10 ウルラン高原の戦い
朝の澄んだ空気が頬を撫で、遠くの山並みが淡く霞んで見える中、少年は西へ向かって力強く歩を進めていた。草原の上には朝露が残り、陽の光がきらめいている。小さな野鳥のさえずりが響き渡り、その穏やかな音色に包まれながら、少年は黙々と進み続けていた。
ウルラン高原は広大だった。何日も歩き続けているのに、町の気配はまったくない。
少年は、たまに姿を見せる一角兎にちらりと目を向けるが、互いに無関心だった。かつて命を賭して戦ったとは思えぬほど、そこには穏やかな空気が流れていた。
レベルはすでに3に到達していた。短剣はランク3に強化され、刃先は鋭さを増し、敵を切り裂く感触が明確に伝わるほどだった。防具もランク2となり、上質な皮が肩から足元までしっかりと体を包み込んでいた。
草むらがざわめいた瞬間、少年は走り出し、現れた魔物を素早く仕留めた。レベル4の魔物であっても、彼の今の装備と力では数分で倒せる。たまに押されることもあったが、勝利に揺るぎはない。
このあたりにいる魔物は、すべてレベル4止まりだった。その中に、モグランというモグラ型の魔物もいた。レベル4の中でも特に弱い部類に属するが、唯一の厄介な点は穴に潜ってすぐに姿をくらますことだった。
だから少年は、モグランを見つけたら、音を立てずに背後から忍び寄り、一撃で仕留めるようにしていた。
ある日、彼はまたモグランを見つけ、いつものように注意深く近づいていた。だが、次の瞬間、足にふっと浮遊感が走った。
「うわっ、落ちるっ!」
モグランの穴に落ちてしまったのだ。
真下に真っ逆さま。数メートルほどの高さではあったが、少年は無傷だった。
落ちた先は広い洞窟。頭上にはぽっかりと少年が落ちた穴から、薄明かりが差し込んでいた。
ふと、気配を感じ、辺りを見渡すと――
蠢く影。数十体のモグランがそこにいた。
後ろは壁しかない。モグランたちは、少年の前に立ちはだかっている。
ふと目をやると、ボスの背後から淡い光が差し込んでいた。そこには明らかに出口があった。
この絶望的な状況にもかかわらず、少年の口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。なぜか、感覚が鋭く冴えていくのを自分でもはっきりと感じていた。
モグランたちの動きはいつもと違い、整然としていた。指示を出しているのは、あのボスなのかもしれない。
部下のモグランたちが少年を取り囲もうとじわじわ迫ってくる。
だが、少年はすでに右の壁沿いに走り出していた。魔物たちは攻撃されなかったことに戸惑い、囲む動作が一瞬遅れる。
指揮官のモグラーもまた、困惑したように長い髭を不規則に動かしていた。
壁を使うように走り抜け、最初の波をかわすと、次に控える魔物たちが前方から迫ってくる。
少年はそれを見極め、絶妙なタイミングで飛び上がった。レベル3の、15歳程度の身体能力とは思えぬ動き。体幹、バランス、タイミング――すべてが完璧に揃っており、美しく躍動するその姿は、まるで舞うようだった。
モグラーの髭が激しく動く。それに応じるようにモグランたちが出口をふさぐように動き出した。
だが、少年はもうボスのモグラーのすぐそばまで来ていた。
少年の顔には笑みが浮かんだままだった。まるで、この極限の状況そのものを楽しんでいるかのように。
逃げ切るのは不可能。倒すしかない――少年の目がそう語っていた。
不思議と、冷静に状況が見えていた。何が悪手で、何が好手か。まるで幾多の戦場を生き抜いた老練な武人のごとく、己と敵、地形までも俯瞰し、神懸かったように体を動かしていく。
モグラーは、少年を飛び越えさせまいと二本足で立ち上がり、立ちふさがろうとした。
その瞬間、少年は足元にいたモグランを思いきり蹴り飛ばした。
モグランは転がりながら、ちょうどボスの足元へと滑り込む。
バランスを崩していたモグラーはそれを踏みつけてしまい、重心を失って前のめりに倒れ込んでいく。
少年はすでに構えていた。片膝をついた姿勢で、全身をバネのように使い――
倒れ込んできたボスの喉元へ、鋭く短剣を突き上げた。
その一撃は、モグラーの体重と少年の渾身の力が重なった、最高のタイミングによるカウンターとなった。
「グバァァァァアアアッ!!」
倒れ込んでくるモグラーを躱し、一目散に出口へと進み、振り返ることもなく走り続ける。
モグラーの悲鳴は続いている。指揮を失ったモグランたちも、もはや追っては来なかった。
そのまま、出口まで這い上がると、眩しい陽光と爽やかな風が少年を包んだ。さっきまでの死闘が嘘のように、大地は穏やかで、空はどこまでも青かった。体の力が抜け、思わず深く息を吐いた。
また、頭の中に、あの聞き慣れた音が響き渡る。
「テッテレテッテッテー」
「レベル4……だ」
少年の身体能力は8歳児まで上がった。
喜びの声を上げようとしたが、何か背筋が凍るような危険を感じ、周囲を注意深く伺った。
草花は静かに揺れ、爽やかな風がそっと少年の頬を撫でていく――それは、彼の中の恐怖とはまるで別の世界にあるような、あまりにも優しい自然の鼓動だった。
おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。




