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4話

「その鏡夜の怒りだけで救われたよ。本当に私は恵まれているなぁ。友達はたくさんいるけど、鏡夜は特別。そんな人間が一人いるだけでも世界は変わるんだよ?だから、ずっと鏡夜にはお世話になりっぱなしなんだ」


 クスリと微笑み、俺を慰める。髪は太陽に照らされてもなお、黒を帯びる。俺はただ涙を流し、責めるだけだった。それでも嬉しそうにしている幼馴染を見て、申し訳ない気持ちが心を占める。

 どうして、そんな風に笑えるんだよ。もっと俺を責めろよ。無神経な事、たくさん言っただろ。なのに、嫌な顔すら浮かべない。

 君の隣で安心して笑ってた俺が酷く滑稽に映る。何も理解する事なく、何も知ろうともしなかった俺。勝手に俺の理想を押し付けて、決めつけて。

 それでも。


 ―――君が笑うから。





「……夢」


 ぼうっとしながら周りを見回す。相変わらず自分の部屋ではない事にちょっと違和感を覚える。

 外からは朝日が差し込み、部屋を照らし出す。相変わらず豪華な部屋だ。これが勇者待遇という奴なのだろう。まだ勇者として何もやってないけどな。

 柔らかいベッドから起き上がり、洗面台に向かう。普通に洗面台がある事に驚いた事はまだ記憶に新しい。どうやらこの技術力はどっかの国が独占しているらしく、かなり高級品なのだとか。


「どんな夢を見とったのじゃ?酷い顔をしておる」


 優雅にモーニングティーを飲んでるイケメンが聞いてくる。

 ……うん、それはどういう状況だ。剣って飲み物飲めるのか。エイリスさんは、音もなくティーカップを机に置いて、前に流れていた長い髪をさらりと後ろへと流す。それがなんとも色っぽいのなんの……だが男だ。

 顔を洗ったので、目が若干冷めてきた。朝からなんともキラキラしい金髪イケメンである。剣は睡眠をとらないらしいので、何かしらやっていたのだろう。ただ、移動は出来ないので俺が寝る前に本を剣の隣に置いていたのだ。間違ってもティーカップとかは置いてない。


「うーん、夢……酷い顔してますかね?」

「ああ、とてもな。それとも、元々かえ?」

「そいつぁひでぇや」


 朝から辛辣ですねエイリスさん。まぁ良いんですけどね。俺は苦笑しながら頬を掻く。


「どちらかというと幸せな夢でしたよ……エイリスさんは俺の夢を見られないんですか」

「まぁのう。夢までは見れぬ」


 へぇ、そうなのか。もう全部ダダ漏れなのかと。人型のエイリスさんだと思考が読めないって言うし、所々読めなくなってる事もあったりしてな。まぁ、基準が良く分からんけど。


「所でその紅茶はなんですか」

「おお、これか?使用人が淹れてくれたゆえ」


 ほほお、勇者睡眠中に勝手に入ってやったんですねー。まぁ、そういうもんなのかもな。というか、エイリスさんが堂々とし過ぎててどちらが勇者なのやら分からないって人もいそうだな。……虚しい。



 ボサボサの髪を整えて服に着替える。今日は何しようか、また魔法の練習でもするか?でもなー、あんまり何も出来ないしな。


『まぁ、基礎知識でも深めれば良いのではないか?まだまだこの世界の事を知らんじゃろうし』


 ん、まぁそうしましょうか。戦ってもレベルは上がんないわ、魔法は中級使っただけで枯渇しちゃうからなぁ。とりあえず、図書館に行くか。もうちょっと魔王の

事とか調べたいし。

 チラッと空を見ると、必ずあの不吉な雲が見える。うーん、あそこに突っ込むのか……。


『光移動は練習せぬのか?』


 むりむりむり。怖いよ光移動。失敗したらどうすんの。もし使うとしたら光属性攻撃が使えるようになってから考えるわ、うん。


『根性なしじゃのう』


 ひでぇ。エイリスさんひでぇ。でも仕方ないだろ、両足切断とか聞いたらできる訳ないだろう。

 例えば故障中のどこ○もドアを想像して欲しい。それに潜って予想外の場所に放り出されるだけならまだしも、上半身と下半身がお別れするとしたら怖いだろう?


