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11 ウルラン高原の恐怖

鼓動が激しく高鳴り、足が竦む。口の中が乾き、全身が緊張に包まれていく。


「いる。必ず、何かがいる」


少年は身を低くし、五感すべてを研ぎ澄ませた。


見た目は十歳だが、レベル4――八歳程度の力しか持たぬ少年とは思えぬ動きで、気配を完璧に殺している。


ふいに、風が運んできた異質な匂い。


普通の人間では気づかないほど微かなそれに、少年の目が鋭く光った。


視線をそちらに向けた瞬間、鼓動がさらに高鳴る。


「……死ぬかもしれない」


その予感が、確かにあった。


現れたのは、銀色の体毛を持ち、隆起した筋肉が日差しに輝く、見惚れるほど美しい――そして、圧倒的な力を宿した存在。


この高原の覇者、魔物・オオカミラー。レベル20の犬型魔物だった。


中級冒険者なら一人で倒せる相手だが、レベル4の少年には成す術がない。


皮の鎧など紙同然。ランク3の短剣では毛を貫くことすら叶わない。一撃で命を失う相手だった。


体に粘りつくような汗が全身からにじみ出る。


少年は全速で走り出した。それでも一気に距離を詰められていた。


振り向く余裕はない。ただ、無駄のない動きで、一歩でも遠くへ――


だが、飛びかかる気配。終わったか――そう思った瞬間、少年の姿はそこにはなかった。


瞬間移動ではない。彼が目指していたのは、モグランたちが掘った落とし穴だったのだ。


オオカミラーはその巨体ゆえに穴に落ちきれず、首だけが穴から覗いている。鋭い視線が、少年を睨みつけていた。


少年は息を呑み、足を止めた。落ち着いて周囲を見渡すと、目の前にはモグランの気配が密集している。


モグランとの戦いを覚悟したが、何か様子がおかしい。


ボスのモグラーが必死に髭を震わせ指示を出しているが、モグランたちは混乱していた。


少年の中にも、なぜか戦意が湧かない。


イラついたように、ボスが単身で迫ってくる。


「冷静になれ。ここで無駄に戦えば、体力を削られるだけだ」


少年はそう判断し、フェイントでモグラーの動きを外し、横をすり抜けた。


美しいほどに、流れるような回避――舞うような身のこなしだった。


そのまま横穴へと入り、迷路のような洞穴を這い進み、より遠い出口を目指す。


出口から出ると、迷うことなく即座に走り出した。背後にはオオカミラーの怒声が響き渡り、迫ってくる気配がある。


もはや俯瞰も冷静な判断も消え失せていた。足は震え、呼吸は乱れ、胸の奥が焼けつくように痛んでいる。ただ、“逃げろ”という本能だけが、恐怖と絶望を飲み込みながら、身体を突き動かしていた。


何度、落とし穴へ飛び込んで逃げ延びたか分からない。それでも、オオカミラーの怒りと追跡は止まらない。


少年の持久力がなければ、とっくに終わっていただろう。それほど、激しい追走だった。


ついに――少年は、最後の力を振り絞り、大きく跳躍した。


眼前にあるのは、空。


「……飛び降りるしかない!」


眼下には深い谷。高さは百メートルを超えていた。


少年は咄嗟に身体を丸め、水面へと突っ込む。


だが、その衝撃は強く、意識が一気に遠のいていく。


水に沈み、呼吸ができず、パニックになり、水が肺に流れ込む。


やがて、完全に意識が途切れ――


 ……


常人であれば、とっくに命は尽きていただろう。

だが、その身体が、ほんのわずかに震えた――微かに動いた指先、かすかな吐息。

川辺には、安らかな寝息が静かに響いていた。


轟々と流れる水音、カサカサと沢蟹が這う音、羽音だけを残して飛び去る鳥たち――

自然の調べが、穏やかな調和となって、命の鼓動と静かに重なっていた。

おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。

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