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20話

柊の視点です。

 何度寝て起きたのだろう。何もやる気が起きない。のそのそと起きて外を見やる。遠くの森は黒い。あれが魔の森である。天気は曇天。外が晴れた事など殆どない。

 この黒い雲は魔王復活と共に世界にどんどんと世界に広がっているのだとか。時間が経てば経つほど世界は混乱に包まれる。この空の下では動物が魔に囚われ、人を襲い、食物を荒らす。植物もまた、日の当たる場所でないと上手く育たない。

 それだけならいいのだが、植物が魔物化する事もある。魔物がどこで発生するか分からない。食べ物も作れない。そんな状況で、人が生きていくのは難しい。恐怖に身を染めた人間はやがて人を襲う。強盗、強姦、食人。人が魔物になるのだ。

 魔王が直接手を出さなくても人は簡単に死んでいく。世界は恐怖に包まれ、やがて壊れていく。それが魔王。

 終焉の魔王。俺は薄く嗤った。


 世界なんてどうでもいい。あの黒い雲の先に好きな人が生きている。それだけで救われた気になる。この黒い雲が晴れていないという事は彼女が生きているという事だ。とても嬉しい限りである。


 土は汚され、動物も魔と化し、人は死んでいくけれど、でももうどうでもいい。彼女さえ生きていてくれたら良かった。それで自分が死んでしまっても本望である。

 彼女に嗤って殺されるなら自分も嗤って殺されよう。自殺は出来なかったけれど、この日の為にとっておいたのだと思えると良かったとさえ思える。

 エイリスさんは何も言って来ない。それで良い。床に無造作に投げられた剣は、モノも言わない、人型にもなれない。こうしてみると、本当になんの変哲もないただの剣だ。

 これがゆきちゃんを殺す道具なんてとんでもない。本当は処分してしまいたいが、まぁ勇者が扱わないなら誰も手にする事が出来ないようだし、まぁいいだろう。

 ここでのんびりしていたら、ゆきちゃんが俺を殺しに来てくれるのかな。やっと会えるのかな、嬉しいな。彼女に殺されるのか。

 早くきてくれないかな。ここは、なんだか寒いんだよ。

 会いたかったんだよ、ずっとずっと……死にたかったんだ、ゆきちゃんが死んだと知って。なんで死んじゃったんだよ、なんでなんだよ。ゆきちゃんはもっと幸せにならなきゃいけなかったのに。

 でも、やっぱりゆきちゃんは凄いよね。転生しているなんて、物語の主人公みたいじゃないか。しかも魔王とか。魔王に支配される物語があっても良いんじゃないかな。うん、それでいいよね。

 俺には魔王討伐なんて無理だ。仲間すら手にかけても良いとすら思える程だった。今ならクラウドの気持ちが良く分かった。確かに俺を殺したくもなるだろう。納得だったわ。ただ……殺されるならクラウドよりゆきちゃんの方が良いけど。



 ギィイと扉に開く音が聞こえた。どうせまたロイかリョウだろう。リョウは日本語を覚えて来たみたいで、この世界の言葉が分からなくなった俺に懸命に話しかけて来てうるさい。

 が、入って来た人はいつもと違う人だった。

 俺は、視線を逸らせなかった。その驚くような人物に、目が離せない。


「―――え?」


 黒いサラサラの髪、すっと通った鼻筋、少し鋭さがある強い目線。

 そこに立っていたのは、正真正銘、紛う事なき幼馴染、井上優樹その人だった。


「ゆきちゃん!」


 俺は最愛の人物に飛びつき、抱きしめた。最近筋肉を使っていなかったせいで、フラついたが、しっかりと受け止めてくれた。あの日見たゆきちゃんと同じだった。背も顔も、全て。会いたかった。これは夢なのではないだろうか。

