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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第88話 決議

 陽介は住人に振り返ると、ニヤッとした。


 やる気がでるのは結構だが。

 こっちも商売だし、負けてやるわけにはいかない。


 「ご指摘はごもっとも。今回は第三者をお呼びしています。さっ、先生。入ってきてください」


 ガチャ。


 ドアが開くと女性が入ってきた。

 葛城より背が小さいが、ショートカットの知的な雰囲気の女性だ。


 女性は前まで出ると、自己紹介した。


 「わたしく、弁護士の市川睦月いちかわ むつきと申します。この度、山路さんからのご相談で、本件のご説明に参りました」


 胸のひまわりバッジがキラリと光る。


 「おぉ」

 「綺麗な弁護士さん」

 どこからかそんな声。


 よし、第一印象OK。

 やはり、この人選は正解だ。


 睦月は咳払いした。

 「こほん。山路さんのプランについて、わたしの方からご説明します。まず、本件の5戸については、相続登記もせずに放置。調査の結果、その中の3件は相続人不在」


 「残りは?」


 「残りの2件は相続人が見つかりました。山路さんの方で、相続人の方に管理費滞納の実情をご説明の上、任意売却で話をすすめているそうです」


 「その5軒、……いや3軒か。勝手に売れないだろ」

 理事長の声。


 「総会議決があれば可能です。まず、裁判所に財産管理人を選任してもらい、山路さんの会社が安く買い取る」


 「だからそれが利益相反なんだってーの」

 陽介が叫んだ。


 「もちろん、販売には裁判所の許可がいります。逆に言えば、OKがでれば問題はありません。本件は給排水管工事ナシでは価格のつかない不動産です。これをご覧ください。仲介大手A社とB社の査定書です」

 

 査定書には『査定価格10万円』の文字。


 「配管更新費用を考えれば、10万円でも赤字です。妥当な価格ですので売却許可はおりると思います」

 

 「それって、買いたたきだろ?」

 「いや、空き家がいくらになろうが、俺らには何の損もないし」

 住人たちが再びザワつく。

 理事長は、誰とも話さずに真剣に聞いている。


 今回、特別決議に必要なのは9票(9/11)。

 既に書面による反対が2票でている。


 他の住人もだが、理事長か谷川長男のどちらかが反対した時点でアウト。


 ——つまり、この場の全員が賛成しなければ可決できない。



 そこからは、俺が話を引き継いだ。


 「その場合、弊社で更新費用の一部を負担します」


 俺は電卓を叩いた。


 「このスキームなら一戸あたりの負担額は50万円まで下げることができます。もし2,000万の交換費用を普通に15戸で負担すると、一戸あたり約133万円の負担です。いかがでしょう?」


 会場はますますザワついた。

 理事長が頭を抱えている。


 俺は言葉を続けた。

 「工事をすれば、資産価値は、ほぼ確実に50万円以上あがります。わたしが皆様の立場でしたら、正直、反対する理由が見つかりません」


 参加者の数人は頷いた。


 理事長は顔をあげた。

 「ええと、その場合、財産管理人とやらは、誰に頼めば?」


 「たとえば、この市川先生は不動産再生のスペシャリストですよ。もちろん、誰に頼むかは、みなさまのご自由ですが」

 

 俺は睦月に目配せした。

 すると、睦月が話し始めた。


 「今後のためにも、修繕積立金は新設すべきです。また、管理につきましては、歴史のある物件ですので、住人の方に管理人をしていただくのも良い手かと思います。力仕事もありますので、できれば、若い男性の方がいいのですが……」


 俺は手を上げた。


 「あの。陽介さんはどうですか? この団地のことを思うさっきの表情、適任だと思います」


 「そうだよ。よーちゃんにやってもらおう。気心も知れてるし」


 その場の全員が拍手した。

 理事長の方を見ると、頬を拭っていた。


 管理人が声を上げる。

 「では、給排水管の更新について賛成の方は挙手を……」

 


 ♦︎


 駅までの帰り道。


 葛城が後ろ手を組んで、俺の前に回り込んだ。

 「でも、無事に可決されて良かったですねぇ」

 

 「ほんとにな。どうなるかと思ったよ」


 「他の件はどうなるんですか? 管理人さんとか裁判所にを財産の管理人を選任してもらうのとか」


 「それぞれ組合の決議は必要だけれど、理事長があの様子なら大丈夫だと思う」


 「ふぅーん。じゃあ、物件を安く買い取るのは? 裁判所は本当に許可を出してくれるんですか?」


 「あぁ。それも大丈夫。査定書もあるし。それに直近の事例2件は、うちが1万円で買い取った事例だからな」


 「あーっ。もしかして、それで先輩、相続人が見つかった時に喜んでたんですか? これじゃあ、とんだ出来レースですよぉ」


 葛城は大袈裟に大手をあげた。


 「滅多なこというなよ。『たまたま』そうなっただけだし。それにしても、今回は売りの苦労がないからラクだよ」


 「なんで? 仲介部門もあるのに、外注するんですか?」

 葛城は不思議そうな顔をしている。


 「ん。査定書を作っててくれた仲介のA社とB社に選任専属で媒介を出すからだよ。今やってるのも含めてうちの所有が6部屋になったら、平等に3部屋ずつな」


 「選任専属?」


 「お前なぁ。不動産屋なんだからもうちょっと勉強しろ。『A社とB社だけに販売をお願いします』っていう契約だよ」


 「うちからも売れないの?」


 「あぁ。そうだよ。たとえば葛城が仲介だとして、広告費かけて頑張って売ろうとしてるのに、持主が知り合いに勝手に売ったらどうするよ?」


 「マジでムカつきます」


 「そういうこと」


 「あっ」

 葛城が目を見開いた。


 「そのA社とB社って、やたら安く査定してくれたとこですよね。偶然ですか?」


 「あぁ、ほんとうにたまたま。宝クジ的偶然だな」

 俺は葛城の顔を見て笑った。


 すると葛城は頬を膨らました。

 「それは必然っていうんです。わたし、やっぱり先輩は守銭奴だと思いますっ!」


 「だから、最初からそう言ってるだろ?」


 2人でまた歩き出す。



 駅が見えて頃、葛城が言った。


 「さっきの可愛い弁護士さんって、先輩のお知り合いですか?」


 「そだよ。 大学の後輩」


 「ええっ、すごーい。だったらもっと早く頼んだら良かったじゃないですか。美人で頭良くて可愛くて。さっきの陽介さんだって、デレデレしてましたよ」


 「会いたくなかったんだよ」


 

 キキーッ。

 目の前にピンクの軽自動車が止まった。


 ウィーン。

 運転席のウィンドウが開く。


 市川……市川睦月だ。

 

 

 「あっ、さっきの弁護士さんだ」

 葛城が頭を下げた。


 すると、睦月は言った。


 「春馬先輩。ありがとうございました。財産管理人の依頼もらえちゃいそうです」

 睦月はピースした。


 「よかったな」


 「それで、いつ結婚してくれるんですか?」

 睦月はニコーっと笑った。



 頭が痛い。

 だから会いたくなかったんだ。


 


 


 

 

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