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ロリア南東砦の運命

司令官室に案内されたインフィは、詳細な状況説明を受けながら、周辺地図を食い入るように見ていた。


時間が惜しいと言い、インフィは司令官、調査隊長、魔法隊長、物資長、マタギなど、入れ替わり立ち代わり現れる複数の人物から同時に説明を受けた。それに対しても、適宜質問を返していく。まるで、聖徳太子のように。


その質問の的確さに、司令官たちは目を丸くする。初めて会う者たちは皆、驚きの表情を浮かべていた。


そして今度は、司令官たちがインフィの言葉を食い入るように聞いていた。


簡単に状況を整理する。

・この小競り合いは、毎年の恒例行事のように発生している。

・指揮も装備もない信徒たちが、砦を避けて近隣の村落を襲う。それを排除するのが通例。

・だが今年は、なぜか戦略を持って戦いに来た。味方に背中を撃たれぬための決死隊のように。

・対応を見誤り、味方は手痛い損害を受けた。

・敵にも大きな被害が出ているため、しばらくは小競り合いが続くだろう。

・援軍の第二十三神団、三千の兵が到着するのは三、四日後。

・率いるエグズ使徒は残虐非道で知られ、LV40を超えるとされる魔人討伐者。人とは呼べぬ存在。

・本砦の司令官はLV30ほど。上級冒険者にして死ぬほど鍛えた一握りの人材。

・数名の指揮官がLV25前後。中級冒険者。諦めなければ到達できるが、それでも厳しい。


どう考えても勝てる戦いではない。


インフィはすべての説明を聞き終えると目を閉じて思案し、やがて静かに立ち上がった。そして、今回の戦略を話し出す。


話を聞いていた全員が絶句した。本当にそんなことが可能なのか。このような戦い方が現実に実行できるのかと。


司令官が腹を括り、拳で戦略台を叩く。


「俺たちに道は無い。インフィ殿を信じるんだ。皆の者、直に取り掛かれ!」


「魔法隊に手順を説明しろ。調合士にもだ。薬草採取者を集めろ。荷馬車を用意しろ。ありったけの鍋を準備しろ。簡易竈を作れ。火を起こせ!」


インフィはマタギたちと早馬に乗り、敵が進軍すると思われる進路の周辺を駆けていた。常に俯瞰で周辺を注視しながら、魔元素の吹き溜まり、山の状態、尾根の位置、高台、風の向き、天候の予測など、さまざまな情報を確認していく。


そして、わずかな光明を見出していた。


……


「生贄……いや、先行部隊の戦況は」


「はっ。今回は選りすぐりの信徒を突撃させ、敵に多くの被害を与えました。また、信徒たちの死を恐れぬ戦いぶりが敵に恐怖を植え付け、戦意を奪っております。作戦は大成功です」


「信徒の七割が犠牲となりましたが、口減らしとして計画通りです。これにより物資に余裕も生まれ、長期戦も可能です」


「よし、わかった。敵砦の様子はどうだ」


「はっ。斥候の報告によれば、ハーザー軍が援軍として到着しましたが、一目散に退却したとのことです。偽装の可能性はなく、我らに恐れをなしたと見られます。現在、砦からは多量の煙が上がっており、籠城の準備と推察されます」


「敵兵の情報はあるか」


「はっ。主力兵二百、レベルは二十未満。その他、老兵と新兵奴隷が七百。レベル十五未満です。総勢千二百。兵の戦意は失われています」


「他に変わった事などは」


「はっ。敵砦から『インフィ』との合唱があったとのことです。数分で収まりましたが、『インフィ』という者の情報は不明で、現在も調査中であります」


「うむ。誰かを立て、鼓舞に使ったのだろう。ハーザーは戦いの機微を嗅ぎ分けた。これで我が神国の勝利は揺るがぬ。完勝だ」


すべての報告を聞き、第23神団のエグズ使徒は満足げな笑みを浮かべた。


「全軍進撃。目指すはロリア南東砦。一気に蹴散らす!」


こちらの戦力を見せつければ、敵は敗走するだろう。いや、歯向かってくれねば面白みに欠けると、そんなことを考えていた。


第23神団は、鬱蒼とした森の木々をなぎ倒しながら、ロリア南東砦へと最短距離で進軍していく。


……


「戦略補佐官インフィ様。敵23神団がこの砦を目標としているようです。最短距離で進軍しており、三日後の朝には砦に接近します」


「よし、わかった。官職名は無用だ。インフィでよい。戦略Cの動きだな。相手はナメてきている。好都合だ。C戦略を行え。手筈どおりに動け」


あどけない顔のインフィが司令官の椅子に座り、司令官はその横に控えている。椅子に座る姿、指示を出すときの身振り、自信にあふれた言葉。どれもが、老齢の指揮官や軍師を思わせる立ち振る舞いだった。中年の司令官も、この少年に思わず甲斐甲斐しく行動してしまい、ふと、その幼い顔を見て苦笑いを浮かべている。


その夜は新月であり、ロリア南東砦は深い闇に包まれていた。


「よし、今だ。逃げるぞ。こんな負け戦……静かに。気づかれるな」


なんと、闇夜に乗じて兵士たちが逃げ出していた。その中には正規兵、さらには上官と思しき者までが率先して逃げ出している。


「逃亡者だ! くそ、逃がすな! 逃亡する者は殺すぞ、逃げるな!」


砦の中が騒然となっていく。鳴り響く警笛。争う物音。罵詈雑言。そして、ついには――


「駄目だ……くそ、俺たちも逃げるぞ!」


ほとんどの兵が逃げ出してしまった。緊迫した兵士が司令官室へと駆け込む。


「インフィ様! 兵が逃げています。数が多く、どうすればよいでしょうか……」


インフィの顔に苦悩の表情が浮かぶ。そして、いつもの小声ではなく、なぜか声を張って叫んだ。


「くそっ……なんてことだ! こんなはずじゃなかったのに! 困った……どうすればいい!」


インフィは、人の心の弱さを見誤ったのだろうか。あの自信に満ちた表情は消え、困惑が露わになっていた。計画は、まるで薄氷のように崩れ去ろうとしていた。



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日本はかわらないと、10年後にはハイパーインフレが始まります。

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営利目的でなく、将来の日本を憂いているだけです。

じじいが頑張って書いてはいるのですが、広まりそうにないのでご協力お願いします。

短編、これを広めてください(日本の将来のため)。要旨だけです。読まれてない方は読んでください。これを広めるために書いている小説です。

ChatGPT plusの使い方は、短編にまとめたのでそちらで確認してください。無料版でも応用できると思います。

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