2.勘弁してくれ
-と、言う事で始まってしまった地獄の24時間。この俺の指にもはめられているこの【赤い指輪】が争奪戦の参加者の証。
-途中ではぐれてしまった佳兎とも合流し、自分の命と【赤い指輪】を守るために他の生徒達を探しに行く。
-因みに、先程俺に襲い掛かって佳兎に返り討ちにあった男達は逃げ足が速いのか、何処かに行ってしまった。
「おい祐希、お前自分の能力起動してみたか?」
「まだ」
「早めに起動しておいた方が良いぞ?何処から狙われているか分からないからな」
「分かってるけど・・・・・・面倒くせえ」
「おいおい」
-俺のやる気のない発言に佳兎は苦笑いした。
確かに何処から狙われているか分からない訳だから、早めに起動するに越した事はない。
-佳兎の能力は双剣と・・・・風って言ってたな。俺はどんなのだろうか?
-基本は殆どが自分に合った武器を召喚出来るって後からの説明で言ってたけど、他の能力は人それぞれか。
-俺もそろそろ起動してみるか・・・。
-俺達の現在地は、校内の一年棟廊下。移動の範囲は一年棟と敷地内。
-寮の方は立ち入り禁止。
-一年、二年、三年の棟は繋がってはいるが三つに分かれている。
-二年生と三年生は、俺らが24時間【赤い指輪】争奪戦をやっている間、普通の勉強を受けている。
-平凡な物だ。俺達がこんな事をしている間に勉強だなんて。
-こんな事を考えている内に前方から数人の男女。コイツらも手を組んでいるのだろう。
「武器は・・・・・はっ、ナイフか。リーチが長い分こっちが有利だな。問題は他の能力だな」
「ああ・・・・・俺も起動させるか」
「じゃ、行くぜ」
数人に囲まれながら祐希と佳兎は背中を合わせた。そして正面に手を翳す。
「「“ファイング”!!」」
叫んだ瞬間、白い光を放ちながら二人の手には武器が召喚された。
-俺は刀か・・・・にしても、柄が赤で刃の方が真っ黒って・・・・・・かっけえ。
「祐希!自分の武器に見とれてる場合じゃねえぞ!」
「・・・・・見とれてねえよ」
-実際の所見とれてしまっていた俺だが、他人に言われると正直にそうとは言えない。それが人間ってもんだろ?
「仕掛けて来ねえな・・・・だったらこっちかだ行くぞ!」
「行ってらっしゃ~い」
「お前もだ!」
-怒られてしまった。
-しょうがない、行くか。
佳兎は双剣、祐希は刀を握り締め一斉に飛び出した。来るとは思っていなかったのか、向かってきた二人に男女数人は怯んで一歩下がった。
「・・・・・殺しても良いんだっけ?」
「なっ・・・来るなあ!!」
-俺がそう言って刀を下から居合いのようにして振り上げると、男は叫びながらナイフを構えた。
-腰抜けが・・・
《ガキーーン!!》
「殺す訳ねえだろ・・・それもこんな腰抜けを」
「!・・・・【指輪】が・・・!」
祐希の手には一つの【赤い指輪】。
腰を抜かして尻餅を付いた男の足元には男が持っていたナイフ。
どうやら祐希が男のナイフを弾き、その瞬間に【赤い指輪】を男の指から抜き取ったようだ。
-これで燃えないんだっけ?佳兎の方は・・・・・・・佳兎も取ったみたいだな。
祐希の視線の先の佳兎の手には、佳兎が指にはめている【赤い指輪】と同じ【赤い指輪】が。
-後はこれを守りきれば試験合格か。
-人数ではあっちが勝ってるが、力的にはこっちが上かもな。ビビってやがる。
二人の圧倒的な強さに二人を囲んでいた男女は後ずさって行く。
-時間的には5時間は経ったか?最初随分と逃げ回ってたからなあ。・・・・・・・・ん?
「ぎゃああああああっ!!!」
「何だよ、あれ・・・!」
-俺と佳兎は信じられない物を見た。
-人が燃えている。
燃えている男の後ろには怪しい笑みを浮かべたムカつくぐらいイケメンな男が。
「おいおい・・・勘弁してくれよ・・・」
-額を汗が伝う。