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1話

魔王アルリリアの報われない日々を読んで頂いた方、まことに有難うございます。

そしてお待たせいたしました。

ご期待に添えるかは分かりませんが、力の限り頑張りますので生暖かく読んで下さると嬉しいです。

*こちらは「魔王アルリリアの報われない日々」の続きものとなっております。ご注意下さい。

 俺は困惑を隠せないでいた。

 自分の部屋に引きこもっていたら、某ゲームのセリフが聞こえてきて、足元が真っ白に光った。そこに吸い込まれるような感覚に苛まれ、気が付いたらRPGの神殿のような場所に来ていたのだ。

 何が何やら分からない。間違ってもこんな大がかりなマジックを披露されるような立場の人間ではない。床には魔法陣のようなモノが輝いている。石の素材なのか、足がひんやりして冷たい。さっきまで部屋で体育座りしていたのだ。急にこんな事になるなんて知らなかったし、靴下すらはいてない。


「勇者様!」


 俺は、頭がイカれたかな?神官服のコスプレをした集団にキラキラした目で見つめられて、勇者様とか呼ばれている。あれれ?俺、いつの間にか違う部屋に来てたのかな?てへぺろ、俺ったらドジッ子さんだな。

 いや、落ち着こう。冷静に観察するんだ。

 周りをぐるっと見回すと、たくさん人が立っていて、全員コスプレしていた。騎士、魔術師、貴族……全員かなり出来が良いな。よし、全員表に出ろよ。俺が目を覚まさせてやる。いい年した大人がそういうことしちゃいけないんだからな?

 ローブを羽織ったの男が前に出て、俺に近寄ってくる。その男の頭には茶色の獣耳がちょこんと乗っており、可愛らしい。あの耳は、恐らく犬耳だろう。時折ピクリと動いていて、やけにリアルだった。

 上質そうなローブの隙間からは、かなり繊細な装飾を施した服がチラチラ見えている。その整った顔立ちや、立ち居振る舞いはまさしく貴族と言った感じである。まぁ、別に本物の貴族なんて見た事ないけどな。イメージだけだ。


 っていうか……あれ?なんで……ステータスが見えるの?


リョウ

Lv:37

17/魔法剣士/黒の忌み子/風・土

攻撃力:237

防御力:150

魔法攻撃力:356

魔法防御力:230

魔力:250

『自然治癒』『魔力箱』


 目をゴシゴシ擦っても、その表示が消える事はない。リョウと表示されている、これが恐らく名前だろう。レベルの表示とか、どこのRPGなんだろう。

 俺の動揺などいざ知らず、リョウと表示された男が膝を付いて頭を下げた。


「待っていました、勇者様。どうか、魔王討伐の為に、『伝説の剣』を抜いて立ち上がって下さい」


 なん……だと……。何をいっているんだこいつは。ちょっと待ってくれ。ごめん、ちょっと俺病院行きたいんだけど。はやくドッキリの看板見せてくれないと、気絶しちゃうよ。動揺のし過ぎでちょっと訳が分からない。むしろ病院が来い。

 勇者とか言われても、なんだか現実感が湧かない。だが、明らかに現実とはかけ離れたステータスの表示がある。そして、彼が口から発する言葉は、聞いた事もない言葉で。耳から入って来た異界の言葉が脳内ではちゃんと日本語として機能している。

 そして―――。


ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』


 俺のステータスも見えた。ってか、勇者って……なんだよこの表示。いや確かに金髪だし、勇者なれるんじゃね?とか妄想した事はあったけれども。かと言って勇者!とか呼ばれたらね、もう、あれですよ、うん、馬鹿なんですか?って思う訳ですよ。

 これが、噂に聞く「勇者召喚」ってやつなのか……。まさか、自分の身に降りかかろうとは思ってもみなかった。という事はここは異世界って事なんだろう。この人達の衣装が板についているのも頷ける。量産型コスプレ衣装ではなく、それぞれに作られたその人の為の服なのか。