『良く分からんのう』


 ……うん、ごめん。この説明は絶対間違ってるって俺も思った。

 エイリスさんに道案内されながら廊下を進んでいくと、前から緑の騎士が歩いてくる。所々服が破けており、汚れている。赤黒い染みが見える事から、戦闘を行って来たというのがすぐに分かった。

 緑の騎士のステータスの名前を見て思い出す。紫紺の騎士から助けてくれたライアって人だ。

 ライアもこちらの存在に気付いたのか、ヒラヒラと手を振って笑ってきた。どこか痛むような素振りも見せていないので、あれは返り血なのだろうか。


「やっほー弱小勇者君」


 爽やかに発せられた言葉はとても胸に刺さるもので。落ち込まざるをえない訳で。

 俺が大ダメージを受けているのをみたライアが楽しそうに笑っている。


「ははは。いや、シャオが相当ご立腹で大変だったんだぜ?」


 ああ……あの人のつめたーい視線は今でも覚えてるよ。というか、無言の圧力じゃなくて本当に物理的に苦しいから困る。なんだよあのスキル。超怖い。


「それは良いとして……訓練にもならんほど弱いってどうかと思うぞ?」


 平気で俺の傷を抉るライア。なんだろう、まだシャオと話してる方が良い気がしてきた。シャオは物理、ライアは精神だな。なるほど。というか、この人の全く悪気がなさそうな所が嫌だ。


「うーん……言っちゃ悪いが、魔王って相当強いぞ?王城の騎士が束になっても……いや、もしかすると国中の男が掛かっても返り討ちに合うだろうさ」

「え」


 ……マジで?なにその情報。どこ情報なの?

 俺の驚いた顔を見て苦笑するライア。


「なんだよ?まだ説明されてないのか……まーその弱さじゃどうしようもねぇけどな」


 その正直さは心のクルものがあるね。殴りたくなるや。まぁ、絶対返り討ちにあうだろうね。いいよいいよ、どうせ俺レベル1だし。


「知ってっか?……魔王がここで騎士の訓練を付けてたって話」


 懐かしむように遠くに浮かぶ黒い雲を見つめるライア。

 魔王が闇属性の毒にやられる前は良い人で、勇者パーティーの仲間だったっていうのは教えられていたが……ここで訓練を付けてたのか。


「アルはなぁ……必死に騎士に訓練つけてたんだ。そんときゃ俺もなんでそこまでって思ってたんだがなぁ……自分が魔王だと知っていたからあいつはあれだけ必死に訓練させていたんだと、今なら分かる。あいつはどこまでもお人好しだったからな……俺達が死なない様に、ってさ。心から願ってたんだ」


 悲しむように、悔やむように語る。

 魔王アル……闇墜ちする前の人柄。

 ズキリと胸が痛む。


「あんたさ、知らないんだろうけど。あんたが殺すのは、どこまでもお人好しな、自分の事を顧みない、人を助けるのが趣味みたいな奴だ。この城にいる騎士は皆、アルの事を慕ってた……まぁ、俺はあんまり好きじゃあなかったけどさ……理解できなかったんだよ、あいつの生き様っつうか……他人が生きてさえいりゃそれで満足してるみたいな事がな。自己犠牲の精神っていうの?俺はあいつのそう言う所が本当に……」


 ドキドキと心臓が速まって、少し変な汗をかいてきた。ちょっと……そこまで良い人なんて聞いてないですよ。どういうことですか。あ、そういやリョウが英雄とかなんとかって言ってたっけ?マジか。そういう人か。

