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77 ヨパラの覚醒?

朝の淡い光が寮の窓から差し込みはじめたころ、ヨパラは静かに目を覚ました。

ふと視線を向けると、レイヴァンはすでに起きており、無言のままインフィたちの寝顔を見つめていた。


狭い三段ベッドの一番下──そこに、三人がぎゅうぎゅうに詰め込まれるように並んで寝ていた。

インフィが押し潰されるのではないかと心配になるような光景だったが、おそらくふたりは、無意識に浮遊魔法か何かで重さを分散しているのだろう。


かつては、インフィがうらやましいと感じていたヨパラだった。

だが最近では、どこか気の毒に思う気持ちのほうが強くなっていた。


──このふたりの行動は、もはや限りなくストーカーに近い。

それでも、当のインフィが気にしていないのだから、問題とは言えないのかもしれない。


レイヴァンが何かを察したのか、静かに口を開いた。

「フィディア様は、インフィ様を心より慕っておりますので……どうかご理解を」


その声には、どこか諦めにも似た響きがあった。


やがて朝の光が部屋に差し込み始めると、ヨパラはインフィの肩を軽く揺らした。

「朝だぞ、起きろ」


インフィはあくびをひとつこぼしながら、のそりと起き上がる。

彼の表情に、焦りも怒りもない。

──いつものように、あの二人のことも特に気にしていない様子だった。


インフィが目を覚ました瞬間、まるでそれを合図にしたかのように、フィディアとシャリーネの姿がふっと消えた。

──どうやら、起き抜けの冷たい言葉を避けたかったらしい。


そして同じタイミングで、レイヴァンの姿もまた、部屋から消えていた。

どうやら、フィディアが消えると同時に、そのまま強引に連れていかれたらしい。


ヨパラは大きく肩をゆすり、気合いの入った声で言った。

「朝飯を食って、魔法の授業を受けに行くぞ」


インフィは何も言わず、その隣に並ぶ。

二人は並んで、静かに食堂へと歩き出した。


朝の講義が始まる頃、インフィはすでに魔法の制御について、自分なりに感覚を確かめていた。

授業の内容をいちいち聞かなくても、まるで以前から知っていたかのように、自然と頭に入っているようだった。


ヨパラは背筋を伸ばし、黒板を一瞬たりとも見逃すまいと、全身から真剣さを滲ませていた。


──実のところ、ヨパラには高い才能があった。

だが、若い頃の彼はその才能に甘えていた。

それでも能力がずば抜けていたため、魔法を使わずとも高レベルの冒険者になることができていた。


けれど──今のヨパラは、もう昔のままではなかった。


インフィと出会い、異常なまでのレベル上げへの執念、そして何事にも動じず突き進む迷いなき行動力を目の当たりにしたことで、

彼の中に確かな決意が芽生えていた。


「このままでは終われない」

「俺も、やれることをすべてやりきる」


そう、心の底から固く決めていた。


見た目はまだ子どもにしか見えないインフィ。

だが、その存在は──間違いなく、ヨパラの中に眠っていた炎を再び燃え上がらせた。


そしてヨパラは、固く心に誓っていた。

自分の力で、もう一度──魔法使いとして挑戦すると。


魔法学園での生活が、ひと月ほど経った頃──

彼の中で長く眠っていた魔法の才能が、静かに目を覚まし始めていた。


ちょうどその頃、学園では毎月恒例の魔法大会が始まっていた。


大会では安全対策として、選手たちは強力な魔法にも耐えられる特殊な透明の防御膜に包まれていた。

この防御膜は、受けた魔法のダメージに応じて黒く染まる性質を持ち、観客にも戦況がひと目でわかるようになっていた。


体の半分以上が黒く染まるか、あるいは審判の判定によって勝敗が決まる仕組みである。


ヨパラの対戦相手は──初級魔法大会で三連覇を果たしている実力者だった。

その名は学園内でも広く知られており、すでに中級クラスへの昇格も決まっているという。


年齢は二十歳前後のはずだが、背丈はインフィと大差なく、見た目はまるで子どものようだった。

しかし、その小さな体に秘められた魔力は、誰もが一目置くほどのものだった。


試合開始の合図が、会場に鳴り響いた。


相手は、初出場で決勝まで勝ち上がってきたヨパラに対し、強い警戒心を抱いていた。

──それも当然だ。これまでのヨパラの試合は、すべてが圧倒的だった。

一方的な展開に、観客席は何度も静まり返り、そのたびに「何者だ」というざわめきが広がっていたのだ。


一方ヨパラ自身も、「いつの間にか決勝戦まで来てしまった」という驚きを隠しきれず、顔にはわずかな緊張の色が浮かんでいた。


相手はまず様子をうかがうように風魔法を巧みに操り、距離を取りながら攻撃を仕掛けてきた。

だが──ヨパラは動じなかった。

冒険者として数多くの実戦をくぐり抜けてきた彼は、風の流れを読むように身をかわし、次々と魔法を回避していく。


そして、ほんのわずかな間を置いて──ヨパラは一気に間合いを詰めた。


「しめた」と感じた相手は、広範囲の火属性魔法を放った。


だがそのときには、ヨパラの姿はすでに空中にあった。


高く跳び上がったその位置から、ヨパラは雷の魔法を放つ。


相手はとっさに防御魔法を展開し、なんとか直撃を免れたが──

その衝撃で、動きが一瞬鈍った。


その隙を、ヨパラは逃さなかった。

空中からすっと着地したときには、すでに相手の背後を取っていた。

そして、ためらいなく軽めの衝撃魔法を背中に打ち込み、勝負を決めた。


その戦いぶりは、魔法戦というよりも、実戦に近かった。

しかし、ルールに違反していない以上──勝ちは勝ちである。


こうして、ヨパラの完勝で試合は幕を閉じた。


本気を出せば相手に深刻なダメージを与えてしまうかもしれない──

その懸念から、ヨパラはあえて手加減していたようだった。


ヨパラは、自分が勝ったことが信じられなかったのか、観客が総立ちで歓声を上げる中でも、それに応えることなく、自分の両手をじっと見つめていた。


今回の完勝により、ヨパラは明日から中級クラスへ進むことが決まった。


現在のヨパラのレベルは28。

“レベル30──上級冒険者。選ばれた者のみが到達できる領域”に、着実に近づいていた。

その急成長は、魔法の才能の開花にもつながっていた。


とはいえ、魔法の力を一方的に伸ばすだけでなく、総合的な実力を鍛えることの方が、戦闘力の向上には効果的だった。

その点で、ヨパラは着実に、バランスの取れた戦士として成熟しつつあった。


一方、インフィは初戦で敗れてしまった。

試合中も、戦いより魔法の制御にばかり意識が向いており、戦闘が始まったことにすら気づかず、あっさりと敗北していた。


「またやってしまった……」

そう呟きながら、インフィはその場に崩れ落ちていた。


──ある意味、このインフィの集中力も規格外だった。

ひとつのことを始めると、周囲が見えなくなるという欠点。

しかしそれは、裏を返せば──インフィの強さの本質でもあった。


今回の大会は外部観客の観戦も許可されており、フィディアたちも試合を見守っていた。


だが、ヨパラの優勝を心から喜んでいたのは、レイヴァンただ一人。

フィディアとシャリーネは、敗れたインフィをどう慰めるべきか──

そればかりを考えていた。

おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。

理系のじじいの話も読めば暇つぶし程度にはなると思います。

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