7話
王城の近くの村が襲われたらしく、ギル・ラインハルト・リョウ・マリア・俺の5名で魔物討伐に行く事になった。なんといういきなりの実践。
まぁ、後ろに下がってナイフでも投げといてくださいってリョウに言われたけどね。習うより慣れろというやつだ。魔物との過酷な戦いを、実際に目で見て体験した方がはやい。
レベル1なので、もう少しお手柔らかに頼みたいところですけどね。
マリアっていう女の子は聖女らしい。ステータスはこちら。
マリア・リィ・ステリッド・マロウ
Lv:65
14/聖女/水・風
攻撃力:32
防御力:65
魔法攻撃力:375
魔法防御力:627
魔力:4850
『女神の加護』
桃色のウェーブが掛かったちょっと眠そうな顔をした女の子だ。勇者パーティーに女の子成分が足りなかったのでホッとした。だがしかし、その女の子の顔色は良くない。この子も魔王と仲間だったのだ。魔王討伐なんてしたくないに違いない。俺はその空気を察して、話しかけない。
しかし……聖女でマリアって名前って……狙っているとしか思えない。
魔王復活により、魔物が活発化し、街を破壊していく。まだ勇者パーティーには2名ほど足りないが、今回は城に戻るので、問題ないらしい。
俺も辛うじてナイフ攻撃が出来るからな。ナイフの方はすでに道具箱でスタンバッている。ナイフ投げは思い通りの場所に出てくるからノーコンでも大丈夫!!視線を向けた先に道具箱を開ける事が出来るのだ。
『……可笑しいのう』
ん?何が?
『街の警備の者がもっと慌てても良いはずじゃろうに……随分と平和じゃのう』
前とかだったらもっと慌ててたんだ?
『そうじゃ。あらゆるところの魔物が活発化するからのう。村へ出向いたり、おおあらわじゃったよ。しかし、街の人間ものんびりしてるのう……どうなっておるのじゃ』
……そうなのか?前々から準備してたんじゃないか?もうすぐ来るって分かってたなら心構えも出来るだろ。
『……そうかのう』
俺は黙ってギル達に付いて行った。孤立してしまった村の住人達を迎えにいくんだと。助けを求めてきた村の者は、大きな怪我を負っていたが、一命は取り留めたそうだ。他の村の住人は村に取り残されて魔物に囲まれてしまっているらしい。
それって……言っちゃ悪いが、まだ生きているのだろうか?ああ、くそ……勇者ってこんな重い気持ちでいかなきゃならんのか。
食糧や調理道具は俺の道具箱に入れさせられた。まぁ、俺も文句はない。別に負担がある訳でもないし。調理道具は良く使いこまれていた。魔王は仲間に料理を振る舞っていたそうだ。
その料理はとても上手く、種類も多岐に渡る為に食事は彼らの楽しみになっていた。調味料もたくさんあったので、俺でも何か作れそうだ。俺もそれなりに料理は得意だ。幼馴染がたまに食べに来て褒めてくれた事もある。
なので、俺は料理係を申し出た。皆顔を見合わせていたが、頷いてくれた。魔王討伐メンバーで辛うじて料理が出来るのがラインハルトだけだったのもある。馬の休息中に俺は料理をする事なった。まずはあれだろ。肉じゃがだろ。得意料理だ。この世界にも醤油やら味噌があるんだな。じゃがいも、人参、玉ねぎもあるし。
手早く肉じゃがを完成させた。試しに肉と汁を味見してみたが、それなりの出来だ。何故か人参の匂いが強いが、この世界ではこういうものなんだろう。完成した料理を出すと、皆なんだか難しい顔をしていた。なんだろう……そんな真剣な顔で見つめられると緊張しちゃう。
リョウが口に運んだ。咀嚼している様子をドキドキしながら見つめる。
「これ肉じゃが……なんですよね?」
「え?は、はい」
どう見ても肉じゃがである。っていうか皆も知ってるんだな、ちょっとびっくりした。この世界の料理ってのはなかなか進んでいるんだな。
「……じゃがいも多くないですか?」
「……え?」
いや、何言っているんでしょう。肉じゃがなんだから当然だろう。
「まぁ食べてみて下さい」
「あ、はい」
俺は自分の皿に入ったじゃがいもを口に運ぶ。
「ごふっ」
吹いた。じゃがいもの姿をしたものから何故か人参の味がしたからだ。
「なん……なんだこれ」
そして人参からはじゃがいもの味がした。なんぞ。なんぞこれ。逆だ。味が逆だ。何故だ。どうしてこうなった。どうりで汁の味に人参の味が良く出ていると思った。
ちょっと意味わからない。何故ここで異世界感を出す?普通にじゃがいもでいいじゃないか。分かった、これは確かに「じゃがいも」が多い。
オレンジ色に染まった肉じゃがを想像して欲しい。現在の味はそういうものだ。見た目は完璧なのに。皆は本当に微妙そうな顔で俺の料理を口にしている。俺も物凄く微妙な気持ちで料理を食べる。
人参の味が口いっぱいに広がる。見た目と味のギャップに口に入れる度に動揺する。なんだこの味は。王城の食事は原材料が分からない位手の込んだ料理が多く出て来たので分からなかった。
「俺が料理変わろうか?」
「い、いえっ。ちゃ、チャンスをくださいっ」
ラインハルトさんが申し出てきたので慌てた。いや勿論変わっても良いのだが、ここで挽回させたい。
『料理でなく、戦闘で挽回させたらどうかえ?』
あ……うん。ソウデスヨネ。そうなんですがね?レベルがね、あのね、恐らくは役立たずなんですよね。ええ。エイリスさん俺への風当たり強くね?
