表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/30

3話

 魔力ってのは3分に1回復しているみたいだ。ぼんやり三角すわりして、魔力回復する。その間不思議そうな顔でリョウに見つめられた。


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:250

『自然治癒』『魔力箱』


 おお、そうだ。この人魔法剣士なんだよね?なんか使ってくれないかな~?風と土は確か……石……じゃなくて、草?だったかな?


『草じゃ……じゃが、両方中級以上使えねばならぬからのう。まぁ、魔王討伐メンバーに選ばれるくらいじゃ。普通に使えるじゃろう』


 おお、凄いな討伐メンバー!でもこの人のレベルってさっきの王子様より低いんだけど大丈夫なのかな?


『そうなのかえ?』


 この人は37なんだよ。シャオリン王子が40台。


『ほう?』


 でも普通に強いステータスだなぁ。攻撃力高いし、『自然治癒』とかスキルが付いてるし。


『ほう?なんとも良さそうな名前じゃのう』


 うん、傷付いたら自然に回復するとかそういう系なんじゃないかな?うらやま。座ってぼんやりしている俺を、不思議そうに見ているリョウさんに話しかける。


「リョウさん」

「え、リョウさんだなんてやめてください。リョウで構いません」


「じゃあリョウ。魔法見せて貰えませんか?」

「いいですよ」


 リョウはすぐに快諾してくれた。可愛い笑顔です。


「結界「魔力」」


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:200

『自然治癒』『魔力箱』


 おお、今の魔法だけで50ほどごっそり持っていかれたぞ。大丈夫なのだろうか?広範囲に魔力結界の膜が張っている。結構な広さがあるように見える。


「上級を見せようと思いますので、被害が出ないよう結界を張りました。では、いきます」


 わくわく。


「カイン・ヴェローテン・ヴェント・パース・イージ・リクエスト・スィステン・ボウ・スタート・リチャージング・レスト・リジー・バァン……」


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:100

『自然治癒』『魔力箱』


 うわぁ……凄く減ったよ。


「……トラブル・グレイト・レイト・ネンブル・エフェニティ・イミュシャル・アンダスタン・リザーブド・イニシティブ・テンペスタ」


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:0

『自然治癒』『魔力箱』


 ガガガっと結界の中で暴風が吹き荒れる。「上級風魔法:全体:圧縮」という文字が浮かび上がっている。あれに当たったら多分死ぬ。広い結界すべてに鋭そうな風が吹き荒れている。

 あんなの逃げ道ないよ……。もうこの人だけでいいんじゃないかな。あ、でも……もう魔力ないじゃん。発動出来ないでしょうこれ。どうすんの?風がやんだ後にリョウに話しかける。


「えっと……まだ魔法使える?」

「え?はい」


 え?だって魔力0だよ?やせ我慢しちゃダメだよ?


「アノイ・ヴェローテン・サニスト・ヴェント・コンパネイト・グラス」


 結界内部で植物が暴れ回る。「『魔力箱』:中級草魔法:全体」という表示が見えた。おっと『魔力箱』か。もしかして魔力が入った箱の事か?


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:0

『自然治癒』『魔力箱』


 何度魔法を放っても表示が変わらない。これはもしかして表示より大きい魔力を持っているのでしょうか……。

 それともあれか?魔力ってのは別に関係なかったりするのか?


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:17

『救世主』『神々の祝福』


 よしよし、試しにさっき20消費した奴でもやってみるか。


「アクウォ・ウォータ」


 ……うん。なんも出ないね。リョウが不思議そうな顔で見つめてくるのが居た堪れない。やっぱり魔法使うのには魔力が必要ですよね、うん。ってことは『魔力箱』は特殊スキルか……。そこにどれだけの魔力が入っているのだろう。表示されてないから分からないな。


「もしかしなくても魔力切れなんですか?」

「……」

「あ、もしかしてここに来る前に魔法とか使いました?」


 イエ……使ってないんですよ、これが。リョウからサッと目を逸らす。


「……あ、戦闘職なのですか?それなら納得です」

「……」


 空を仰ぐ俺。気まずい沈黙が流れる。さっきフルボッコされたばっかりなんっすよね、ハハハ。


「……大丈夫なんですか?」

「……」


 いや、その、レベルが上がったらそれなりに使えるんだよきっと。物凄く不安そうな目で見てくるリョウ。そりゃそうだ。今から魔王討伐するっていうのに、剣も魔法も使えない勇者同伴などあり得ないだろう。