 ライアはまるで苦虫を噛み潰したような顔になっている。


「好きじゃなかったけど……俺は確かに今、あいつに生かされている」


 訓練をして身に着けた技術で魔物と楽に戦えるようになった。体力もついて長く戦えるようになった。傷を受ける回数も減った。それは魔王が必死になって騎士に叩き込んだおかげで。生きて欲しいと願った魔王のおかげで。


「たぶん魔王討伐しても、この王城の人間は誰もお前を祝福しねぇ」


 その鋭い視線に凍り付く。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。指すら何も動かせない。ただ、汗だけは背中をつたう。

 シャオが秘めていたどうしようもない苛立ちを、ライアも持っている。……いや、違う。たぶん、この城の人全員なんじゃないだろうか。人の為に尽力し、人の為に生きた魔王。好きではないというライアですらこれだけの苛立ちを発露させているのだ。

 勇者がこれだけ歓迎されないって、中々ないんじゃないですかね?

 えーなにこの状況。


「……勇者の気力を削ぐな」


 男らしい、色っぽい声がかけられる。

 そこに現れたのは褐色の肌、尖がった特徴ある耳、スッとした涼やかな瞳、そして腰まで長く髪を伸ばしたダークエルフだった。


ラインハルト・ルクセン・ルード

Lv:79

125/剣士/炎剣/土

攻撃力:567

防御力:490

魔法攻撃力:23

魔法防御力:560

魔力:120

『剣と共に』


 この人は確か、勇者パーティー参加で召喚の時にいた人だよな。勇者を断ったら斬りかかって来たかもしれない人。目つきが鋭いので、本当にやりそうで怖い。

 この人のスキルは『剣と共に』か……良く分からんスキルだな。たぶん剣が上手くなるとかそういうものの類だろう。剣士って書いてるしな。炎剣っていうのも単純に考えて炎の剣を使うんだろう。


『炎剣じゃと……?馬鹿な、しかし……』


 エイリスさん、なんか知っているんですか?


『いや……なんでもない』


 ちょお、気になるんですが。……無視ですか、そうですか。まあいいや、でも炎剣って恰好良い響きだな……なんでそういう呆れた感情を流し込んでくるかな?ねぇ、何故?無視なの?


「おーまさに忠犬!はは、ラインハルトに斬られたくはないんで、そろそろ行かせて貰うわ!じゃあな~」


 先程の剣呑な雰囲気はどこへやら。出会った時と同じような気軽さでヒラヒラと手を振って去っていく。

 残されたのは寡黙そうなダークエルフと俺。まぁ、エイリスさんもいるけど、剣だからね。

 ラインハルトは2通の封筒を黙って差し出してきた。急に前に出されて戸惑ったが、おずおずと受け取る。味気ない白い封筒。思ったけど、この世界ってかなり発展してるよな。紙とか、日本のモノと変わらないように見える。


「読んでおけ。魔王様から直々の手紙だ」

「うえっ!?」

『ほう……』


 危うく手紙を取り落しそうになってしまった。び、ビビった。噂の人からの手紙とは……あ、なんか胃がキリキリしてきたよ不思議。恨むとか書かれてたらどうしよう。まぁ、さっきのライアの話からして、そんな人間じゃないとは分かっているけれど。分かっているから、余計に胃が痛い。


「片方は魔王様の能力について記されてある。良く読んでおけ」


 ラインハルトはそれだけ言って踵を返してく。振り返った時に綺麗な髪がふわりと揺れていく。……なんというか、この城イケメン多すぎない?ありとあらゆるイケメンが取り揃えられているような……え、なんで?ちょっと待ってエイリスさん。俺なんか気に障る事言いましたっけ?

 エイリスさんの殺意を受け取りながら、手紙をしげしげと眺めてみる。片方は開けた後があって、「能力の記述」と書いてある。そして片方は未開封で、「勇者宛て」と書いてあった。

 勇者宛て、ねぇ……魔王が勇者へ手紙なんて、果たし状とか、姫をさらったとかいう脅迫状みたいなもんしか思い浮かばないけど。

 ……絶対違うんだろうな……。

 この城の人間は祝福しない、か……なんで勇者が嫌われ役なんだろ。魔王倒さないと世界やばいんだろ?……世界と同等の価値がある人間だった、とか。……う、胃が痛い。これってヒールで治るんだろうか?

