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94 厄災 2

インフィは、漆黒のドラゴンを――はるか遥か上空から見下ろしていた。

気配を完全に遮断する特殊な魔法を使い、この高さまで昇ってきたのである。


地上からその姿を見つめていたフィディアは、祈るような気持ちを抑えられなかった。

彼女は、戦いに臨むインフィに、あらかじめ忠告していたのだ。


「あのドラゴンは、あまりにも強すぎる。今のインフィちゃんじゃ……殺されてしまう」


それは、かつて魔王ですら大怪我を負いながら、ようやく退けたという相手だった。

もっとも、当時の魔王は、まだ誕生して間もない時期だったというが――。


その頃、シャリーネはヨパラの世話を任されていた。

インフィがこの漆黒のドラゴンと戦おうとしていることは、彼女には伝えられていなかった。


ヨパラは「お守りなど要らない」と断っていたが、インフィはその言葉を拒絶した。

この地は、強力な魔物がいつ、どこで現れてもおかしくない危険地帯。

相手によっては、たとえシャリーネであっても太刀打ちできない存在が潜んでいるのだ。


極めて危険な場所だった。だがそれゆえに、魔物が次々と現れるこの地は、レベルを上げるには最適でもあった。

勇者でさえ、この場所で一人きりで戦うのは、並大抵のことではない。


遥か上空から見下ろしながら、インフィは短く、ぽつりとつぶやいた。


「……でかい」


漆黒のドラゴンの巨体は、まるでこの空の支配者のように、悠然と舞っていた。

インフィは、魔力の流れを自らの体内で巡らせながら、「魂証」の魔法をその身にまとわせる。

さらに、「元証」を限界まで高めると、その身体は超質量の物質に変化したかのような重みを得ていく。


そして次の瞬間──

インフィの姿は消え、刹那、漆黒のドラゴンの巨体を突き抜け、インフィは地上へと降り立っていた。


だが、それでもなお、漆黒のドラゴンは天を舞っていた。

インフィの体など、あまりにも小さすぎる存在だったのだ。


ドラゴンの腹部に穿たれた穴は、直径およそ三十センチ。

全長一キロを超えるその身体にとっては、人間の感覚でいえば、わずか〇・五ミリの傷にも満たない。


人間でも、脳や心臓を外せば致命傷にはならない傷だ。


魔物──とくにこのような存在には、内臓など存在しない。

ドラゴンは、何かが自分に起きたことを“感じた”かもしれないが、気にする様子もなく、悠々と空を滑っていた。


しかし、インフィはこの“実験”が成功したことで、顔には狂気じみた笑みが浮かんでいた。


狂気の笑みを湛えたまま、悠然と空を舞う漆黒のドラゴンを見上げて、インフィはつぶやく。


「でかすぎだろ……。魔王は、どうやってこんな化け物を倒したんだ?」


そして、小さく息を吐くと、自分に言い聞かせるように続けた。


「あとは、僕の魔力量と……ドラゴンの再生力の勝負になるか」


そう言い残すと、インフィは再び、遥か上空へと跳び上がった。


先ほどの検証結果を踏まえ、インフィは「元証」の力を緻密にコントロールしはじめる。


そして、気合いを込めた一言を叫んだ。


「やってやる!!」


刹那、漆黒のドラゴンの背を突き抜けた──だが、インフィの姿は地面にはなかった。


そう、インフィは漆黒のドラゴンの体内に、直接潜り込んでいたのだった。


しかし、魔物の体内には内臓の代わりに、非常に高濃度の魔素が充満しており、特に高レベルの魔物ほど、その濃度は高くなる。

人間であれば、すぐに魔素に侵食されて命を落とすだろう。


だが、インフィは「魔王の特性」という特殊な体質を持っていたため、魔素に対して非常に高い耐性を備えていた。


それでも、このような無謀な行動は、インフィにとって初めての経験だった。


フィディアは、インフィの作戦を聞いていた──もっとも、それが本当に作戦と呼べるかは疑問だった。

彼女は、心の中で祈っていた。


「インフィちゃん、無事に出てきて。どうして、そんな魔物を倒そうとするの……。早く戻ってきて……」


悠然と飛んでいた漆黒竜が、腹の中に異物が入り込んだことに気づいたようだった。


インフィの周囲の魔素濃度は、急激に上昇しはじめる。


しかし、インフィはその場に崩れ落ちることも、息も絶え絶えになることもなかった。


むしろ、どこか懐かしさを感じるような、落ち着いた表情を浮かべていた。


「すごい濃度だけど、耐えられそうだな」


「真っ暗で、何も見えないな」


「……適当に撃ってみるか」


そう呟くと、インフィは「魔証」と唱え、魔力を最大まで高める。


強力な聖魔法を放ったが、魔素の濃度に押し負けて、魔法は途中で消えてしまった。

ドラゴンはわずかに身をくねらせたが、それだけだった。


「えっ……聖魔法が効かない。レベル差がありすぎたか……」

少し落ち込んだ様子を見せながらも、インフィは炎、水、氷、雷、闇、風、振動、光、回復──あらゆる種類の魔法を次々と試していった。


効果がありそうな魔法もいくつかあったが、魔素の濃度が濃すぎるために、十分な威力が出ない。

やがて、インフィは魔法を一旦やめ、考えを巡らせはじめる。


頭の中で、あらゆる組み合わせを構築しては打ち消し、再び組み直す──それを何度も繰り返していた。


そして、ついに一つの結論にたどり着く。


「この魔素の濃度を下げるしかない」


インフィは、風魔法を放ったとき、一瞬だけ魔素が押しやられるように濃度が下がったことに気づいていたのだった。


インフィは気合いを入れ直し、声を張った。

「やってやる!!」


そう叫ぶと、意識を集中させて魔力を高めていく。

そして、魔力が極限まで達した瞬間──


「魔証!」


さらに続けて、


「天の理、地の理、風の理──豪巻となり、消し飛ばせ!」


インフィの体から膨大な魔力があふれ出し、それは渦を巻くように形を成していった。

やがてそれは、巨大なハリケーンにも匹敵する竜巻へと変貌し、周囲に満ちた魔素を巻き込みながら吹き飛ばしていく。


続けざまに、インフィは次の術式を唱えた。


「魔証!」


そして──


「天の理、海の理、聖の理──豪聖の光となり、消滅させろ!」


その瞬間、インフィの体から眩い魔力が溢れ出し、無数の光の粒子が彼の全身を包み込んでいく。

それらの粒は、目すら焼かれるほどの激しい光を放ち──


次の刹那、インフィを中心に、閃光のような大爆発が広がった。


その一撃は、漆黒のドラゴンの体を大きく抉り、空へと舞い上がる光の粒が、その傷の深さを物語っていた。

おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。

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