 何度も何度も夢を見たから。

 慌てて頬を引っ張ると、ちゃんと痛む。夢じゃない?じゃあ、今までの方が悪夢だったのだ。ゆきちゃんが急に死ぬなんて間違っている。とても長い悪夢を見ていただけだった。


「鏡夜」


 愛しい声で俺を呼ぶ。ああ、やっぱり。うん。ゆきちゃんは生きていた。間違えてこの世界に召喚とかされただけに違いない。

 抱きしめられて居心地悪そうにしているゆきちゃんを見て、俺はずっと言おうと思っていた言葉を言う。


「ずっと……好きだった」


 ゆきちゃんは、驚いて目を見開いたが、やがて苦笑して首を振った。


「それは、本人に言えよ。遅いんだよ。馬鹿なのか?」


 くく、と喉で笑う。その仕草も、口調もすべてゆきちゃんのモノなのに。「本人」に言えとはどういう意味なのか。

 俺は本当に分からずに、首を傾げる。

 仕方ない子だな、と肩を竦める彼女は、本人そのものだ。


「いいか、よく聞け。「俺」は井上優樹ではない。確かに「私」の記憶、つまるところ井上優樹の記憶を引き継いでいる。けれど、それは写されただけだ。本人は未だに悪夢に喘いでいる」

「……」


 なんの事だか分からない。ゆきちゃんが何を言っているのか分からない。彼女は苦笑しながら俺の胸を押して離れる。その冷たさに震えそうになって、思わず縋りつきそうになる。


「だから「俺」はネーヴェなんだよ。鏡夜の好きな「私」じゃない」

「な、なぁ?さっきから何言っているんだ?」


 思わず聞いてしまう。彼女は心底呆れたような顔をした。そんな顔を見ていたくなくて、俺は早口でまくしたてる。


「ゆきちゃん、帰ろう。日本に帰ろう。そしたら、俺が養うよ。あの家にいる必要なんてないし、なんだったら、結婚してもいい。こんな訳わかんない世界から早く出よう」

「鏡夜……」


 彼女は苦い顔を浮かべている。はぁ、と大きく溜息をついて、俺の肩をを掴む。


「なぁしっかりしろよ。「俺」はお前の望む「私」にはなれない。確かに記憶は持っているしお前の事も親しいと思えるが、決して本人にはなれない。それが「俺」だ。人間にすらなれない魔法の残滓だ」

「違う、ゆきちゃんだろ?そんな、だって」

「しっかりしろよ、この馬鹿!」


 グッと胸倉を掴まれ、睨まれる。彼女の怒った表情は、とても恐ろしい。


「お前は勇者だろう!さっさと魔王を殺してしまえば良い!それが役目だ」


 俺はその言葉に震えた。いやだ……魔王は殺せない。魔王は、ゆきちゃんなんだ。いや、目の前の彼女がゆきちゃんなのか?だとしたら、殺せるのかもしれない。


「ゆきちゃん……」

「……そう思いたいのなら、もう勝手にそう思えよ。そうして彼女が殺されるなら、本望だ」

「俺は、お、れは……」


 思うように声が出ない。考えたくないと思っても、考えてしまう。魔王は井上優樹本人で、この人は、ゆきちゃんが作っただけの魔法?ドキドキと心臓が変な音を立てて、冷や汗が出てくる。

 ……なんだというのだ。だとしたらなんだというのだ。じゃあゆきちゃんは魔王で、殺さないといけないみたいな状態のままだっていうのか?そんなのごめんだ。

 ゆきちゃんが転生してこの世界に生きてるって分かって嬉しいんだ。ゆきちゃんが、目の前のゆきちゃんが本物じゃないのだとしたら、俺は魔王を殺せない。

 でももしかしたら、魔王も目の前のゆきちゃんも両方本物なのかもしれない。

 だとしたら、魔王を殺すのも危険な事だ。何が本当か良く分からない。ゆきちゃんは目の前にいるじゃないか。でも、じゃあギルの言っていたカレーを作った魔王はなんなのだろう。

