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第93話 迫りくる脅威

女神ティアリーナが守り、ライトが魔力により包み込んだ惑星ミラリルス。


そこから気が遠くなるほど離れた惑星の居城。


絶対者にして創世神。

己の名を『リュガリール・デギス・グイダ・フィリネリイイダルグ』と称したその男は、報告に眉をひとつ動かした。


「なんだと…それは誠であろうな」

「はっ。御身に誓って」


先行し調査に当たっていた眷属でもあり配下でもあり。

そして“欲を満たす道具”でもある闇の女神『フェレネルト』


それとの通信、と言うか接続が断ち切られていた。


「ふん。…第三銀河の方はどうなっている」

「はっ。凋落は順調です。スケジュールにコンマ03の遅れはございますが…誤差の範囲かと」


すっと手を虚空に掲げ何事か呟くリュガリール。


映し出されるビジョン。

確かに何かしらの妨害ようで確認の難しい状況だった。


「…そうはいっても女神。人知を超える存在…捨て置け」

「御意」


広大な宇宙。

その半分を掌握せし絶対者。


すでに先ほどの報告のことなど気にも留めていなかった。

何より彼は創造主だ。


もし役に立たぬのなら新たに創造すればいい。


だが闇の女神は彼の『お気に入り』ではあったのだ。

思い起こされる幾つもの情事。


ふっと思い浮かべ、リュガリールはそっとつぶやく。


「ふん。奴には良い薬であろう」


彼以外普段は立ち入りを許されないフロア。

そのつぶやきを聞く者はいなかった。



※※※※※



「だあー、くそがっ!!…ひい、ひいいっ!?ぶべら?!!」


擬似ダンジョン64階層。


快進撃を続けていた『自称勇者』率いるザガルード帝国の冒険者パーティーの最後の一人、勇者カイザルドがハイマスター、いわゆる上位のニンジャ系統のモンスターによって首を刎ねられていた。


光の粒子になり消えていく6人の男性たち。

それを見届けたハイマスターが溶けるように消えていく。


(…兵どもの夢の後…か)


僕はその様子をモニター室で観戦していた。


「ふむ。どうもそ奴等、マスターの言う『異星の生物』のようじゃな。…どうする?あるじ様よ」

「うん?でもレベル130くらいだよね。放置でいいとは思うけど…一応話だけは聞いておくか」


相変わらず僕は擬似ダンジョン関係で忙しい。


周知され早半年。

数多くの実力者が訪れる僕の擬似ダンジョン。


当初の目論見通り、多くの異星の物たちが訪れていた。

そのほとんどは記憶すらなく。


一部記憶が戻り悪さをしようと画策していたものについては悉く処理済みだ。


えっと。


字面は悪いけど…

別に僕が直接手を下しているわけじゃないからね?


つまりはダンジョンで死んだ場合元に戻る術式を切断するんだよね。

そうするとあーら不思議。


意識のない本体、簡単に拘束できちゃうんだよね。


その後は王国が誇る魔術師団の出番。

最近ではニニャが所属する魔術研究院にも協力を依頼していた。


情報の洗い出し。

魔力装置や魔術による脳の可視化。


まあ。


当然だけど酷い後遺症、そして命の危険が付きまとうのだけれど。

悪いけど僕は博愛主義者ではない。


良からぬことを考え、そして実行に移すであろう脅威。

その芽を摘むことに、僕には罪悪感は存在していなかった。



※※※※※



擬似ダンジョン特別尋問室。


まあ。

僕が勝手にそう呼んでいるだけなのだけれど。


何はともあれ、今この部屋には先ほど全滅したパーティーの自称勇者カイザルドとその仲間2名、合計3名が不安げな表情を浮かべ僕に視線を向けていた。


「いらっしゃい。カイザルドさん。あと他のお二方も」

「な、な…き、君はライト大公爵?」

「そうだね。僕はライトだ。…ねえカイザルドさん。あなたは何者なの?」


僕の問いかけに、ごくりとつばを飲み込むカイザルド。

そして諦めたように僕に視線を向ける。


「何者って…お、俺はザガルード帝国の…はあ。分かりました。お話しします。でもこの二人は?…こいつらはザガルードの城下町で知り合ったんだが…」


挙動不審になる二人。

いきなり土下座の体勢になった。


「すみませんライト大公爵様…実は…このダンジョンに入ってから…変な記憶が…俺、四つん這いで…うう…」

「お、俺もです。知らない場所でコイツと二人、何故か四つん這いだった気がします」


…四つん這い?

それってもしかして…


「ねえ君たち二人はさ、その時の記憶ってしっかりあるの?」

「い、いえ。…ただここではない場所にいたという感覚だけです」

「わ、私も。…でも、違和感?ずっとあったそれが…ここにきて急に…」


もしかしてリョダの仲間かもしれない。

僕は以前付与していたのに、『すっかり忘れていた』念話でリョダにつなぐ。


(ねえリョダ、今良いかな)


『はっ。問題ありません』


ははっ。

相変わらずリョダは真面目だね。


(今から少し魔力送るからさ…もしそうなら教えてね?)


『まさか?我が同胞でしょうか』


(うん。分かんないんだよ。………ふう。……どうかな?)


暫く固まるリョダ。

うん?


違うのかな?


『ライト様。間違いありません。我が同胞、しかもきっと洗脳はされずに巻き込まれて死んだ者達かと』


ふわ?

それって…転生したってこと?


確かにリョダたちは改造されて連れて来られていた。

でも多くの転生者がいるこの世界。

リョダたちの星から転生したとしても不思議ではない。


『きっと彼等は、この星に対する嫌悪感や嗜虐的な想いはないでしょう。ですがこの魔力、恐らく記憶は戻るはずです。差し支えなければ…私が責任もって、ライト様のしもべとなるべく教育させていただきたい』


えっと。

しもべ?


はあ。


まあいっか。


「ねえ君たちはさ、何か目的とかあるのかな」


「いえ、特には…ただ…何か忘れているような、そう言う強迫観念みたいなものはあります」

「私も…同じく」


やっぱり。

精神に齟齬が出始めている。

これはリョダに丸投げしよう。


(リョダ。後で彼ら二人送るからさ、お願いできる?)


『はっ。勅命、しかと』


うん。

これで二人は問題ないね。


後は…

目を丸くして一部始終を聞いていた、自称勇者のカイザルトさん、だね。


あなたはいったいどんな記憶、見せてくれるのかな?



僕は大きく息を吐き出していた。



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