「……どうか、宜しくお願いします」


 リョウが何度も頭を下げる。はっ……現実逃避しててちょっと忘れかけてた。この人ずっと頭下げてたんだった。ピンとたっていた耳がしょげてしまっている。申し訳ない事をしました。

 しかし、勇者、勇者ね……なんで俺なんだ?もっと適性が高そうな奴なんていくらでもいるだろうに……。俺は勇者って柄じゃないと思う。いつだって助けられる庶民Aだろう。

 だが、異世界、勇者、獣耳、言語理解……現実離れした今の状況で、否応なしに気分が高まってくる。ここに召喚される前の絶望的な気分が嘘みたいだ。俺の絶望なんて、所詮はその程度だったという事なのだろう。


「……はは」


 俺の乾いた笑いが神殿に響く。ピクリと獣の耳を動かしたリョウが顔をあげる。ここにいる人間が俺の挙動を注意深く見ているのが分かった。

 異世界、勇者ね。とても楽しそうだ。もし騙されたドッキリなのだとしても、これだけ凝っているのなら許せるレベルだろう。


「……いいですよ」


 俺の言葉に、少し首を傾げるリョウ。言葉を咀嚼し、しばらくして理解したらしい。


「……有難うございます」


 泣きそうな顔で礼を述べるリョウの顔が印象的だった。嬉しいなんて思ってない、そんな顔に見えた。何故そんな顔をするのか分からない。勇者が良いよって言っているのに、その反応は如何なものなのだろう。周りの神官たちの反応も微妙だった。

 というか、召喚しといてチェンジとかアリなのだろうか?お願いしますとかおっしゃってますが、「嫌だと」言ったらちゃんと帰してくれるのだろうか?異世界から人を拉致……勇者召喚ってマジ犯罪。


「ちなみに聞いても良いですか?」

「なんなりと」

「もし「嫌だ」と言っていた場合はどうしていたんです?」

「ああ……」


 リョウが流し見た先に、騎士っぽい男。そいつがどう見てもダークエルフにしか見えない。すごく出来がいいですね。まるで本物のよう……信じたくないが、恐らくは本物なのだろう。


「彼に斬られていたでしょうね」

「なにそれこわい」


 え、勇者拒否してたらいきなり死亡するとか。なにそのハードルの高さ。勇者召喚ダメ、絶対。勝手に拉致っといてそりゃ厳し過ぎるんでねぇのかい?

 俺の気持ちを察したのか、リョウが苦笑を浮かべる。


「まぁ、勇者が断れば、結局この世界は滅びますからね。今死ぬか、後で死ぬかの問題です。送還する魔法はございませんから」

「なにそれこわい」

「まぁ、それは極論です。説得くらいは必要だろうと考えていましたが、返事がはやくて助かりました」

「……はぁ」


 なんだ、冗談だったのか?まぁでも、答えはイエスでないとダメって解釈でいいのかな。召喚にも魔力的なモノが必要だったりしそうだしな。というか、送還の魔法はないのか。もう帰れない、か。でもまぁ……幸いな事にあまり帰りたいとは思えない。痛む拳を見つめて、握りしめる。

 あの世界にもう希望はない。もしかしたら、神様が気を利かせてくれたのかもな。魔法とか言ってるし、役に立つモノがあるのかもしれない。ちょっとやる気出て来た。

 まずはまぁ、魔王討伐しなきゃならんのだろう。


「ではこちらに」


 靴をはかされて、リョウが代表して俺を促す。


 少し手狭な部屋に案内される。なんだか金色にぴかぴかしてる部屋だった。と、言っても、金が使われている部屋ではない。でも何故かキラキラしてる。なにこれ不思議空間。特に中心に刺さっている剣が神々しい。


