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見えるんだ。
「やめろ!!」
かなり切羽詰まった状況になりふり構わず僕は大声で叫んだ。
「危ないからそれを下ろせ!!」
「あなたは、、、、誰、、、、?」
僕に気を取られた一瞬の隙を狙いアイスピックを彼女から遠ざけた。
「僕はここの近所に住んでるんだ。
名前はリョウ。
勝手に入って悪かった。
あんたが乗ってたバスに僕も乗ってて。気分悪そうにしてるなーって見てたら、いきなり叫んで降りてったからびっくりして後を追って来たんだ。」
「それだけでここまで追いかけて来たの?」
確かに、、、。見ず知らずの僕がいくら気になるからってバスまで降りてこんな所まで追いかけてくるなんて、おかしいよな。。。
でも変な嘘をついても怪しまれるだけだと思い、仕方なく正直に話した。
「見えるんだ。悲しみが深ければ深いほど濃い青色に見える。あんたはとてもほっとける状態じゃないと思った。だから、、、。」
「ちょっと待って!!あなたも見えるの?!」
"あなたも” と言われた事も驚いたけれど、彼女からさっきまで見えていた濃い青色が薄くなってきたことに僕は心底ホッとしていた。