3.恥ずかしいから止めろ!
-何か、こっち見てね?スゲエ見られてんだけど・・・
-歩一歩祐希の方へ確実に近付いて来る男。
-それに気付いた佳兎が俺の隣に並んだ。
「おい、アイツお前の事スゲエ見てんだけど。しりあいか?」
「いやいや、俺この高校でお前しか知り合い居ないって」
-つうか・・・目がこええよ。俺何かした?
-それに、人燃えてるけど、アイツが能力で燃やしたのか?
-ん?炎って言えば・・・確か・・・。
「思い出したかい?君がそこの彼に助けられた時に近くで戦っていたんだよ」
「あー・・・・・・やっぱりあれか」
「あれとは失礼だね」
-説明すると、俺が最初に数人に囲まれて死亡フラグがたって佳兎に助けられる前に、他の奴等を観察していた時に一人だけ炎を使っていた奴が居たんだ。
-それがこのイケメン野郎。
-今気付いたが、さっき俺と佳兎を囲んでいた奴等が居なくなっている。
「ねえ」
「あ?・・・って、うおっ!近っ」
-近くで声がしたと思ったら、イケメン野郎がスッゲエ近くに居た。
-それはもう、顔がぶつかるんじゃないかって位に。佳兎も驚いている。
-つうか俺より身長でけえ・・・。
「僕、葉月夏騎って言うんだ。君は?」
「え・・・・來條裕希だけど・・・・・・あの、近いんですけど・・・」
-何敬語になってんだよ俺!
「気にしないで」
-気にしろ!そんな清々しい顔してるの見ると内心騒いでる俺が馬鹿みてえじゃねえか!
-おい、佳兎助けろ。
佳兎に支線だけを向けて祐希は助けを求める。佳兎は祐希のSOSに気付いて、夏騎の肩に手を置いた。
「少し離れてやれよ。祐希スゲエ戸惑ってるぞ」
「・・・君は?」
「月嶋佳兎だ。小学ん時からの祐希の親友だ」
「ふーん・・・・・・まあ、関係無いけどね」
興味なさそうに言うと、丁寧に、ソフトに、夏騎は佳兎の手を払った。そしてニコッと笑顔になると、クイッと綺麗で長い指で祐希の顎を掬い上げた。
-な、何だ・・・?
「可愛い顔してるね」
《チュッ》
「へっ?」
「なっ・・・!?」
-な・・・・・何が起きた~~!!?
-一瞬、本当に一瞬だけ俺と葉月のく、く・・・口、が・・・・・・・・あああ~~~!!!
訳すと、夏騎が祐希の唇に一瞬だけ自分の唇を軽く押し付けたのだ。佳兎も絶叫。
「ん、柔らかいね」
「や、やわ・・・・柔らかいとか言うな~~!!」
-俺こんなキャラじゃねえのに!コイツが悪いんだ・・・コイツが、あ、あ・・・あんな事っ、するから・・・!
-や、ヤベエ・・・思い出したら思い出しただけ恥ずかしくなってきた・・・!
-佳兎っ、助けろ!
二度目の佳兎への視線でのSOSをした祐希。そSOSに、絶叫していた佳兎は今度は祐希と夏騎の間に割って入り、持っていた双剣の片方の切っ先を夏騎に向けた。
「テメエ・・・何のつもりだ?油断させようとしてんのか?」
「別に?そんなつもりは無いけど」
「じゃあ、何であんな事」
「ただ単に好きだから。一目惚れって奴かな?」
「一目惚れ!?・・・ーーーー」
「祐希・・・!?」
『一目惚れ』と言う言葉にパニックになっていた祐希が対に気絶してしまった。ギリギリのところで倒れていく祐希を佳兎が受け止める。
それを見た夏騎は、目をパチッとさせると、またニコッと笑みを浮かべた。
「ははっ、気絶しちゃったかあ。ごめんねなんか」
「ごめんじゃねえよ、どうすんだよこれ!」
「介抱してあげてね。じゃ、僕はこれで。祐希君の事宜しくね」
「おい!」
佳兎に一度ウインクをすると、軽快な足取りで「試験合格してねえ~!」と言って走り去って行った。
もう佳兎は唖然とするしかなかった。