「中に入り、あの剣を抜いてください」

「はい」


 中心にある剣に手をかけてみる。キィン……と高い金属音が鳴って簡単に抜けた。「おおっ」と周りが騒いでいる。これ、本当に現実なのかなー……悪い夢じゃないよね?厨二病って悪化するとこんなんなるの?キラキラと謎なほど光る剣を眺める。


 『伝説の剣』エイリスフィール:『魔絶善活』


 うわ、伝説の剣とか書いてるよ……。マジか、伝説の剣抜いちゃったよ……。


『ほう、そなたが勇者かえ?』


 突然頭に響く声にビクッとなって剣を落としてしまった。カシャーンという音が反響して、皆が驚いている。すみません。


『あーあー……もうちょっと丁寧に扱えんかのう?仮にも伝説の剣じゃぞ?』


 えっ……なになになに?ちょ、気持ち悪い気持ち悪い。頭に響く感じが超絶不愉快。


『……それは流石に非道過ぎないかのう?』


 ちょっと困惑したような声色が聞こえてくる。ふぅ、とため息をついた声がしたと思ったら、キラキラ光って剣が人型に変わった。金髪を足元まで長く長ーくのばしたイケメンが立っていた。


「やだ、超イケメン」

「ほう?そのいけめんとはなんぞや?」


 先程まで頭に響いていたイケメンボイスが耳から伝わってくる。さっきの声はこいつか。やたらキラキラ輝いてるな。思わずドキッしてしまう程綺麗だ。綺麗過ぎてどちらかというと女性的な感じだけど、喉仏や肩幅から男だと推測できる。


 『伝説の剣』エイリスフィール:『魔絶善活』/人型


 ステ見てもさっきとさほど変わっていない。人型かー剣が人の形をとるだなんてなんて異世界?

 ははっワロスワロス。


「えっとー……イケメンっていうのは……超カッコいいわっ抱いて!ってなる感じの色男の事です」

「……そなた男色なのか?」


「あ、いえ、違います。すいません」


 ちょっと引かれた。ごめんちょっと調子に乗り過ぎた。言動には気を付けよう。


「して、そなた。我を抜いたと言う事は勇者で相違ないか?」

「あ、みたいです」


 ステにも勇者って書いてあったよ!やったね!仲間が増えるかもしれないよ!


「我の名はエイリスフィールという。気軽にエイリスと呼ぶと良い」

「あ、はい」


 やっぱりあの表示は名前だったのか。便利だな。

 エイリスさんは長い髪をサラリと後ろに流して腕を組む。その圧倒的な風格は俺よりも勇者っぽい。


「勇者と共に旅に出るのは誰ぞや?」


 そういうと、リョウと、先程リョウが見ていたダークエルフと、桃色の髪をした女の子が出て来た。そして、それぞれが名前を名乗ってくれた。ダークエルフがラインハルト、桃色の髪の子がマリアらしい。覚えきれなくても、後でステータス見ればいいだろう。


「ほう、3名かのう」

「いえ……後3名程いますが、休んでいます」


「なんじゃ?何故ここにおらぬ?」

「……それは」


 困惑したような顔を浮かべるリョウ。それが結構可愛い。耳がピクピク動いてんのがアレだな。可愛いな。あれが女の子だったらもっと嬉しいんだけどな。


「いずれ、分かる事でしょうから、説明しましょう」


 周りにいる人達も気まずそうに視線を下に落とす。ダークエルフと女の子も辛そうにしている。なんだろう、その人達に何かあったとか?


