1.入学そうそうこれはねえだろ
-皆さん、とうとうこの日がやって来ました。え?この日って何の日だって?そんなの決まってるでしょう。
-それは・・・
[皆さん、桜榎高校御入学おめでとうございます!]
マイクを通って聞こえた校長の挨拶。
-お聞きの通り本日、俺、來條裕希は桜榎高校に入学しました!
-因みに紹介しておくと、桜榎の桜は、サクラの意味だ。まあ見れば分かるが、この高校には桜がこの入学式の季節、春にとてつもなく美しく満開に咲く事から桜が入っている。
-榎は・・・・・・形がかっこいいからだそうだ。何ともふざけた理由だが、それはそれで良いだろう。
-俺が入学した桜榎高校は、親元を離れての寮の高校だ。設備充実、雇っている先生も調理人も優秀、執事のような人も沢山。広さは半径5km。武道館が何個分か自分で考えてみよう。
-そんな壮大な高校に一度は通ってみたいと思って入学する人や単純に成績が良いから通っている人が居る。
-俺はどっちだか分かるか?
-それはなあ・・・
「どっちでもねえな」
「あ?何がだ?」
「いや、一人言」
「気持ちわりいな」
「ほっとけ」
-今俺に気持ちわりいと言ってきた男が、小学校からの親友の月嶋佳兎だ。俺と違って運動神経抜群で顔も良いせいか、女子にモテる。別に俺は女子には興味が無いが・・・・・・って、話がずれたな。
-取り合えず、俺はどっちでも無いを選択をする。え?そんな選択欄無かったって?気にすんな。
-俺は、テレビのニュースでこの桜榎高校の存在を知って、入学する気は無いが、何となく良いなあって思ったから親父が居る時にボソッって言ってみたんだ。
『桜榎高校かぁ、入学するならここが良いなぁ』
-と。
-ホント軽い気持ちで言ったのだ、呟く程度に。俺に厳しい親父は絶対猛反対して一発くらい殴られると覚悟していた。
-しかし、親父は俺の考えに反してサラッと言った。
『入学してえなら別に良いぞ。お前の学力なら大丈夫だろ』
-と。
-何だかニヤニヤしながら言っていた所がイラッと来たが、入学しても良いなら是非ともしてみたいものだと思い始めた俺は、親父に入学手続きをしてもらい、今日入学を果たした。
-軽い気持ちで言った事が、本当に入学出来てしまうなんて、俺はあの時人生で最大に親父に感謝しただろう。苛ついたのは水に流してやってもいいかな?何て思ったりして。
[それでは、本日御入学なさった皆様には、本校に入学して初めての試験を早速執り行ってもらいます]
-俺が内心喋っている間に校長から生徒会長の眼鏡の女にマイクをバトンタッチしたようだ。生徒会長の“試験”と言う言葉に周りは僅かに騒ぎ出す。『どんな試験?』『学力でかなあ?』『面白いやつだったら良いなあ!』等々と話す生徒達だが、次の生徒会長の眼鏡の女の言葉に俺と佳兎も驚愕する事となった。
[皆さんには、命を賭けてこの【指輪】を取り合って貰います!]
-『命を賭けて』と言う言葉と共に生徒会長の眼鏡の女が懐から出した【赤い指輪】。『命を賭けて』の言葉に俺達はその【赤い指輪】を信じられないと言う顔で見詰め、騒ぐ事しか出来なかった。
-そんな俺達を嘲笑いかのように生徒会長の眼鏡の女は話を進める。よく見ると、その【赤い指輪】が横から一人一つずつで配られていた。俺と佳兎にもきた。
[この高校に入学し、校門を潜ってきた時点で、皆さんの中に眠っていた“能力”が起動し始めています。能力は自分で確かめる事。起動の言葉は“ファイング”。棄権は永久手配を意味し、命を狙われ続ける。そうなりたくないのでしたら、今から24時間【赤い指輪】を死守する事。そして、絶対一つは【赤い指輪】を奪い取る事。奪わなければこの桜榎高校の生徒になる資格無しと見なし、時間になった時点で燃えます]
-理不尽なルールに俺は後悔した。桜榎高校に入学してくるんじゃなかった。
-親父のあの顔はこの事を知っていて、俺を家から追い出すために入学を許可したのだと。
-そして同時に思った、この高校生活は人生で最大に壮大で血みどろな高校生活になると。
[試験、スタート]
-悪夢の始まり。