7 始まり地
ここで、少年について改めて整理してみよう。
見た目は十歳ほどの少年で、記憶を失った状態で「最果ての地」で目覚めた。その地は巨大な氷龍によって守られており、人は近づくことができない。最初のレベルはゼロで、レベル上げに対して異常なまでに執着する。魔物を倒すとレベルが上がり、倒した魔物には興味を失う。魔物はなぜか少年を襲わなくなる。深いエメラルド色の瞳には、強い意志が宿っている。
無限と思える持久力を持つが、今はレベル2なので6歳程度の力しかない。極寒でも死ぬことはなく、体全体が何か不思議な力で守られている。
なぜ「最果ての地」で目覚めたのか。なぜレベルゼロだったのか。何を成そうとしているのか。それは、まだ誰にも分からなかった。
少年が目を覚ますと、目の前に広がっていたのは、広大で穏やかな草原だった。バオバブのような大きな木々が点在し、低く流れる小川がその脇をそっと横切っている。周囲の風景は、疲れた心と体を癒すように静かで、自然の息吹があふれていた。小さな池には太陽の光が揺らめき、水面がキラキラと輝いていた。
「……もう大丈夫か。ここまで来たら……怖かったけど、少しだけ安心できる」
転がるように山麓へとたどり着き、気づけば数日が過ぎていた。寝る間も惜しんで、氷龍から少しでも遠くへ逃げるため、足をひたすらに進めてきた。その間の恐怖や不安はひどく心に刻まれていたが、それでも今は、少しだけ心が軽くなっていた。
「あ、傷……治ってる。青じみも無い。痛みも感じない……」
身体中にあった傷や痣、筋肉痛がいつの間にかすっかり消えていた。内出血の痣も、引っかき傷も、まるで時間が巻き戻ったかのように完治している。
「うわ……服がボロボロ。ズボン、破れすぎだろ。見えてるし……まあ、いいか」
裂けた服が体にまとわりついていた。ボロボロで穴だらけになったその服は、もはや意味を成していなかった。しかし、少年にとってそれは些細なことに過ぎなかった。心は、ただひたすらレベルを上げることだけで満たされていた。
「……あれ、なんか動いた……うさぎ?」
目の前の草むらで、何かが素早く動いたのを見つけた。心臓が高鳴る。体の奥底から湧き上がる衝動に、少年は自然と体を起こした。
「レベル上げ……来た。やっと、やっとだ」
目の前に現れたのは、一角兎だった。小柄な体で、動きは非常に素早いが、攻撃は単調な角での突きのみ。しかし、その威力はそれほど強くはなかった。
「うわっ、来た! 早すぎる……」
一角兎が一気に少年に向かって突進してきた。頬が引きつる。その兎は真っ黒なサングラスをかけ、傷だらけの顔つきがまるでヤクザのようだったのだ。模様ではあったが、迫力がありすぎた。
「う……怖い。でも、大丈夫だ。怖くない……怖くない」
自分に言い聞かせるように、少年は心を奮い立たせた。だが、現実は厳しかった。反応が遅れ、一角兎の突進に押され、何度も角で突かれてしまった。単純な動きだが、今の力では避けきれなかった。
「くそ……勝てない! 逃げないと!」
身体が重く、逃げる速度では一角兎に敵わなかった。それでも、インフィは必死に走り続けた。何度も角に突かれ、とうとう身体が悲鳴を上げた。
「助けて……」
痛みで動けなくなりかけたその瞬間、一角兎はくるりと向きを変え、元の場所へと戻っていった。縄張りの範囲を超えていたのだろう。
少年はその場に倒れ込み、意識が途切れるように眠りに落ちた。
***
翌朝。
空は黄金色に染まり、バオバブの木が長い影を落としていた。小川のせせらぎが、耳に心地よく響く。
「くそ……また、同じだ……」
昨日の戦いを思い出し、悔しさが込み上げてきた。『戦え』という衝動に駆られ、何の準備もせずに無謀に挑んだ自分が、愚かに思えて仕方なかった。
「武器、防具……必要だ。でも、そんなもの……」
少年は必死に方法を考え、やがて地面を掘り始めた。持久力を使い、手を止めずに土を掘り続ける。何かを作り出そうとしていた。
やがて、一角兎の縄張りへと足を踏み入れる。今度こそ、準備は万端だった。
兎は少年に気づき、跳ねながら突進してくる。
「今だ……逃げろ!」
少年は全速力で走り、後ろから迫る一角兎を振り切る。だが、次第に追いつかれ、お尻を角で突かれる。それも計算のうちだった。
「今だ! 落とし穴!」
素早く横に飛び、地面に仕掛けた落とし穴に一角兎を誘い込む。魔物は勢いよく穴に落ち、ドスンという音と共にその姿が消えた。
「やった……急げ、埋めるんだ」
用意していた草網をかけ、土を被せる。魔物はもがきながらも、すぐに土に埋まった。少年はその上で大きく飛び跳ね、圧死させるように力を込めた。
淡い光の粒がふわりと漂い、少年の体に吸い込まれていく。
「やった……倒せた」
達成感に満ちた笑みを浮かべ、少年は魔物の上で横になり、疲れ果てて深い眠りに落ちた。
夕暮れが訪れると、バオバブの木々は長い影を落とし、柔らかな光が大地を包み込む。風がそよぎ、小川のせせらぎがその音色とともに、まるで心地よいハーモニーを奏でていた。少年のすやすやとした眠りが、自然と調和しているかのように、静かな時が流れていった。
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