ゴシップの魔女(お題小説文字制限なしバージョン)
沢木先生のお題に基づくお話です。
今回は「直通エレベーター」「サンシャインホテル」「妄想エンドレス」「ゴシップの魔女」をお借りしました。
俺はフリーの芸能レポーター。
いつもスクープを探している。
クリスマスを過ぎた頃。
有名なあのホテル王の令嬢が来日した。
通称「ゴシップの魔女」と呼ばれるほど、スキャンダラスで魅力的な女性だ。
今までに数多くの浮き名を流し、たくさんの俳優や歌手、大富豪とのロマンスを報道されている。
彼女に関するネタを入手したいのも確かだが、それ以上にあの美しい顔を間近で拝みたいという気持ちも強い。
だから俺は、彼女が日本に滞在する間はずっと張り付いていようと思った。
彼女は日本に来ると、決まってサンシャインホテルに泊まる。
彼女の父親が全世界にチェーン展開しているホテルだ。
その最上階にあるスイートルームは、一泊百五十万円だという。
彼女は決まってそこを使うらしい。
もちろん、オーナーの令嬢である彼女が金を払う事はない。
ホテル内は全てフリーパスだ。
その辺も本当にあやかりたい。
俺は様々な伝手を使い、何とかホテルに潜り込み、従業員を装って彼女の部屋に近づく機会を得た。
彼女の部屋には専用の直通エレベーターでしか行けない。
それに乗るには、パスワードが必要だ。
しかし、それも様々なコネを使って、何とか入手した。
今回は強運に恵まれているのだ。
俺はパスワードを入力してエレベーターに乗り込み、彼女がいる部屋へと向かった。
部屋の前には屈強なボディガードがいると聞いていたのだが、いなかった。
何てラッキーなんだ。怖くなって来た。
目の前のドアをゆっくりと開く。
「遅かったわね」
真紅のイヴニングドレスに身を包んだ彼女が振り返って言った。
「普通に会うのが退屈だからって、こんな手の込んだ事をしなくてもいいのに、ダーリン」
彼女は俺に抱きついて来て言う。
そう、俺は彼女の夫。将来を約束された逆タマ男だ。
「こういう設定の方が燃えるだろ、ハニー?」
俺はそう言って彼女の形のいい唇を貪る。
「何してるんだ、さっさと取材に行って来い!」
耳元で編集長に怒鳴られ、雑誌のグラビアを飾っているホテル王の令嬢の写真にキスしていた俺の妄想エンドレスは打ち止めになった。
本当は、俺はしがない雑誌記者である。
今日もまた、芸能人のゴシップを求めて町を彷徨うのだ。
無理矢理ですまんこってす(汗)。