「旅にも慣れて行かないとダメですし、しばらくはアルの残した料理で良いんじゃないですか?」
「……はい」
リョウの戦力外通知に情けなく頷いた。
「グルル……」
ダークウルフ
Lv:25
攻撃力:170
防御力:230
『牙裂』
黒いオオカミが3匹エンカウントした。ラインハルトとギルが前衛、とマリアと俺が中間、後衛にリョウ。早速ラインハルトが一匹に斬りかかる。
「ファイロ・ファイア」
中級単発火魔法をギルがラインハルトを狙っていたダークウルフに放つ。
「グラス」
リョウが残りのダークウルフを身動き取れない様に植物を巻きつける。
「ヴェント・ウィンド」
ギルが足止めしていたダークウルフにマリアが中級単発風魔法で切りつける。
「ぎゃうん!」
その間にラインハルトが相手をしていたダークウルフが息絶えた。俺は……えっと。取りあえず身動き取れないダークウルフにナイフ投げとくか。ドドドッとダークウルフにナイフが襲うが、少し傷が付くだけだ。圧倒的に攻撃力が足りてない。
「ヴェント・イニスタリー・ウィンド」
リョウの風魔法がダークウルフに襲い掛かり、ビクビクと体を跳ねさせる。……うん、ちょっと俺気分が悪ぅなってきました。ビチャビチャと赤い血が溢れて地面を赤く染め上げる。現代日本人(笑)の俺が耐えられるはずもなく……吐きそうになった。
『ヒイラギ……』
なんとも残念な奴だなコイツ、といわんばかりの声色だった。ぐぅっ……し、仕方ないだろう。ま、まだ吐いてないもん。ちゃうねん。これはちゃうねん。涙目で口を押えてダークウルフが留めを刺されるのを見つめる。た、耐えろ……。ま、まだ吐く時じゃない……。こんな事で吐いてたら魔王なんて討伐出来ないぞ。
込み上げるこの気持ちは素敵な何かだよ、きっと。
「あ、あの。大丈夫……?」
マリアが心配そうに俺を眺めてくる。コクリと頷くが正直あんまり大丈夫ではない。喋ったらきっと酸っぱい何かが溢れて来るよ。犬の惨殺死体を見て平気な顔をしている神経は俺になかった。
これ、慣れるのだろうか?あ、やべぇ……血だまりに落ちてるナイフ、回収とかした方がいいよね?あれも無限じゃないんだし。
「ヒール」
マリアが俺の背中に手を当てて回復魔法をかけてくれた。すると、こみ上げてきた気持ち悪さがスッと引いてくれた。おお、ヒールって気分の悪さにも効くのか。なんでもアリだな、異世界。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
コクリとマリアが頷いて惨殺死体の方へ向かっていく。そこには死体からナイフを回収したラインハルトがいた。手が血みどろである。う、うわ……申し訳ないです。
「ウォータ」
バシャバシャと良い感じにマリアが水を出し、ナイフとラインハルトの汚れを洗い落す。血を洗い落として、ラインハルトがナイフを俺に差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
俺は恐縮しながらソレを受け取る。何もかも申し訳ない。
「アイル・ヒール・ラウザー」
「『女神の加護』:初級浄化:全体」という文字が見えた後、ふわりと辺りに優しい光が灯る。すると、黒く禍々しいダークウルフが灰色っぽい普通のオオカミのようになった。それから、オオカミの身体がキラキラと光り、粒子となって消えて行った。
