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2話

 ベッドから飛び起きる。悪い夢を見ていた。ドキドキと心臓が変な音を立てて、冷や汗が流れる。えも言われぬ恐怖感が体中を駆け巡る。

 周りを見渡すと、見た事もない部屋、飾り、家具があった。明らかに自分の部屋とは違う部屋に驚く。

 そうだ、そういえば勇者召喚されたんだった。馬鹿みたいだと思うが、実際に目に映る光景は日本とはかけ離れてる。外は薄暗く、明るくなろうとしている。もうすぐ日が昇るだろう。その様子に少しだけ息をはく。


『……ヒイラギ?』


 頭に響いてくる心配そうな声。これはエイリスさん。そういえばエイリスさんは睡眠を取らないのだろうか?


『……睡眠など、生き物がやる事じゃ』


 ……そっか。異世界なんだなぁ、とつくづく思う。非現実的な現実に、召喚されるまで感じていた虚無感が多少マシになった気がする。現実逃避とも呼ぶけどな。

 魔王を倒したら、きっと笑って褒めてくれるだろう。

 ああ、でも、魔王は……勇者パーティーの仲間だったんだよな、つまり、良い人だったんだろう。ショックで寝込む仲間が出てくるくらいに……。


『―――魔王は死を願う』


 頭に歌うような旋律が響く。綺麗なその声は、今まで感じていた不愉快感が消えているような気さえする。


『人は破壊を望み、魔王は死をこいねがう。ならば私は殺人者となりましょう―――ネシアンティーナ』


 えっ、突然何?


『3代目勇者も、善人の魔王を気遣い、苦戦しおった。今の言葉は3代目勇者のネシアンティーナの最期の言葉じゃ。彼女は弱い娘だった。魔王を殺し、自らの命も絶った―――のう、ヒイラギ?そなたも命を絶つつもりなのかえ?』


 その問いかけに、ドキリと心臓が跳ねる。死ぬつもり?いや、そんな気はない。でもどうだろう、ここに来る前は、そんな風に思っていたかもしれない。「殺人者」となった俺は、生き続けられるだろうか?……3代目勇者の気持ちが、なんとなく分かる。魔王討伐という義務を果たした勇者は、その世界でどうなるのだろう。


『気を強く持て、ヒイラギ。もうあんな思いはごめんじゃ』


 ああ、気遣いありがとう、エイリスさん。でも安心して欲しい。俺は、魔王を倒そう。その義務は果たすからさ。……その後は、まぁ、分かんないけどさ。




 朝起きて、メイドさんに世話を焼いて貰った。凄いな、リアルメイドだわ。ふりふりのメイド服が可愛いわ。つか、この世界にもこういう服ってあるんだな。

 朝食は食パンに目玉焼きに、サラダだった。おお、かなりまともな食事だな。これ、バターかな?日本にいる時よりもしっかりした朝食に苦笑が漏れた。異世界の方が俺の生活より健康的なんじゃないの?



 朝食を終えたら、エイリスさんから勇者の特殊スキルについて説明を受けた。

 例えば道具箱。

 これは空間を開いて道具を沢山収納出来る便利スキル。中に入れた物は時間が止まるので、食材を入れて放置しても取り出した時には入れた時の新鮮な状態のまま出てくるらしい。インベントリみたいなもんだな。RPGで良くあるようなスキルだな。今思うとこれって現実にあるとかなり便利だよな。大量の道具を気軽に持てるんだもんな。


「質問です」


 挙手して質問。


「なんじゃヒイラギ」

「道具箱にエイリスさんは入りますか?」


 ずっと剣を持ち歩くのは結構しんどいのである。


「入る事には入るが……勇者として恰好がつかないのう」


 なるほど。じゃあ必要な時以外は入れてしまおうかな。恰好がつかないのがなんだ。エイリスさんに思考がダダ漏れな方が問題だわ。


 次に特殊スキルでかなり便利なのが光を使った移動手段。太陽が昇っている間、自分が一度行ったことある場所に一瞬で移動出来る超便利スキルだ。2ヵ月かかるような道のりでも一度行った事あるなら一瞬だ。しかも仲間と接触していればその人も一緒に移動出来る。なんて便利なんでしょう。太陽が沈むと使えなくなるので、そこだけは注意が必要。

 行った所あるならどこでも……ねぇ?もしかして、日本に帰れちゃう?日帰りで日本に帰れる?