 ……ん?なんか、さっきの人、魔王様って言ってたな。それと、ライアが忠犬って言ってたような……ま、まぁ、仲間だったんだから色々あるんだろう。深く突っ込んだら胃に穴が開きそう。


『ふむ、魔王についての能力が分かるのは僥倖じゃのう……対策も練れるというもの』


 あ、はい。そうですね。

 俺は部屋へと戻って、手紙を読む事にした。

 まずは開けてある方の「能力の記述」と書いてある手紙から読んでみよう。これからの魔王戦に向けての傾向と対策が練れるだろう。

 しかしその手紙で戦慄が走った。


「魔王の能力について。

 1、火・水・風・土・闇属性が扱える

 2、全属性無詠唱で扱える

 3、闇での移動に注意

 4、魔術を魔法に変換して無詠唱で使用する危険あり

 5、傀儡魔法を扱う危険あり……闇属性なので光属性の結界を施せば回避可能(必須)

 6、身体強化魔法を多重にかけている可能性あり

 7、体に薄い結界を纏っている為、攻撃が非常に入りにくいので注意(なお、光属性だと無効化される模様)

 8、剣術が得意

 9、影分身「オーターイーガー」で上記と同様の分身を作る危険性あり。


 対策として光属性の結界は必須。忘れない様に。

 基本的に体術はSランク冒険者と同程度。

 無詠唱魔法はすべて上級まで扱う事が出来る」


 お、おう……!?なにこのチート能力。全属性無詠唱!?んな馬鹿な。魔法強いのに、剣術得意ってなんだそれ。しかも同能力の影分身を作るだって?待って下さい。これ負け確定ですよ。圧倒的魔王力ですよ。

 人型になって読んでいたエイリスさんが目を見張っている。


「ちなみにですがエイリスさん……今までの魔王もこんな感じだったんですか?」

「い、いや……流石にこれだけの能力を多用する魔王もおらんかったのう……」


 エイリスさんが震え声になっている。俺と同じ絶望を味わったに違いない。何故ならエイリスさんは俺の弱さを知っているからだ。まともに光属性攻撃すら放てない未熟勇者なのだ。それ以前に、魔法も乱発できない、剣技の訓練すらままならないときた。


「そういえばそなたの弱さでは対策も何もないのう……」

「反論のしようがねぇ」


 うん、ですよねー。としか言えねぇよ。多分、コレの半分の能力でも勝てないだろう。

 どーすんだこれ。ちょっと天井を見上げて途方に暮れてみる。これ詰んでるんじゃね?だって考えてもみてくれ、さっきライアが言ってたけど、この国の男たちが束にかかっても返り討ちにあうって。で、俺はというと光属性すらまともに使えない。だめだ。詰んでる。


「とりあえず、そっちの手紙も読んではどうかえ?」

「あー……うん。ソウデスネ」


 エイリスさんが絶望的な魔王の能力から目を逸らす為に別の話題を振ってくる。

 でも絶対胃に穴空くわこれ。

 開いてない手紙を手に取り、なるべく丁寧に開けていく。開いた手紙を、気合を入れて読んでみる。



「親愛なる勇者殿。

 貴方には重責を負わせる事となってしまい、申し訳なく思います。しかし、貴方にしか私が殺せないのだから、仕方がないのです。自殺できるものなら、いくらでもやっている。それが不可能だったからこそ、貴方に託す。

 正直、こういう手紙を送る事で、勇者の負担となりかねないのは重々承知している。だが、私のかつてのパーティーメンバーが迷惑をかけ、きっと苦悩すると思い、手紙を書いている。