おお……聖女っぽい何かだよ!いや、実際聖女なんだけどさ。なんだかこの辺りの一帯の気が綺麗になった気がするよ。流石聖女。
「マリア。マリアには浄化の作業があるから危険な時以外攻撃しなくていいぞ」
「ん」
ギルが声を掛けるとマリアは短く返事をして頷く。攻撃・回復・浄化してたら魔力を使う量が多いだろう。確かにそうだ。
回復は、俺に限定されているだろうけどなっ!!足手まとい過ぎワロタ。ワロタ……わら……えない。マジでなんなのこのお荷物感。あ、そうだ。レベル上がってないかな。
柊鏡夜
LV:10
16/勇者/火・水・風・土・光
攻撃力:58
防御力:57
魔法攻撃力:69
魔法防御力:37
魔力:120
『救世主』『神々の祝福』
なん……だと。LV9上がってますが。確かにさっきのダークウルフは結構高レベルだったけど……。急に上がったな!いや、嬉しいよ。やっぱり魔物討伐で上がるのか。
「大丈夫か?」
心配そうに俺を覗き込んでくるギル。ステータスを見ていたから気が付かなかった。急に動きを止めて虚空に視線を泳がせていたら、凄く怪しいだろう。ステータス見るのも気を付けないといけないな。
「だ、大じょば……くっ」
噛んだ。全然大丈夫じゃねぇ……。
『ヒイラギは残念な男じゃのう』
言うな……。口を押えて涙目になっている俺を、皆が残念そうな目で見てくる。恥ずかしさで頬が熱くなった。うう、やばい。勇者として色々やばい。なんでメンバー全員勇者よりはるかにレベル高いんだよっ。普通あれだろ。勇者が一番強いのが定石だろ。なんで最弱なんだよ。
『いや、ヒイラギが弱すぎるのじゃろう。今までの勇者はいきなり強かったからのう』
うわぁあん!この剣俺をいじめるよっ!!いじめアカン。
「勇者様はなんというか……」
「しっ」
「ダメ。言っちゃ」
リョウが純粋そうな顔で残酷なセリフを吐こうとしたのをギルとマリアが止めた。でもその様子も俺の心を酷く傷つけたよ。
「ま、まぁ次に進むとしよう」
気を取り直してラインハルトが先を促す。ラインハルトの顔は引きつっていた。ほんとごめんね。こんな勇者でごめんね。
でも聞いて聞いて。俺レベル上がったよ……。
俺は彼らの後ろをとぼとぼと付いていく。
何度か魔物にエンカウントしていって、村に無事着いた。
俺のレベルは現在。
柊鏡夜
LV:19
16/勇者/火・水・風・土・光
攻撃力:127
防御力:118
魔法攻撃力:138
魔法防御力:89
魔力:560
『救世主』『神々の祝福』
すげぇ上がったんだが。なにこれすごい。まぁ、敵のレベルも高かったからだと思う。全部20レベル台の敵だったからな。いきなりあのレベルはないわー。いきなりレベル1の奴連れて行くとこちゃうわー。まぁおかげでかなり上がったんですがね。
改めて村の様子を見る。少し遠くの方から伺っているが、魔物たちが村を囲うようにしている。飛び掛かっている個体もいるようだが、何かに阻まれて入れないようだ。
「結界なの」
「これだけの量の魔物に耐えられる結界か……」
マリアとギルが呟く。阻まれている様子を見るに、確かに、結界をしていそうだった。中の村の家々は荒らされた様子には見えない。まぁ、中までは伺えないが、恐らく村民は殆ど無事と言っていいんじゃないだろうか?