「かと言って、別にヒイラギのいた世界には戻れまい」


 おっと、エイリスさん俺の心読みました?人型取っている時は読めないんじゃなかったんですか。


「分かりやすい顔しておるからのう」


 なんてこった。素で読みとられたとか。ちょっと待て。今のも読みとったのか。俺そんな分かりやすい顔してるかな?


『顔に出てる』


 ふと、幼馴染にそう言われた事を思い出す。可笑しそうに、楽しそうに俺をからかう。そんな幼馴染の顔を……ここに召喚される前の気持ちを思い出して、落ち込む。

 ん……?そういえば、父さんはどうしているだろう?俺がここに来ているって事は日本での俺の扱いってどうなってんの?行方不明?……父さん、先立った不孝をお許しください。帰れないみたいです。

 でも聞いて父さん。俺勇者になったみたいだよ。ちょっと世界救ってくる。

 多分コレを父さんに言ったら病院に連れていかれるだろうな。「遂に厨二病が悪化して……」とか言いつつ目に涙を浮かべるだろう。容易に想像できる。



「外を見ると良い」

「んあ?」


 考え事をしていたので、若干返答が可笑しくなった。綺麗な眉を顰めさせたエイリスさん。す、すみません。

 居住まいを正して改めて外を見る。すると遠くにドス黒い雲が渦巻いている。うわっなんじゃあれ。


「あそこの中心にいるのが魔王じゃ」

「おお……」


 あ~なんか魔王っぽいよ。今からそこに行くんですね、分かります。雲の下は影がさしており、薄暗くなってしまっている。あの下は暗そうだな。


 エイリスさんの説明によると、あの雲はドンドンと広がり、しまいには全ての土地に太陽が隠れてしまうようになるのだとか。そして、その雲の下では魔物が活性化して大変な事態になる。魔物って……なんだか実感わかないなぁ。


「本当ならばすぐにでも行きたい所じゃが……ヒイラギ、そなた戦闘経験はあるかえ?」

「皆無です」


 すみません。すぐには戦えません。戦争のない日本で暮らしてた身としては……戦える事など殆どない!と堂々と宣言出来るレベルだろう。

 ちなみに剣道や喧嘩位なら人並みに出来る。ま、剣道も適当に習ってたから流派とか全く把握してないけどな。異世界に行って勇者になるって言ってくれてたらもうちょっと真剣にやってたんだけど。

 まぁ、そんなの聞いても「なんだ、電波か」と思ってスルーしてたと思うけどな。


 そんな事を考えてたら外がにわかに騒がしくなる。窓の外を見ると、甲冑や盾、剣を携えた人達が慌ただしく外に出て行っている。


「なんだあれ?」

「恐らく、魔物が来たのじゃろう」


 魔物!おお、さっき言ってた活性化って奴なのかな?


「ふむ、せっかくじゃ。ついて行ってみるとよい」

「がってん」


 扉から出て行って、小走りで廊下を進む。道はエイリスさんが教えてくれてくれるので迷う事はない。


「止まりなさい」


 低く、男らしい声が響いて、足を止める。まるで空気を支配しているような圧迫感に緊張する。ピタッと止まってギギギ……とぎこちなく声のした方に首を向ける。

 そこには、壁に背を向けて腕を組んでいるイケメンがいた。紫紺の髪をしており、視線が鋭い。彼の装いも騎士のようだった。ごてごてした装飾はしておらず、動きやすい戦闘向けのモノなのだろう……まぁ、ジャージに比べたらジャージの方が動きやすいだろうけどな。流石にジャージはないだろうな……っていうか王城の騎士がジャージって似合わないか。

 取り合えず、ステータスを確認。


シャオリン・ロウ・M・エンルトラム

Lv:45

25/騎士/グランドグラン第二王子/水

攻撃力:220

防御力:230

魔法攻撃力:22

魔法防御力:56

魔力:540

『王の威厳』


 え、おーじさま!王子様じゃないですか!やだぁ!

 壁から背を離し、俺へと接近する王子様。その威圧感が半端ない。あれ、『王の威厳』スキル使ってやがる!なんてこった!レベル差もあるから勝てる訳がねぇ!

