目の前で見る涙だ
楓さんが部屋から出て行ってしばらく沈黙が続いた
何も言えない…
あんなに慕って…特別な感情がある先輩が、俺のせいでいなくなるんだ
俺が何を言っても白守さんには、イヤな思いをさせるだけ
すると白守美里が静かに口を開いた
「あのね…。柊先輩はずっと『こんな能力無い方がいい』『俺は静かに暮らしたい』って言ってたの…」
俺にもそんなこと言ってた
能力なんて無い方が幸せなんだって
「だからね…いつかはきっと先輩はここを辞めるって思ってた…でもさ…」
俺は白守美里を見る
白守美里の目から涙が一粒こぼれた
「早すぎるよ…うっ…あたしもっと…教えて…もらいたいこと…あるのに…うぅ」
白守美里の目から涙が次々溢れてくる
白守美里にとって、柊さんの存在がどれほど大きいのか、改めて実感させられた
クソっ!俺はどうすることもできねぇ
もっと強くなりてぇ!もっと強くなって…
俺は謝ることもなにもできず
ただ黙っていた
白守美里は両手で顔を涙を拭くと
「ごめんねアキラくん」
と言って病室から出ていった
俺はずっと柊さんと白守さんのことを考えていた
気がつくとまた寝てたのか窓の外は明るくなっていた
コンコンと病室をノックする音が聞こえ
俺が返事をする前にドアを開けて組織の人っぽい男が入ってきた
「相澤明。もう大丈夫そうだからすぐにここから退去するぞ。お前の家まで送っていく」
そう男が言った
ずいぶんはえーな
ゆっくり考えることすらさせてくれねぇ
俺は「チッ」と舌打ちをした
「お前がもってきた荷物はほとんど燃えて残ってない。とりあえず適当に服を施設から持ってきたから、それに今すぐ着替えろ。これからの生活については車の中で説明する」
そう言って服が入っている袋を俺に渡してきた
俺は言われた通り、袋の中から服を取り出し着替えようとすると
「ちょっと待って」
と声が聞こえ、白守美里が病室に入ってきた
「彼はあたしが監視するように言われてるの。勝手に連れてかないで」
「しかしこれは組織からの通達で…」
「あたしもそう昨日言われたの。上に確認してみて。あたしはまだ退院できないからここじゃなきゃ彼を監視できないわよ」
なんか白守さんが大人っぽく見える
柊さんとかといる時と違う
「わ、わかった」
男はそう言って病室を出て行った
「ごめんねアキラくん」
と白守美里が言う
「い、いや…助かったよ。急に退去とか言われたからさ」
「そうじゃなくて…昨日。あたし恥ずかしいとこ見せちゃったからさ」
「………」
「あっ!恥ずかしいとこって裸のことじゃないよ?むしろ裸見たならご褒美でしょ?」
「だ、だから見てねえって」
「ハハハ。ちょっと外の空気吸いに一緒に行こっか」
そう笑顔で言った白守美里に
俺はコクンと頷いた
病室をでると色々白守美里が教えてくれた
ここの病院は組織御用達の病院で
もちろん普通の患者がほとんどだけど、能力関係で事故や怪我をした人はここに来る
警察なども介入できないようになってるみたいで、そんなことを俺に色々教えてくれた
そんな話をしながら病院の広い中庭にでると、日差しが眩しかった
でもその日差しよりも眩しい笑顔で
「んー、気持ちいい。ねっ?アキラくん」
と言った白守美里に、俺は小さく頷いた