 果たして魔物倒してレベルが上がるかどうかは知らないけど、それにかけるしかないだろう。……移動と荷物持ちなら魔力なしでもいけるよ。

 そういえば、移動と道具箱の練習した方がいいかな。


『そうじゃのう、練習するほど難しい事でもないが、のう……』


 へぇ、そういうもん?さっきの水魔法みたいに詠唱すれば勝手に魔力使って発動する的な感じだろうか。


『そういうもんじゃ、何、案ずる事はない。まずは道具箱を使ってみるがよい』


 そうだなぁ、じゃあエイリスさんでも入れてみるか。


『試しに『伝説の剣』を入れるのもどうかと思うぞ?仮に上手くいかなかったらどうするつもりじゃ』


 え、さっき練習するほど難しいものでもないって言ったじゃないですか。


『普通ならそうなのじゃが……実は、ヒイラギの勇者としての力がどこまで引き出せているモノなのか、分かっておらぬ故……』


 え、なにそれ?


『今朝方いうた、3代目勇者の話は覚えておるかえ?』


 ああ、はい。


『彼の者は、心を閉ざしてしもうて、我の声すら届かなくなる事もあったのじゃ』


 曰く、勇者の力は精神状態から変動するという。その3代目勇者は心を深く閉ざして、言語変換機能が働かなくなったらしい。戦う際に光属性の力を発動出来ないし、エイリスさんが人型になれない状態になった。

 その状態の勇者は極めて危険な状態らしくて、自殺もやりかねないという。

 魔王戦の時だけ元気になったように思ったが、殺した後に実際に自殺している。

 そして、今の俺の状態がちょっとダメな状態らしくて、光属性の攻撃付加がない状態らしい。エイリスさんの声が聞こえているので、そこまで深刻な状況ではないものの、魔王戦では命取りになる可能性もある。

 魔王への攻撃で、最も効果的なのが光属性攻撃だからだ。

 勿論、意識的に光属性付加攻撃をなくすことも可能だが、水魔法すらまともに出来ない俺がそんな器用な事が出来るはずがない。それに、どの勇者も必ずうっかり使ってしまうほど光属性付加は簡単に出来るモノなのだ。


『そなたの魔法を見て驚いた……普通付加される光属性の力が発現しておらんかったからのう……まさかそこまで病んでいようとは』


 や、病んでる……。まじか。俺って病んでるのか。


『ヒイラギ、そなたは魔王の事を気にする必要はないぞ?もう善人とされるその者の心は死んでおるがゆえ』


 うん、まーそう割り切らなくちゃいけないんだろうね。勇者召喚時にいなかった他3名は割りきる事が難しかった人達。

 俺は空を見上げて息を吐く。目の端に黒くて禍々しい雲がチラついており、とても清々しいとは言えない空だ。

 うーん……俺は、その魔王って人を知らないし、見た事ないからさ。俺は見た事ない人まで気に掛ける様な殊勝な人間じゃない。なんだったら、他人には無関心なタイプだ。本当、勇者向きじゃない。


『……だが、そなたは了承したのじゃろう?』


 まぁ、そうなんだけど。殆ど迷うことなく頷いた。だって勇者って楽しそうじゃねぇか。俺の世界にも、そういう話があったりするんだよ。それと違ってこれは現実に起ってる事だけど。

 それで世界が救われて、感謝されるならそれに越した事はない。


『それは……他人に無関心な人間の行動じゃないじゃろう』


 そうかな。そうかもな。でも、断ったら殺されるとか、帰れないからとか、そういうのじゃない。

 ……笑うんだろうなと思っただけなんだ。絶対さ。

 勇者なんてやって世界救えば、あいつは笑ってくれるんだ。「馬鹿だな」と苦笑して、泣きそうになって、でも泣かなくて。ただ俺を励まして……。

 俺は決してこの世界の為に『伝説の剣』を抜いたんじゃない。もっと打算的で、盲目的な何かだ。


『……大切なものでも置いてきたか?』


 気遣うようなエイリスさんの声に乾いた笑いが漏れる。……違うよエイリスさん。大切なものは向こうへ帰っても二度と手に入らないさ。

 病んでる?ああ、病んでるかもな……確かに。目を逸らしてたけど、現実は目の前にある。魔法が使える異世界で、多少気分はマシだし、勇者とか名誉職だから嬉しいし、楽しい。

