな?
「いてっ」
頭の上にカタログが降ってきた。
対策を練ろって事ね。
はいはい……面倒癖。
おお!
これ良いじゃん。
マイマクラのオリジナル枕。
ちょっと、これ作ってもらわなきゃ!
進行回というか戦争準備回はあと1話で終了です。
そこから少年漫画よろしく、こってこてのバトル展開に!
なるのかな?……不安です。
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