 ガクブルしつつ、王子様の行動を見守る。プレッシャーで動けない。


「ああ、勇者か……俺はシャオ。宜しく」

「ぷはっ……!……ど、どうも?ひ、ヒイラギです」


 俺を勇者と認めた瞬間威圧感が消えうせる。い、息出来なかったぞ。勇者を窒息死させる気なのか。緊張と恐怖でドキドキとする胸を押さえる。

 ドキドキしてるのは恋ではない……え、なんかエイリスさんを不快にさせたみたい。なんかごめんなさい。恋じゃないよ?女の子が好きですよ。

 軽いジョークすら真剣に受け止めてしまうみたいで、剣状態のエイリスさんから悪感情が流れ込んでくる。はっきり、不快ですって言われてるようだ。


「どこに向かっていた」

「あ、なんか外が騒がしかったんで、魔物ならちょっと見学できるかな、と思いまし、て」

「……」


 あ、あれ。なんだか王子様の目線が据わってきた。なんだろう、言葉遣いが間違ってたのかな。

 はぁ、と大きく息を吐いてコメカミをグリグリしている王子様。その行動でも気品が溢れてる不思議。流石王子様。


「見学……などと勇者が言うとは、な……まさか、実践の経験がないとは言うまい?」

「……は、はは」


 や、そのまさかなんですよ。俺が曖昧に笑ってごまかしていると、先程の威圧感が蘇って来た。ちょ、苦しい苦しい!空気が重いよ!リアルに空気が重いよ!


「これがアルさんの希望……か。笑わせる」


 海底のように暗く底冷えした声に震える。抵抗も何も出来ずに、胸倉を捕まれ、睨まれる。その目には、激しい感情が渦巻いている。自分では抑える事が出来ない、そんな目だった。この世の理不尽に怒り狂っている、俺はこの目を知っている。


「おいおいおい!シャオ!何やってんだ!!」


 その声が廊下に響いて威圧感が消えた。ついでに、掴まれていた胸倉も離されて床に尻餅をつく形となった。


「げほ!げほ」


 なんて威圧感だ。ついでにレベル差で力が凄く強かったぞ。魔王討伐の前に死ぬかと思った。

 俺を救ってくれた男は、濃い緑色の髪をした騎士だった。この王子様と同じ恰好をしているって事はそれなりに身分が高いのだろう。ステータスに何か書いてあるかな。


ラーティア・ハリ・D・ヘクマティカル

Lv:54

25/騎士/公爵/火

攻撃力:329

防御力:279

魔法攻撃力:125

魔法防御力:80

魔力:809


 ほう、公爵か。で?公爵ってどれくらい偉いんだっけ?だめだ、調べとくんだった。何やってんだ俺。あれ、この人は鍵括弧付きのスキルないんだな。


『先程からヒイラギは何を言っておるのじゃ?ステータス?スキル?』


 あ……そういやステータスが見えるのエイリスさんに言ってなかったな。

 実は、見た相手の強さや能力、名前が分かるんですよ。


『ほう、魔眼か……それが今代の勇者の能力という訳かのう』


 え、魔眼?何その恰好良い響き。

 あ、あれ?エイリスさんに呆れられてる。なんでなんだ。魔眼とか言ったのエイリスさんじゃん。なんで乗ったら引いてるんだよ。圧倒的手に平返しだ。ひどい。


「ライア……だが、こいつは」

「勇者なんだろ?何が何でもこいつにゃ魔王を倒して貰わなきゃならんだろう。それが、あいつの望みだ。……そうだろ?」

「……」


 2人の騎士から重苦しい空気が落ちる。


「……は……ライアに窘められるとは、屈辱だな」

「お前ひでぇな」


 2人共、泣きそうな顔だった。無理に口を引き攣らせて笑っている……そんな印象を受ける。

 遠くに蠢く黒い雲を見つめ、沈黙する。世界の終わりを意味する黒い雲だ。あの中心にいる人物を倒さないと、世界に平和は訪れない。


「実践の経験がないなら実践すればいい……ついて来い」


 シャオに睨まれ、ビクッと震える。ついて来いって……何させる気だ。


「訓練だ。シャオのはきついから、気を引き締めて行けよ」


 ライアに耳打ちされる。あ、訓練してくれるの?え、でも大丈夫かな。俺、まだレベル1何ですけど。ドキドキしながら紫紺の髪の男を追う事にした。





 相手が機敏に動く。目で追えないスピードで攻撃を受けてしまう。早すぎて分からないので、どうなったか把握すらできない。


「くっ……」


 金属プレートにガンッと相手の棒がぶち当たる。分厚い金属の防具を着ているが、それでも衝撃が中まで届く。息が出来ない程の激痛だった。声も出せずにゴロゴロ地面を転がる。しぬぅ。木の棒でしぬぅ。


