1543 鉄砲伝来秘話
1543年、一人のポルトガル人が種子島に漂着した。
手にはカステラと火縄銃が握られていた。
種子島の領主 種子島時尭は、そのカステラを食べてしまった。美味しかった。でも、食べて無くなってしまったのでもう作れない。もったいないことをした。なので、せめて火縄銃は増やしてみたいなと考えた。
そこで刀鍛冶の八板金兵衛に火縄銃の複製を命じた。
「これと同じモノを作ってみよ。」
異国の武器に興味津々の金兵衛。
面白い仕掛けじゃ。しかし武器としては欠点が多すぎやしないか。撃つまでの作業が多すぎる。雨が降ったら使えない。玉は音の割には大して飛ばぬし狙いも定まらぬ。
時尭様にはこれより凄いものを作って献上しよう。
...金兵衛は凝り性でかつ褒められるのが大好きな男だった。
『矢じりは尖っているではないか』、玉を丸からドングリ状にした。『竜巻を見よ』、筒の内側にらせんの溝を彫った。
飛距離と精度が馬鹿みたいに上がった。
細い筒に毎度火薬粉を入れるなど正気の沙汰ではない。小さい筒に小分けにした。ついでにドングリ玉に合体させた。
その尻を強く叩けば火薬が爆ぜる。ドングリが飛ぶ。火縄も要らなくなった。
撃った後に残る小さい筒が邪魔である。吐き出すカラクリを付けた。同時に新しい玉を装填するカラクリを付けることなど最早造作の無いことだ。
キツツキの如く素早く動くカラクリ。一息に十発ほどの玉が打てるようになった。
玉切れしないよう、玉をみっしり詰め込んだ箱を取り付けた。
そうして完成した『連発式火縄無し火縄銃』。
献上された時尭は腰を抜かした。
とりあえず、『良うやったお主は日ノ本一の鍛冶師じゃ』と金兵衛を褒め、褒美をやって帰宅を促す時尭。
にこにこ顔で時尭の屋敷を後にした金兵衛を見送ると深く深くため息をついた。
...これを世に出すのは四百年は早いなぁ、多分。
その夜、時尭は屋敷の庭に深い深い穴を掘ってそれを埋めた。
おしまい