俺は目を細めて結界を見る。
『理への反逆』:結界「魔物」
あっ……。
思わずリョウに掛けられている魔法も見てしまう。でもどう見ても同じスキルが使われている。魔法は違うけど『理への反逆』という同じスキルが使われているのだ。
村を守るようにして張っている結界をただぼんやりと眺める。これ、魔王が張った結界か?……いや、同じスキルが存在しても可笑しくはないが……。結構強い結界らしいし、魔王である可能性が極めて高い。
もしかして、街の人間が慌てていないのも、魔王の結界が張ってあった……?可能性としては、大いにありうる。魔王には勇者と同じ瞬間移動の特殊スキル持っているし、行った事ある所に行って結界を施す事も可能。
魔物が活性化すると分かっていたから、こんな小さな村にも結界を張った?だとしたら、それは、どんなに。
「ボサッするなヒイラギ!来るぞ!」
ギルに声を掛けられてハッと我に返った。村の周りにいた魔物たちが此方に向かってきていた。俺は慌てて後ろに下がる。仲間に守られるような勇者って……。俺は情けなくなる気持ちを奮い立たせ、空を舞う魔物を見据える。
「ファイア」
『神々の祝福』:詠唱省略・火:中級火魔法:単発一瞬そんなものが見えて大きめの火球が魔物を襲う。照準を定めている魔物をナイフで羽を狙って次々落としていく。
詠唱省略?なんだそりゃ。気のせいか?が、再度「ファイア」を放ってもやはり詠唱省略という文字が見えて、中級魔法が飛んでいく。詠唱省略といえば、ギルの特殊スキルにあったな。俺も使えるって事か?ああ、この『神々の祝福』スキルのおかげか。
すごい魔物の数が襲ってくる。そのどれもが禍々しく黒い姿だった。恐らく闇夜ならまったく見えなくなるだろう。狂ったように襲ってくる魔物達がこわい。今までの戦闘と比べられないくらいの多さの魔物。
「ぐぉお!」
「ひっ」という悲鳴はのみこんだ。ただでさえ守られながら戦っているのに、悲鳴まで上げるのはどうかと思ったんだ。だが、間近に迫る魔物の脅威に足が震えてしまう。
「安心して下さい、勇者様の安全は保障します」
リョウが近くにきて、そう励ましてくれる。だが今までの魔物の数と訳が違う。ギリギリまで近づいてくる魔物も多い。
「下がれっ」
ラインハルトの叫びでリョウが俺の首根っこを掴んで引っ張る。急に引っ張られたので、喉がきゅっとしまった。ぐえ……く、苦し。
すると、俺がさっきまでいた場所に黒い羽を持った大型の魔物が降り下りて来ていた。すぐさまラインハルトがソレに斬りかかる。瞬時に2度攻撃し、二度と飛べないように羽を切り落とす。その手腕は見事なモノだった。
というか、前よりも味方の動きが見やすくなっているな。これはレベルがあがったおかげだろうか。というか、絶対そうだろうな。
ラインハルトは血みどろになってしまっている。全て返り血だ。今までは返り血すら避けていたのだが、今はその余裕はないようだ。
「ヴェローテン・ヴェント・イージ・ウィンド。サニスト・イニスタリー・サンド。サニスト・ヴェント・グラス。ラルリスエル・アノイ・カイン・ヴェローテン・エポート・ボウ・コンパネイト・デントロイジー。ラルリスエル・アノイ・サニスト・ウィル・アンテルテン・デスクリード・エポート・ボウ・ファーティル・キュアー・ヒーラン……」
俺の近くにいる人がひたすら詠唱してるこわい。正確に全て読んでいるのだろう、次々に魔法を放ち、魔物に当てていく。この人の記憶能力と集中力も大したもんだ。今では柔らかい微笑は浮かべていない。そりゃそうか。
「クエイスト・ファイロ・イラ・ラージ・フレイム!―――クエイスト・ファイロ・ラージ・ファイアァ!!」
ギルの元気な声が聞こえてくる。もはや魔物が多くてどこにいるのか分からない。だが、前線で戦っているのだろう。魔術師なのに、前線行くとかマジか。あの人も流石に勇者パーティーに選ばれるだけはある。
「ルーボン・アイル・イニスタリーヒーラー・サムワン」
綺麗なその声で全体にキラキラとしたエフェクトがかかる。そして、そのキラキラした場所にいる魔物がもがき苦しむ。どうやら、固定ダメージの入る場所を作ったらしい。聖女の全体回復魔法か……魔物相手だとダメージが入るのか、不思議。