「軟弱だな……」


 馬鹿にしたような目で見つめてくる。流し目が色っぽい大人の男といった所か。つか、軟弱って……レベル差考えろよ!俺レベル1だぞ?もうちょっと考えてくれよ。涙目でイケメンを睨み付ける。


「はぁ……ヒール」


 回復「ヒール」という文字が見えて俺の身体がほわっと温かいモノに包まれる。そうしていると痛みがスッと消えていくのが分かった。そしてイケメンが手を差し出してきた。その手を取って起き上がる。

 シャオリンさんから、花のような香りがふわっとした。あらやだ……イケメンは香りも良いのね。……これ、BLのRPGなのかな……。王子様とか書いてあるし、きっと攻略対象者に違いない。


『……』


 あ、いや、冗談なんです。軽蔑しないで下さい。お願いします。エイリスさんから嫌悪感が溢れている。反省しないと。

 つーか、外、冬なんだな……城の中じゃ分からなかったけど、寒くてびっくりしたぞ。暖房器具とかこの世界にもあるのかねぇ。それとも薪とか?

 それにしても……どんなに訓練してもレベルが上がらないなぁ。


『そのレベルというのはなんぞや?』


 あ~うん。戦闘能力って言えばいいのかな?それがどれ程の位置にあるかの目安って感じかな。ちなみに俺が1で、シャオリン王子が45だ。


『それまた随分と差があるのう』


 そうなんだよ。やっぱり魔物倒さないと上がらないモノなのかなぁ。


『魔物のう……』


 やっぱいきなり実践は厳しいんだよなぁ。人間相手の喧嘩とかはしてたけど……魔物はなぁ。


『まずは魔法訓練をした方が良いのかもしれぬな』


 おおー!剣と、魔法か!魔法使いたいです!童貞でまだ16歳なんですが魔法が使えるなんて!シャオさんには戦力外通知を受け、図書館に場所を移動して、魔法のレッスンを受ける事となった。

 エイリスさんは人型になって教えてくれる。俺の弱さにシャオさんは「訓練にすらならない」と嘆いていた。すいません、なにせ低レベルなもんで。


 世界には6つの属性がある。火・水・風・土・光・闇。そして光は勇者のみ。闇は魔王のみしか扱えない。多くの人間が扱えるのが残りの4つ。火・水・風・土だ。そして、この属性を上手く組み合わせる事によって別の魔法を編み出すことが出来る。

 風・水を組み合わせた雷。火・土を組み合わせた石。火・水を組み合わせた氷。風・土を組み合わせた草。風・火を組み合わせた浮遊。あらためて自分のステータスを見る。


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』


 うわ……俺の属性多すぎっ!?これってもしかして全属性チート出来ますか?多くの者は、属性を1つしか持てない。魔術師なれる才能が有るものの多くが2つ。3つはその中でも賢者と呼ばれるようなレベル。4つは伝説の勇者レベル。

 俺、5つですけど……勇者越えっすか?まぁレベルはひよっこですけど。魔法書を開いて眺める。読める……読めるぞっ……!何書いてあるのか分からないのに、読めるっ!あらやだ不思議!読んでいる間ずっと『神々の祝福』という文字がチラついている。これのスキルのおかげなんだろうか。勇者ってのは便利なもんである。

 やっぱカッコ書きの奴は特殊スキルなんだろうな。


 現実離れしすぎているなぁ。先程の痛みは確かに現実だと知らせるのに、ヒールとかで傷はあっという間に治る。頭がどうにかなりそうだぜ。とりあえず、やけくそだ。


「試しに魔法でも放つかえ?」

「あ、やります」


 エイリスさんの提案にすぐに飛びつく。魔法とかむねあつ。流石に図書館では出来ないので外に移動する。

 庭には茶色の髪の獣耳と獣尻尾の青年が佇んでいた。リョウだ。

 俺の登場に気付いたのか、こちらに顔を向ける。


「勇者様……」

「あ、こんにちは」


 2人で会釈をする。この人も大概イケメンだな。ちょっとあどけない感じが残るような、庇護欲をくすぐるような人だ。カッコいいのに可愛いってなんだ。なんかずるい感じの人だな……獣の耳と尻尾が付いているのもあざとい。嬉しい時はやっぱり尻尾振ったりするのだろうか。今は耳も尻尾も元気なくへにゃっとしているけれど。


「どうしてこちらへ?」

「えっと、魔法の訓練をば」

「そうでしたか、お邪魔してしまって申し訳ありません。どうぞ、お好きになさってください」

「お、おう」


『取りあえず魔法を使ってみれば良い』


 あ、うん。ですよね。魔法使わないとお話になりませんよね。取りあえず一番簡単な魔法から使ってみるか。安全そうな水から。


「ウォータ」


 ばしゃっと水球が出来る。うおお!すげぇ!マジででた!