 どっちでも良いか。どちらも殺さなければいいんだから。どちらも生かしておけば、本物が消える事はない。ただここで待っていれば殺しに来てくれるだろう。

 俺は乾いた笑いを漏らした。


「ゆきちゃんを、魔王を殺すぐらいなら、俺が死ぬ……」

「……っ!」


 俺のセリフを聞いて、彼女が目を見開く。

 そして、世界が回った。

 気が付いたら、天井を眺めていて、頬がズキズキする。どうやら、殴られたみたいだった。

 愛しい幼馴染が、苦い顔を浮かべて俺を見下ろす。サラリと零れる艶やかな黒髪、とても整った顔立ちのイケメン。どう見てもゆきちゃんだ。

 ―――あれ、でも……ゆきちゃんってこんな風に泣けたっけ。目の前にいるゆきちゃんが、痛みを抱えた顔を浮かべて、泣いていた。彼女は誰かに涙を見せた事があったっけ? 

 彼女はどんなに辛くても泣きそうになっても、笑みを作る人なんじゃなかったっけ。目の前の彼女が、重ならない。記憶の中にいる彼女と、重ならない。


「鏡夜が死ぬって?……ふざけんなよ。ふざけるのも大概にしろ」


 胸倉を掴まれて上半身を持ち上げられる。凄い力だ。

 その勢いのまま、頭突きをかまされる。

 ガツンという良い音が鳴って、目の前がチカチカする。


「あ……?」


 そこには、黒いドレスを着た少女。そのドレスに似合わない無骨な剣を持っている。周りにはギルやリョウがバラバラにされていた。どの顔も、絶望に打ちひしがれた状態でそこに転がっている。地面は赤黒い血で染まっており、少女は嗤う。楽しそうにくるくると回っている。

 生きているものは、何もいない。ただ、彼女が立っているだけ。


 ああ、素敵、なんて綺麗な光景なの。


 うっとりと恍惚の表情を浮かべた少女は、魔王。黒い森で、彼女だけが嬉しそうに踊っている。ゾッとする光景なはずなのに、彼女の心には満足感さえ流れる。

 しかし彼女は急にハッとして剣を落とす。


 あ……あ……?なんで……?嘘だろ?


 血に染まった自分の手を見て、震える。覚束ない足取りで死体へと向かう。しゃがみ込めば、ドレスに血が染み込む。黒いドレスに血が染み込み、黒に魅力が増しているように感じる。だが、少女はそんなものに構っている余裕などない。

 かつて仲間だった者の首を手に取る。


 嘘だ、ああ、ああ……いや、いやぁあああああっ!!


 血に濡れたまま絶叫する。仲間の首を抱きしめて叫ぶ。

 大切に想っていた仲間達を、殺してしまった。その暗い森にはもう、生きている人間など存在しない。すべて自分が殺した。楽しそうに嗤いながら。血が噴き出す毎に、とても愛おしい気分になれた。愛しいなんて感情、感じたくなかったのに。嫌悪なんて浮かばなかった、それが嫌なのに。

 そうだ、殺してしまったんだ。

 殺してしまったんだ。

 生きていて欲しかったのに、私がこの手で殺してしまった。

 もっとも生きていて欲しいと願っていたのに。


 嫌だ、嫌だ嫌だ!違う!殺してない!ああ、ああああああああああ!


 そこにあるのは絶望。

 血の海に染まった場所で1人、打ちひしがれる。


 誰か私を、殺してくれ―――!


 それは切望。

 心からの強い願い。

 井上優樹……魔王の、最期の願い。



「この何もない世界に、「私」を置き去りにするつもりか!鏡夜ッ!!」


 その声にハッとして彼を見る。

 ボロボロと涙を流し、歯を食いしばっている。

 そうか、今の映像は、魔王の、夢―――。

 魔王は眠る度にあの絶望を味わっている。その世界はとても孤独で、ただ破壊だけが存在する。息をするものはすべて魔王の手によって葬られる。かつての仲間も、兄も、自分が助けた人々まで残らず。

 その深い絶望に、胸が締め付けられる。


「こんなところでウジウジしてんじゃねぇよ。今でも彼女は苦しんでる。彼女がどんな人間か、お前が良く分かってるはずじゃないのか!?なのに自分が殺されるだ?ふっざけんなよ!そんなの彼女が望むわけがない。お前が彼女を殺して絶望に打ちひしがれようと、どうでも良い。お前にどんな苦痛が訪れようが俺には関係ない。だがな、あの絶望を、あの悪夢を、あの世界を、真実にだけはしないでくれよ!」