 彼らは優しい。私の偽善でさえ、素直に受けとる優しいもの達だ。彼らが苦悩するのをただ黙っている事しかできない私の無力さをいくら呪った事か。

 彼らが慕ってくれた私はもう既に死んでいる。勇者は何の気負いもなく殺してくれるだけで良い。彼らに何を言われようと、私は貴方に感謝する事でしょう。優しい彼らを殺さなくて済むのですから。

 彼らの言葉に惑わされる必要性は皆無です。魔王の能力に関しては別紙にラインハルトに託してる。もう既に読んでいるかもしれませんが、魔王戦には勇者の力が必須です。宜しく頼みます。

 世界の命運は、貴方に託します。どうかご無事で。


 追記 ああ、勿論本当に嫌でしたら、やらなくても良いです。帰還魔術はないのですが……勇者なら、作る事も不可能ではありません。生憎、私は魔術関連は詳しくないので知りませんが、作ってみる価値はあります。

 貴方はこの世界とは関係ない。おとぎ話のような話と断じて帰って頂いて構わない。きっとその方が、貴方にとって最も良い選択となるでしょう。―――魔王」


 俺はまた天井を見上げて途方に暮れてみる。……良い人だ、この人……。辛い。自殺も考えたのかこの人、でもそうか……魔王には確か『不死性』があったんだったな。

 それは勇者にしか止めをさせない呪い。

 仲間を殺したくないから死にたいのに、死ねない。生きて欲しいから、訓練をつけて。仲間だから大切で、後に残された者を想う。

 魔王はこの世界では殺されて当然なのに。破壊を繰り返す悪であるのに。この手紙の人は確実に「善人」で。それはまるで仏のように懐が広くて、暖かい人なんだろう。

 ―――はは、なんだこれ?

 やりたくないなら帰ってもいいとさえ書いてしまう。自分が仲間を殺す事になるかもしれないってのに、それでも勇者の気持ちも汲んでくれる。これだけ良い人なんだ。本当は止めて欲しくて仕方がないだろうに。

 魔王が勇者に殺されたら。

 世界中の殆どの人間が歓喜し、幸福になれる。

 でも、この人を想う人達は?残された人は?

 この人を知っている人は、両手を上げて喜べる?

 ましてや、勇者パーティーは仲間だったはずだ。

 彼らは仲間を手に掛けて、幸せになれる?

 ―――否だ。

 絶対に幸せになんてなれない。

 世界を救う者が最も報われない。

 なんて酷い話だ。

 俺はこの人を殺さなきゃいけないのか……。最高の嫌われ者になるだろうな。


 ―――私の偽善―――


 その言葉がズキリと胸を刺す。どこまでも自分を追い詰めるその姿勢。

 誰よりも人を想うのに、自分だけは幸福な所へ手を伸ばさない。

 誰よりも不幸な人間を助けるのに、偽善だと笑う。

 誰よりも過酷な状況なのに、幸せだと笑う。

 はたして俺が今考えているのは誰なのだろう。この手紙の主の気遣いが、運命を受け入れる覚悟が、彼女に似ていたせいか。

 ああ、でも。

 どれだけ辛いものでもきっと君なら、やるんだろう。世界の為だと笑ってやり遂げるんだろう。「人殺し」も、その罪深さも理解した上で、苦しみも悲しみもその中に閉じ込めて綺麗に笑うんだろう。

 どれだけこの人が善人でも、世界の為と笑って立ち向かうのだろう。俺はそこまで強くなれるだろうか。

 ……いや、ならなくちゃいけないのか。

 勇者として呼び出され、勇者として世界の命運を託された。それはこの人の望みでもある。とてもやり辛いことこの上ない。だが、俺は剣を抜いてしまった。それに、やめてもいいなんて言う人の頼み事を断るなんて選択肢は俺にはない。

 ……ああ、重い話だな……。

 俺は溜息をはいた。それはもう今までついた事もないくらい深い溜息だった。

勇者ステータス


ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』


道具箱使用可能。

光属性の攻撃魔法不可。

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