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:27

『救世主』『神々の祝福』


 おっ……魔力減った?30台だったよな?うわ、しっかり見ておいたら良かったかも。水球がどこにも向かうことなくべしょっと地面に落ちる。

 リョウさんに残念なモノを見るような目で見つめられた。あ……(察し)。いやだって魔法なんて使った事なかったし。そもそも魔法なんてあるような世界でもないし。そういうの察してよ。というか今までの勇者はどうしていたんだか。


『今までの勇者はいきなり戦闘が行えたのう』


 まじで。うわぁ……俺役立たずみたいじゃん……。多分他の勇者は初期ステータスのレベルが高かったんだなぁ……。


「アクウォ・ウォータ」


 ばしゃっと先ほどより3回りほど大きい水球が出てきた。先程の上位版の魔法だ。


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:7

『救世主』『神々の祝福』


 えっ20減りましたけど!そして水球は虚しく地面に落ちた。結構大きな水の塊だった為に辺りが水浸しになった。

 ズボンの裾がびしゃびしゃになった。……虚しい。残り魔力7て……もう魔法訓練出来ない感じですか?え、俺本当に勇者なの?さっきの中級なんだけど。中級でこんなにギリギリって事は上級とか無理じゃん。


「……なにやっているんですか?」

「……魔法訓練」

「……そうでしたか」


 リョウさんも水球の巻き添えを食らって裾がびしゃびしゃになっている。本当に申し訳ない事をしました。なんとも言えない空気に満たされる。


『ほう、もう魔力が尽きたのかえ?』


 グサッと言葉の刃が突き刺さる。エイリスさん容赦ないっすね。


「魔法の維持時間が短すぎますね。状態を維持する事をまずは行ってください」

「はい……」


 維持時間か……それはどうすればいいのかな?ぐわーっとなったらしゅわーっとするとか説明されても分からんけど。


『維持する為には魔力を追加で注げば良いのじゃ』


 なるほどなるほど。って、それってどうやるの?


『……そこからなのかえ?』


 す、すいません。


『そうはいってものう……皆自然に行っておる事ゆえ……』


 そういうもんですか。


『そういうもんじゃのう』


 フィーリングでなんとかしなければならないのか……。難しいなぁ。


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:8

『救世主』『神々の祝福』


 お、ちょっと回復してる。初級くらいなら発動するかな?


「ウォータ」


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:3

『救世主』『神々の祝福』


 ばしゃっと小さい水球が出来上がる。維持しろ~維持しろ~と念力を飛ばす。


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:1

『救世主』『神々の祝福』


 あ、魔力がまた減ったわ。これが維持の為に必要な魔力ってところか?確かにまだ水球が浮いている。さっきより断然滞空時間が長い事が分かる。ふよふよ漂う水球をつつく。ぷにぷにしてる。やだ、気持ちいい。


「……なにやっているんですか?」

「……ごめんなさい」


 水球をべたべた触っていたら冷たい目で見られた。ごめんなさい。しばらくしたらばしゃあっとまた地面に落ちた。うわぁ、手がべしょべしょに……。

 でも念じれば状態固定できるんだな。フィーリングでもなんとかなるもんだな。しかも、もう訓練出来ないっていう罠。全属性使えてもこんなに魔力が少なかったら意味ないよ。水しか出してないよ。水しか。


「……勇者様は魔法が得意ではないのですね……」


 そう言って不安そうに髪をいじるリョウさん。面目ないです。


「いえ、別に勇者様を責めている訳ではないんです。ただ、不安で」


 はぁ、とため息をつくリョウさん。そんな姿も耳が動いてて可愛いですね。触りたい、その耳。ついでにその尻尾も。もふもふしたい。

 ……これは決してやましい意味など含まれておらず、異世界の獣人に対する興味であって、男が好きと言う意味合いではない。

 ですからどうか、その殺意を引っ込めて下さい、エイリスさん。

勇者ステータス


ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』

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