 ―――嗚呼。

 彼女は、止まる事はなく、死んでいった。小さな女の子を救う為に死んでいった。死に様は如何にもヒーローって感じで。助けられた女の子からも感謝されて。

 生まれ変わったとしてもそのスタンスを貫き通して。人殺しなんて、彼女にとっては辛い事なのに、他の人の為にやり切った。どれだけ苦しんだのか分からない。挙句にその娘に恨まれているのに、彼女はそれでいいと悪役を買って出る。

 彼女はそういう人間なのだ。


「なぁ、だから早く―――殺してやってくれよ」


 殺して楽にしてくれ。彼はそう小さく掠れるような声で言った。その声はとても愛おしく、慣れ親しんだ彼女の声そのものなのに。

 夢の中の彼女こそが本物なのだと、分かってしまう。大切な仲間の死を嘆き、悲しみ、苦しみ、慟哭する。殺したくないのだと叫んだ、あの映像の中の彼女が。

 そりゃあそうだろう。彼女はいつだってそうなのだ。自分の事はおざなりで、他人ばかり気に掛ける。死ぬ瞬間だって、相手の心配をする。見ず知らずの勇者の気持ちすら汲んでくれる。けれど、彼女の本音は何時だって嘘と笑顔で隠される。

 彼は、彼女の顔で、声で、泣きながら笑った。


「早く助けに行こうぜ―――鏡夜」

『―――早く殺してよ、鏡夜』


 映像の中の彼女が、暗い瞳で笑った。

 もうこんな夢は嫌なのだと。

 仲間に生きていって欲しいのだと。

 何が悲しくて、救った命を奪わねばならないのかと。

 心から願う。

 死が彼女にとって、最高の救いになるのだと。

 ―――理解出来てしまった。


「あ、あ…………ぅ」


 彼の顔がぼやけて何も見えなくなる。ボタボタと暖かい滴が頬を伝っているのが分かる。

 殺さないと、彼女が苦しむのが分かる。分かってしまう。でも、嫌なんだ、どうしようもなく、嫌なんだ。助けたいって思っていたんだ。次は絶対に間違えないって、召喚される前に思っていたんだ。

 なんで、何が悲しくて、俺がゆきちゃんを殺さないといけないんだ。


「嫌だ………嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!ああっ……!うぁあああっ!」


 彼の手が緩み、俺は床に蹲る。何も考えたくない。何もやりたくない。

 怖い、怖い……!あの夢の中の仲間のように、光を失った目をされるのが。ゆきちゃんを殺して、この世界が救われて、どうなるっていうんだ。

 でも、少なくともゆきちゃんは死ねば喜ぶ。馬鹿みたいだと思うけれど、彼女は心から喜んで礼を言ってきそうだった。

 現に、手紙で魔王対策なんて書いて。自殺できるものなら、やっているって書いてて。ゆきちゃんの苦悩が、その手紙からでも伝わってくる。殺して欲しいと願っている。

 嗚咽を交えつつ、涙を吐き出す。その間、彼が優しく背中を撫でてくれる。そう、かつて彼女が俺にしてくれたような手つきで、優しく、少しだけ戸惑い気味に。

 彼はネーヴェ。流れ込んで来た記憶の中に、彼もいた。彼女が最期に託した、雪の欠片。勇者の支えとなるようにと、願って。

 どうにも出来ない苛立ちが、俺をしめる。


 なんなんだよ、この世界って。

 マジでふざけんなよ。

 助けたいって間違いたくないって願ったのに。

 彼女を殺す事が最も正しいだなんて、どんな世界なんだよ。

 何もかも間違っている。

 全部間違っている!

 やりたくない!やりたくないやりたくないやりたくない!ああっ!あぁああああああっ!