 男の夢とロマンが詰まってる。でも、この世界には―――。

 ……今朝、エイリスさんが命を絶つつもり、っていうの……あながち間違いではないよ。


『そなた……』


 俺の思考を全て聞いているエイリスさんが息を飲んでいる。その驚きように少し苦笑する。

 ……死んだら、会えるんじゃないかって、思ってたんだ。今思えば馬鹿だなって思うけど。でも召喚前までは本気でそう思ってた。

 まぁ……勇者召喚されてそんな気分も霧散したけど。ここで見捨てて逃げ出したら、死んだ後に顔向けできないと思ったから。だから俺は剣を取った。

 でも、勇者としての力が発揮できてないってのは驚いたよ。まさか精神面も重要だとは。これは相当苦労しそうだ。

 だから、魔王が善人でも俺には関係ないと思うんだ。そりゃあ仲間だった人達にそんな事言えない。大切な人がいなくなるという事がどれだけ辛いか分かってる。だから気が重いし、胃もキリキリしそうだけど。

 根本的な問題は、魔王が善人かどうかじゃない気がする。

 俺の考えを読んだエイリスさんが、ふぅ、と溜息を零す。人型ではないのに、顎に手を当てて首を振るイメージが浮かんだ。まぁ、あながち間違ってないと思う。


『そなたの傷は意外と深そうじゃのう……呑気そうな顔しておるから、あ、いや……考えとる事も割と呑気じゃったから、気付かんかったのう』


 ちょ、何気に失礼なんだけど。否定すんのかと思ったら、より追い打ちを掛けてるし。でもまぁ、考えない様にしてたからな、そう言う事は。あんまり、深く考えちゃ……ダメになりそうだったからなぁ。


『そうじゃのう……あまり深く考えんのが良策じゃろうて。忘れるのが無理だとしても、せめて薄めていく事じゃ……そうでないと、光属性攻撃がつかえんままじゃ』


 うーん、難しい事いうねぇエイリスさん。簡単に薄められたら苦労しないっての。でもアレだな。召喚される前は確実にエイリスさんの声も聞こえない状態だったかもな。

 異世界でちょっとテンション上がっちゃってる状態になってるからな、今の俺は。それでも全部の能力は解放出来ていないってか……うーん、難しいな。


 で、なんの話だったっけ……あ、そうだ。道具箱と移動の練習だ。もしかしたら完全に使えないのかもしれないのか。

 確かにエイリスさんを入れるのは危険かもしれないな。入れれたとして、出せなかったら大変だ。試しに無くなっても大丈夫なモノがいいなぁ、なんて。

 地面に生えている草を抜いてみる。まぁ、まずはこれで試してみようか?


「勇者様?」

「んえ?何ですか?」


 ずっと黙ってたからいないと思ってたけど、まだいたんですか。


「えっと、何をなさるおつもりで?」

「あーと……勇者の特殊技能の道具箱の練習を」

「ああ……では、丁度良いです。道具箱に収めて頂きたいものがありますので。ついてきてください」


 さっとリョウが歩き出したので、慌ててついていく事にした。取りあえず草は持っていこう。これで試してから、大丈夫そうならリョウの言うモノを入れればいい。

 通された部屋には、大量の食材や調味料が置かれていた。お、醤油っぽいのとか味噌っぽいのもある。へー……異世界ってのはなかなか食文化が発展してるんだな。


「腐りやすいですから。道具箱に入れて置いてくれると助かります。道中も楽になるでしょうし」

「そうじゃろうな。にしても……多いのう」


 確かに多い。色んな食材がぎっしりと広い部屋に詰まっている感じだ。みかん、りんご、トマト……よく見知った食材が多い。部屋はかなりの広さを誇っているのに、足の踏み場もないくらい埋め尽くされている様は圧巻である。


「まだ武器類もありますが……生ものでないですから、そちらは後でで構いません」

「ふむ……アンドリィに、ネクセス、エルエテート産か……これはもしや魔王のモノか?」

「……ええ、お察しの通りです」


 険しい顔つきで頷くリョウ。ごめん、俺察してないよ。エイリスさんだけが頷いている。もうこの人が勇者でいいんじゃないかな?


