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第98話 ヴィラーリヒ殿下の婚姻

風薫る7月のはじめ。


暑い夏に、さらに熱くなるイベント。

多くの“思惑”を内包しつつ行われる運びとなっていた。


昨年の秋に打診された東方の強大国、イスタール帝国からの婚姻の申し込み。


かの国の第一皇子、ヴィラーリヒ殿下と。

我がマイハルド王国第一王女マリナス・ニラリス・マイハルド殿下。


その婚姻の儀が行われる運びとなっていた。


正直異例のスピード婚。


通常国家をまたぐ王族同士の婚姻には多くの調査や下調べが必要だ。


ましてや、他国の血を一切受け入れたことのないイスタール帝国が相手となれば——

最低でも数年の準備期間が必要なはずなのだが…


何と当事者であるヴィラーリヒ殿下。

完全なる“政略結婚”のはずがマリナス様に熱を上げてしまっていた。


惚れたのだ。

あの堅物で頭の切れる御仁が。


僅か19歳の女性に手玉にとられていた。



正直そんな情報。

いくら大公爵と言うとんでもない爵位だとしても通常は知り得ない。


なぜ知っているかと言うと…



※※※※※



6月の中旬。

相変わらずじめじめした日が続き、カエルの合唱がうるさい…そんなころ。


僕宛てにアーティーファクトによる通信が入ったことが事の発端だった。


当然いろいろな事情を抱えている僕。

最初は必ずサルツさんが対応することになっていた。


困り顔のサルツさんが僕の部屋をノックし、ついにその情報が僕にもたらされた。


『ライト、すまん。…頼みがある』

「…うえ?ヴィラさん?いえ、ヴィラーリヒ殿下…どうされたのですか」


明らかに顔色の悪いヴィラさん。

僕の背筋に嫌な汗が流れた。


『すまん…取り敢えず…私の部屋に来ることは可能か?』

「まあ。…戦闘系でしょうか?」

『いや…その…』


ん?

珍しい殿下の反応に、僕は思わずいぶかしげな目を向けてしまった。


『コホン。スマンが通信では無理だ。頼む。一度でいい。…俺のわがままを聞いてほしい』


当然僕の横にはティアがいるのだが。

色々察する能力に長けているティアでさえ、頭の上にはクエスチョンマークが浮いていた。


取り敢えず今僕にはこれと言った案件はない。


実は全宇宙のダンジョンを掌握した状況の僕には、大量の情報が流れ来るのだけれど。


何気に優秀な元ダンジョンコア『セイ』だったヴィエレッタが、超絶スキルでその情報をまとめてくれている今、焦る必要がなくなっていた。


何しろ動向が筒抜け。

万全の準備を最適なタイミングでできる算段が立っていたのだ。


擬似ダンジョンの方も取り敢えずはミリに丸投げ。

さらには新たに割譲された僕の領地であるハイネルド地方には『正義の男』カイザルドさんが張り切っている。


問題なく動ける状況ではあった。


「えっと。よくわかりませんが僕に相談、と言う事でいいのでしょうか」

『うむ。すまぬ。…助けてくれライト』


何故か今度は青い顔になるヴィラさん。

これはただ事ではない、そう思った僕はヴィラさんに問いかけた。


「あの。もし重要案件であるなら…ロキラス公爵も必要でしょうか」


僕は詳しくは知らないけど。

どうやらヴィラさんとロキラス公爵。


メチャクチャ仲良くなったようだった。


『い、いや。すまぬがロキラス殿に聞かれたくない案件なのだ…言っておくが国家間の内容ではないのだが…下手をすれば帝国が滅ぶかもしれぬ案件だ』


「っ!?…帝国が滅ぶ?…ずいぶん物騒な話ですね…しかも国家間の話ではない?…確かに直接する話のようです。分かりました。ティア、えっと女神さまは同行しますがよろしいですね?」


『すまぬ。結界は解除してある。すぐ来られるだろうか』

「ええ。少し整えたら向かいます。数分後にはお邪魔いたします」

『恩に着る』


そして僕はあらためて思い知る。


恋する女の子の、その純情――そして恐ろしさを。



※※※※※



数分後。

僕はティアを伴い殿下の部屋へと転移したのだけれど。


なぜかティアに対してジト目を向けてくるマリナス様がいらっしゃるのだけれど?


「むう。また女…ヴィラーリヒ様?これはどういうことですの?」

「い、いや。…コホン。女神ティアリーナ様だぞ?その物言いは…不敬では?」


ヴィラさんの言葉に頬を膨らますマリナス様。

うん。

とっても可愛いのだけれど…


「コホン。お久しぶりですわねマリナス」

「……はい。……あ、あの」

「…なんでしょう」

「…女神さまは…その。ヴィラーリヒ様のこと好きなのですか?」


えっと。

マリナス様?


完全に恋する乙女の瞳になってますけど?

ていうか知ってますよね?

ティアは僕の婚約者だってこと。


「あ、あの。マリナス様?」

「…ハイ。…ライト大公爵様」


さらにヴィラさんの腕を抱きしめ、僕に対しても何故か怪訝な表情を向けてきた。


「コホン。ご承知ですよね?ティアは、女神ティアリーナは僕の婚約者ですよ?」

「…でも…女の子です」

「……はい?」


すると大きく息を吸い、きっぱりと言い放った。


「ヴィラーリヒ様は素敵な男性です…きっと世界中の女の子が憧れる男性。女神様とて惚れてしまうではありませんか。嫌です。ヴィラーリヒ様は…わたくしだけの男性なのです」


あー。

うん。


これやばい状況ですね。

そっと視線を向けると。


ヴィラさん真っ赤に顔を染めマリナス様を見てるし?


…これもう手遅れじゃね?


えっと。


何となく察してしまったが。

取り敢えず僕は用件を聞くことにした。


「コホン。それで殿下。いったいどんな用事なのでしょう?」

「うあ、そ、その。…コホン。…『翡翠の涙』…ご存じだろうか」


翡翠の涙。

この世界で流通している宝石の中で、“いちに”を争う超高級品の宝石だ。


特定のダンジョンで採取できるのだが…

そこにはかなりの高レベルの魔物が生息していた。


「ええ。知ってはいますが…それが?」

「うむ。我が妻となるマリナス。まさに天上の美しさ…彼女にプレゼントしたいのだ」


目を輝かせ、まるで少年のようにうっとりしているヴィラーリヒ殿下。

その言葉に部屋の奥の方で控えていた扇夢太がため息をつく。


「ライト様久しぶり」

「うん。扇さんも元気だった?」


彼、扇夢太。


僕と同じ地球からの転生者の一人だ。

多少時間のずれのある彼等だが、どうやらしっかり仕事はしているようだ。


「ずっとこの調子で…実は執務も滞っているんだよ。何しろ今までの殿下はあり得ないほど優秀だったんだけど…いわゆる…」


なぜか困ったように声を潜め、僕に耳打ちする扇。


「…色ボケ状態なんだ…何とかしてください」


はあ。


まあ。


気持ちは分かんなくもないけどね?


これが“帝国崩壊”につながる案件?


僕はなぜか、心の中で大きくため息をついていたんだ。


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