 暫らくは泣き叫んだ。どうしようもない世界に嘆いた。どうしてなんだ。どうして俺が勇者なんだ。生きて欲しい、笑って欲しい、幸せになって欲しい。そう願っていたのに。

 涙が、声がかれるまで泣いた。

 疲れ果てて、室内は鼻水をすする音だけが響くようになった。


「……知ってるか?……この世界には、輪廻転生って奴がある」


 静かになった室内でポツリ、そう零した。

 顔を上げると、ひどい泣き顔を晒したネーヴェの姿。


「魔王として囚われたら、もう二度と彼女は帰ってこないだろう。でも殺せば、次の転生がある」


 ゆきちゃんは確かに死んだ。だがどうだろう、この世界にゆきちゃんは生まれ変わっていた。その記憶を引き継いで、まったく違う異世界で生きていた。沢山の人を救い、時には汚名も被った。実に彼女らしい生き様だった。

 つまり彼が言いたいのは、そう言う事だろう。

 はっ……と乾いた笑いが漏れた。


「また……次で会えるか……?」


 と、問う。

 可能性なんて、ほぼ0に等しいだろう。今回見つけられたのも、奇跡なのだから。次に転生したとして、どんな世界で、どんな状況でなんて分からない。それに、記憶を引き継いでいるかも分からない。俺が生きている間に見つけられるかも分からない。

 それでも、その僅かな希望に縋りたくて仕方ない。

 曲げる事の出来ないこの世界の運命を無理矢理納得するために、理由が欲しくて仕方がない。彼女を殺す理由が欲しい。あと少しの理由が。


「ああ……会えるさ」


 なんの根拠もない肯定。

 ボロボロに泣いたネーヴェも、その可能性の薄さを知っている。けれど、笑って頷いたのだ。

 なら、信じよう。

 例え可能性がなくても、完全に0ではないのだ。魂がある限り、次がある。そう思わなければ、やっていられない。何もかも、やっていられない。


「ぅ……く……」


 涙を拭いて、立ち上がる。少しふらついたが、なんとか立つ事が出来た。

 窓の外は大きな黒い雲で薄暗い。この森の、もっと奥で彼女は足掻いている。もがいている、苦しんでいる。

 俺の苦しみなんかよりも、余程の苦痛を与えられている。


『ヒイラギ……』


 エイリスさんを手に取ると、声が聞こえて来た。ここの所、まったく聞こえていなかったので、随分と懐かしい。だが俺はエイリスさんの声には答えず、剣を真っ直ぐ黒い雲に向けた。


「……行くぞ、魔王を、討伐しに」


 これは俺の誓い。

 どんなに苦しかろうが、やりたくなかろうが、俺はやらなくちゃならない。本当は、ずっと寝たままで死にたいけれど。そんなのはダメだ。きっと、ずっと彼女に恨まれる。

 彼女に嫌われるくらいなら、彼女の望み通り、恰好良く決めて殺してあげよう。


 ……なぁ、本当はさ。

 死ぬほど嫌なんだよ。

 ゆきちゃんと馬鹿やったりして、遊んで。

 それで、腹抱えて笑ってさ。

 君に幸せだって、言って欲しかったんだ。

 来世なんかじゃなくて、今すぐに君を幸せにしたかったんだよ。

 今すぐ好きだと告白して、抱きしめたかった。

 生きて、笑ってて欲しかった。

 俺の名を呼んで欲しかった。

 俺が望んだのは、来世なんかじゃない。


 ―――来世なんかじゃないんだよ!


 ああ、世界はこんなに薄暗くて、重たくて、救いようがない。

 異世界の勇者でしか救えない世界の為に、彼女は命を落とす。

 それが良いんだと彼女が微笑んでいる気がした。


 ……好きです。


 貴方が好きです。



 だから必ずこの手で―――殺してみせる。

ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:42

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:354

防御力:267

魔法攻撃力:387

魔法防御力:179

速さ:69

技巧:102

魔力:1905

『救世主』『神々の祝福』


道具箱使用可能。(遠隔攻撃使用可能)

念写スキル使用可能。

光属性の攻撃魔法使用可能(*ただし自PTに被害あり)

回復魔法使用不可。

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