「それでは、僕はこれで……」


 目に涙が浮かんで来ていたリョウが、慌てて部屋から出て行く。涙は見られたくないらしい。……うん、重いな。それにしても、これが魔王の集めた物なのか。


「エイリスさんはなんで魔王のものだって分かったんですか?」

「そうじゃのう……そこのトマトじゃが、ここから馬車で3か月はかかる所が産地じゃ。じゃが、そのトマトはとてもみずみずしいからのう」


「つまり……魔王も勇者と同じ能力持ってるって事で良いですか?」

「良い着眼点じゃ」


 おお、お褒め頂いたぜ。

 どうやら魔王も勇者と同じ特殊スキルを持っているらしい。道具箱と、移動手段が同じ。道具箱は中に入ると時間が止まるからなぁ。ただ、移動手段は勇者と違っていつでも使えるらしい。夜でも昼でも、影がある所からならいつでも出来る。なにそれ、勇者より便利じゃないですか。ずるくないですか?


「故に、闇移動による特攻はかなり厄介じゃ。どの勇者もアレには苦労させられておる」


 そうか、なるほど。闇に消えて後ろから来るのか。そりゃ確かに厄介だ。攻撃も闇に逃げれば避けられるしな。便利だけど、相手が使うとなったらかなり難しいな。


「そんなの、今までの勇者はどうやって倒してたんですか?」

「そうじゃのう、勇者はその闇移動に引っ張られない故、勇者が掴んだりすると逃げられぬ。それは危険も伴うからのう……後は不意を突くしかあるまい。気付かれなければ当たらない訳ではないからのう」


 ぐぬぬ、あまり魔法を乱発しても避けられちゃ意味がないし。かと言って打たないと当たらない。あれ……魔王討伐ってかなり難しいんじゃ?


「掴むって……難易度高いですよね。やった事ある勇者がいるって事ですか?」

「そうじゃのう、4代目勇者『獅子王ししおう』がやっておった。その時に移動できなくなっておったから気付いた事じゃのう」


 獅子王……やべぇ、名前からしても恰好良い。


「自らの姿を変えられる勇者じゃったのう。主に翼を付けておったが、最後の方は獅子になっておった。翼を持った黄金の獅子じゃ……ほれ、そこの本の表紙にもなっておる」

「ほう」


 指さされた本には、雄々しい黄金の獅子が描かれている。おおー金獅子か。カッコいいな。自分の姿変えられるとか。


「それって俺にも出来る?」

「さあの。そなたは魔眼が特徴のようじゃし、難しいのではないかのう?」

「えっ」


 あれ?全員が姿変えられるとかじゃないんだ?


「それぞれ特徴は変わるからのう。例えば2代目じゃが、動物に好かれる特徴を持っておったな」

「へぇ」


 2代目は様々な動物、さらには魔獣と呼ばれるものも使役し、魔王を討伐したらしい。ペガサスや、ドラゴンなんかいたらしい。すげぇ、こっちもかっけぇ。

 初代勇者は特出した攻撃性だったらしい。かなり高い身体能力で、単騎突入して倒したらしい。

やべぇ、もうその人だけで良いんじゃないかな?

 3代目は色んな女性から無条件で好かれる能力。勇者パーティー全員女だったらしい。なにそのハーレム。凄く羨ましい。あれ、でもそういえばエイリスさんが娘って言ってたような。……百合なのかな。

 5代目は特に特徴はなかったらしいのだが、2人の精霊王に気に入られたらしい。


「ん?ところでその精霊王ってなんなんですか?」


 精霊王とはその名前の通り精霊の王とされる者で、風や火と言った属性魔法を最初に作り出した偉人達らしい。元々人間だった彼らは、その過ぎたる力で人外……

つまり精霊王になったのだとか。へぇ、精霊王って元人間なのか。

 そして、精霊王の加護を貰うと、その属性の詠唱を無視できる上に消費魔力が抑えられるらしい。ほう、じゃあ5代目は2属性無詠唱なのか。それって凄いんじゃね?