「『伝説の剣』様は、闇属性の毒についてはご存じですよね」

「そうじゃのう……」


 難しそうに眉を顰めさせたエイリスさんが頷く。え、なんですか?知らない情報ですよ。っていうか召喚されたばっかりなんだよ、知ってるはずねぇよ。教えてくれよ。只ならぬ様子にゴクリと息を飲む。


「僕達はこれから魔王を……かつて『閃光』のアルと呼ばれた英雄を殺しに行く予定なのです。そしてその魔王は、僕達の仲間でもありました。……休んでいる者は、その事実を受け止めきれなかった者達です」

「……なんと」


 ん?ちょっと待ってくれ。可笑しな事言ってないか?この人。英雄?仲間?……それが魔王?いや、ちょっと待て、訳が分からないよ。

 はぁ、と小さく息を吐くリョウは、胸に手を当てている。その手が僅かに震えている。ダークエルフも剣を握りしめて瞳を固く閉じており、女の子も目に涙が溜まっている。周りの神官たちもなんだか暗い。

 エイリスさんはその話を聞いて、目を見開いて驚いているようだ。


「人として生きたアルという人間はとても温厚で、人の命を救う人間でした。最後の最後まで、僕達を気遣い、そして……闇属性の毒で、彼女は……。もはや、理性など持ち合わせぬ殺戮の魔王と化してしまっただろう彼女を、僕達は殺しに行くのです。仲間として笑いあい、共に過ごした彼女を殺す為に。それが、彼女の最期の望みです」


 おうおうおう……あ、あれですね。闇墜ちって奴ですね。ふぅ、無駄にオタク知識もってないわーすぐに理解したわ。

 リョウは目線を俺に向ける。ああ、俺が「いいよ」と言って嬉しそうな顔をしなかったのを理解した。かつての仲間を殺しに行く事を、笑って喜ぶ者などいないだろう。ちょ、待って待って、待ってくれよ。何そのいきなりのハードモード。


「勇者様、貴方はあまり気にする必要はありません。仲間が少しだけ迷惑をかけるかもしれませんが、許してやってくださいね」


 やんわり笑いかけてくる姿が痛々しい。心中穏やかな訳がないだろうに。


「……ふむ、随分と厄介な状況なようじゃのう。まぁ、詳しい説明は後にしようかのう。我は、勇者の名前も知らぬ故」


 エイリスさんが半ば無理に話を切り上げ、俺の話を持ち出した。ああ、そういや俺は名乗ってなかったな。


「あ、えっと……ヒイラギです」

「そうか、ヒイラギか。変わった名じゃのう」


 まぁ、苗字ですからね。何故名前を言わなかったと言われると、なんとなくだ。おう……そういや魔法のある世界って本名言ったら名前を縛られたりするんじゃないだろうか?やっべー苗字だけど大丈夫かな?下の名前じゃないだけマシだと信じたい。



 説明はエイリスさんに任される事となり、取りあえず俺は部屋へと案内される事となった。その際、エイリスさんは剣へと戻ってしまった。自分で歩かないのか。


『剣じゃからのう……移動は流石にのう』


 え、やめて。その頭で響くの気持ち悪いの。


『そうは言ってものう……そなたとは繋がってしまっておる故。そなたの思考もダダ漏れなのじゃ』


 え、やだ。何それ死ぬほど恥ずかしい。あなたと、合体してるの?漏れちゃってるの?


『……そなたやはり男色なのかえ?』


 あ、いえ、違います。すいません。ちょっと調子乗っただけなんです。だからお願い引かないで!その悪感情を流し込まないで!

 拒絶を込めた悪意のある気が流れ込んで来て、それが剣から流れてくるのが手に取るように分かる。それで繋がっている、という表現がしっくりする。こんな事ってあるんですね。


『まぁ、慣れれば隠す事も出来るゆえ、精進するとよい』


 は、はい……。この考えを全部聞かれてんのとか耐えられんわ。はやめに垂れ流し克服をしよう。と、そう心に決めた。



 めちゃくちゃ豪華な部屋に通されて一息つく。なんだかんだで緊張していた。かといって完全に気が抜けない。ここの装飾が高そうで怖いからだ。裸足だったので靴を渡されたが、ちょっと歩きにくいし、慎重に行こう。