全て討伐を終える頃には、皆疲労を隠せない様子だった。それほど魔物の数は多かったのだ。この村は魔王城からも近いので、仕方がないだろう。俺も近くにいた魔物の血を浴びてしまった。血の匂いが鼻について気持ち悪い。
「ぶっ」
急に俺の頭上から水が落ちてきた。すごい水圧で膝を付いてしまう。降り注いだ水が赤く染まって……ああ、洗い流してくれたのか。聖女が微妙な顔をしながら俺を見下ろしている。
俺が口を開く前に別の女性の声が掛けられた。
「あの、ありがとうございます」
つり目で気の強そうな女性が村の入り口に来ていた。その女性に良く似た中学生ほどの女の子もいたので、恐らく娘だろう。
「お父さんはっ!?お父さんは無事なのっ!?」
娘が食いつくような勢いでこちらに問いかける。
「こらレナ……ごめんなさいね。この子ったら……」
「いや……知らせの者の事だったら生きている」
謝る母親にラインハルトが答える。その答えにホッと息をつく母親。
「そう、ジャン生きてるの。あの馬鹿本当に人の話を聞かないから、心配だったのよ。今日はわざわざ来ていらっしゃってありがとうございます……あ、あら?」
途端に俺を凝視して固まる母親。
「黄金に青の瞳……光る剣……もしかして、ゆ、ゆゆ、ゆ……」
「ええ、勇者様です」
リョウは事もなげに頷いた。ピシッと固まった母親はサッと顔を青くさせた。
「こここ、こんな田舎になんで勇者様がっ!?」
「えっあれが勇者様なの?なんだか情けないよ?」
えっ……俺今そんな感じなの?ガーンとショックを受ける。こんな女の子に言われるのは正直キツい。でも膝をついてびしょ濡れで項垂れているのは確かにカッコいいとは言い難い。
「こ、こら!レナ!」
「むぅーお父さんとアルのほうがカッコいいわよ」
「……は?」
今度はこちらの仲間がピシリと固まった。それを勇者を侮辱した事から固まったと思った母親が慌てる。
「す、すいませんすいません!この子には良く言っておきますので!」
「いえ、それは良いんですが」
ギルさんが手を振って答える。おい、良いのか。まぁいいんだけど。人に許されるのもなんだか癪だ。いや、良いんだけどね?
「アルというのは、もしや茶色の髪の色をしていましたか?」
リョウの言葉に目を丸める母親。
「え?ええ……そうです。剣士で、とても強い子供が7年程前に訪れました」
「アルが……ここに」
ギルが呆然と呟く。
「じゃあ。この結界……っ」
マリアのその言葉に皆がハッと息を飲んだ。どうやら、魔王はこの村に来たことがあるらしい。うん、多分その推測はあっていると思う。同じスキルだしな。こんな厨二な名前のスキルがそうそう転がっているとは思えないし。
こんな村にも被害が及ばないよう結界をして。長い間悪夢に魘されながらも、自我を強く保ち続ける。それはどんなに孤独な戦いだったのだろう。それでもたくさんの人間を救おうと足掻く。
ダメだ、涙腺が緩む。なんでそんな良い人が……。泣くな。泣きたいのは、仲間であった彼らの方だ。
俺達は孤立した村民を連れて王都に渡った。その間何度か魔物に襲われたが、リョウが結界を張っていた為に村民には傷一つ付いていない。
凄いよ!討伐メンバー!動きも安定している。殆ど俺の出番なんてない位だ。
……別に役立たずとか違うし。ちゃんと何匹か倒したし。ちょっと倒すのにも慣れて来たし。人間の慣れって恐ろしい。
柊鏡夜
LV:23
16/勇者/火・水・風・土・光
攻撃力:189
防御力:150
魔法攻撃力:196
魔法防御力:105
魔力:790
『救世主』『神々の祝福』
うん、かなり強くなった。頑張った俺。これなら魔法練習も多少、出来るし。剣を使った訓練も、多少、出来るかも……。多少、多少ね……。でもその前に……魔法……魔術の研究でもすっか?つか、魔法と魔術って何が違うんだ。
『魔法は詠唱を使ったモノで、魔術は紙に陣を描いたものじゃ』
あ、そういう縛りがあったのね。
『もっと良く勉強せい。そなたには経験も知識も両方足りんからのう』
ごもっともです。
勇者、頑張ります。
柊鏡夜
LV:1→23
16/勇者/火・水・風・土・光
攻撃力:23→189
防御力:17→150
魔法攻撃力:24→196
魔法防御力:15→105
魔力:32→790
『救世主』『神々の祝福』
道具箱使用可能。(遠隔攻撃使用可能)
光属性の攻撃魔法不可。