「凄い事じゃ。普通は1人分の加護でも大したモノなのじゃ」


 ほほう、いいな。無詠唱、素敵な響き。

 6代目勇者は探査能力に優れていたらしく、闇移動すら感知してしまったらしい。何その能力素敵。魔王対策にもってこいだな。

 そして今回の俺……7代目勇者は魔眼。ステータスが見える。相手の事が分かるってのは6代目と同じ感じだと思えば良いのか?探知……は出来てないけど。

 勇者は比較的魔王より有利な能力を持って召喚される場合が多いらしい。それは魔王復活後に召喚されるからだとか、なんとか……後だしで勇者召喚ってずるいね。

 まぁ世界の為だからそんな事言ってられないけど。だから今回の俺の能力も相手にとって不足なしなはず……らしい。でもステータスみえるからってどうなるんだ?


「話が長くなってしもうたのう。さ、道具箱を開くとよい」

「あ、えーと、はい」


 開け、ごま。なんつって。

 馬鹿な事考えてたら、空間に歪みが生じた。え、まさか……。


「お、出来たようじゃのう」


 馬鹿な……これで道具箱が開いた……だと。意味が分からない程ラフな感じで開きましたね。いや、まぁ自業自得ですけれども。


「それ、入れてみるがよい」

「えーと、はい」


 先程抜いた草をその歪みに投げてみる。すると、スゥッと嘘みたいに消えた。おいおい、とんだイリュージョンじゃねぇか。話には聞いていたが、いざ目の当たりにすると驚くよ。本当に異世界に来てるんだな……剣が人になったり、魔法がつかえたり……。


「試しに出してみるがよい」

「ほい」


 いでよ草。……お、出た。ポタリと床へと落ちて行った。


「順調じゃの。後の食材も入れるとよい」

「あ、はい」


 どうやら道具箱は問題ないらしい。俺のSAN値は無事だった。

 うう……この埋め尽くされた食材を入れていくのか。なんという苦労。ポイポイと亜空間に投げ入れていく。ジャガイモ、トマト、あれ、これは料理そのものだな。皿に乗ってる。魔王がここを去ってそれ程時間が経っていないのか……まだ食べられそうだ。ゼリーとか、ケーキもあるんだな。この世界はなかなか発展してるな。

 なんだ?この茶色い粉は……おっと、匂い的にカレー粉だな。凄いな、スパイスの配分とかどうしたんだろう。自力で出来るものなのかな?それか召喚された勇者の内誰かが広めたとか?



「疲れた……」

「軟弱じゃのう」


 全ての作業を終える頃には日が暮れていた。いや、ここまで頑張ったんだから軟弱はないでしょ。暗い空を見ると、どす黒い雲が少し広がっているように見える。なんだか寒気を覚えて震える。……禍々しいな。


「光での移動は明日に持ち越すかのう」

「そうですね……」


 光移動はちょっと怖いかな。いきなり石の中にいる。という状況にならないのだろうか?


「ちなみに勇者の中で光移動に失敗した人っています?」

「……」


 え、沈黙ですか?やだ、怖い。


「いるにはいるがのう……あいつは馬鹿じゃった。移動中の光から降りたらどうなるんだろう?と言っていきなり降りた。目的地には着いたが、両足が切断されておったな」

「なにそれ怖い」


「安心せい、上級の回復魔法で生えてくるぞ」

「なにそれ怖い」


「え?」

「え?」


 いや、こわいこわいこわい。両足が切断されるのも怖いけど、生えてくるって何それ怖い。とんだ異世界だぜ。


「そんな反応をされた事はなかったのう……」


 生えてくるんだ、便利。戦場でいくら内臓ぶちまけても大丈夫なんて素敵。という返答は貰った事があるらしいが、生えてくるんだ怖い、という反応はされた事がないらしい。……他の勇者さんたちどうなってんだ。どういう考えなんだ?

 いや待て、勇者が召喚されるのは地球と決まった訳ではないからな。きっと地球やこの異世界とはさらに違う所から来ているはずだ。


「まぁ、普通に移動すればそんな事もあるまいて、まぁ発動するかはまだ分からんが……」

「さいですか……」


 うん、あまり触れないでおこう。異世界だな、ははは……。

勇者ステータス


ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』


道具箱が使えるようになったよ!やったね!←new!

光属性の攻撃魔法が使えないらしいよ!バットステータスだよ!やったね!←new!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