「それでは、説明をしようかのう」


 キラキラと光ってエイリスさんが人型に変わる。

 話す時は常に人型になって貰いたいです、切実に。あの頭に浸透する感じが凄く嫌だ。今まであんなもの経験した事がないから、慣れていないだけだろうか……。


「これから大変じゃろうが、宜しくのう」

「宜しくお願いします」


 エイリスさんと握手をした。その手は思いのほかすべすべでびっくりした。ちょっとドキッしちまったぜ……だが男だ。


「ちなみに人型をとっておる時はヒイラギの声は聞こえんゆえ、安心すると良い」


 あ、良かった。今の聞かれてたらやべぇ。社会的にも色々やべぇ。


「まずそなたは魔王を討伐するために召喚された。これは分かるのう?」

「はい」

「まず定義じゃが。魔王とは、闇属性を持つ者の事。勇者とは光属性を持つ者の事を言う」


 そうなんだー。へー。めっちゃ特別感があるね。


柊鏡夜

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』


 自分のステータスを確認する。光が入っているから、これがいわゆる光属性とやらかな?ってことは……火・水・風・土も使えるって事なのだろうか?この最後の『救世主』『神々の祝福』ってのはなんだろうか。


「さて、先程の話にもあった通り、魔王とは人と言葉を交わし、まともな思考をする事もある。流石にあれだけの人間が苦悩している状況に陥った事はないが、かつての勇者が悩んだ事もある」

「ほう」


 俺が頷いているのを見て、エイリスさんも頷く。その動きも実に様になっててカッコいい。サラサラと金色の髪が零れて、その度にキラキラ光っている。

 かつての、って事は勇者は過去にもいるんだろうな。魔王ってのは殺しても復活するのか?そいつ殺しても第二第三の魔王が……的な?


「魔王の扱う闇属性が、強烈な毒と為りうる。人としての思考は悪夢で魘され、やがて夢と現実の区別がつかなくなり、人を無差別に殺すようになる」


 ほほう、本当に闇墜ちだったとは。俺のオタク知識も中々のものじゃないか?


「それが真の魔王じゃ。魔王は、『不死性』を持っており、勇者でないと最後の止めを刺す事が出来ん」

「不死性……」

「さよう。仲間と共に魔王の魔力を削り、最終的な止めは勇者にしかできぬ……殺したとして、200から300年周期でまたあらわれる。どれだけ対策を練ろうと、必ずじゃ」

「その度に、異世界から人間拉致ってんの?」

「……さよう」


 少し気まずそうに目を逸らしながら頷く。取りあえず罪悪感はあるんだな。でもまぁ、エイリスさんが呼んだわけじゃないしなぁ。

 異世界から拉致した人間に救って貰わなきゃいけない世界ねぇ。それは、救う価値があるのだろうか?まぁ、やるけどさ。


「のう、ヒイラギ……良き人だった者を殺しに行く覚悟が……そなたにあるかえ?」


 かつて仲間だと慕っていた人間がその毒とやらで精神的に狂ってしまう。その人間を、今から殺しに行く……その覚悟。

 俺は背筋がひやりとした。勇者が今から行うのは「人殺し」だった。それも、とても善人で、皆に慕われるような人間を殺す。しかも止めは俺。

 ちょ、待って。チェンジで。勇者チェンジでお願いします。しまった、帰れないって言われたんだった。というかすでに『伝説の剣』も抜いちゃってるし。


「……まぁ、心づもりはこれからゆっくりとしていくと良い。まだ焦る必要もない故」


 気遣うように優しく笑うエイリスさんを見て、申し訳ない気持ちになった。勇者ってそんなに重たいものだったのか……今更ながら、ちょっと投げ出したくなってきた。

勇者ステータス


ヒイラギ鏡夜キョウヤ

LV:1

16/勇者/火・水・風・土・光

攻撃力:23

防御力:17

魔法攻撃力:24

魔法防御力:15

魔力:32

『救世主』『神々の祝福』

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