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第92話 大公爵への叙爵と第3王女との顔合わせ

『ライト・ソガ・ガルデス侯爵。ご入場』


アナウンスとともに開かれる『謁見の間』の重厚なドア。

僕は諦めの感情を他の人にバレないように、笑顔を張り付け歩を進めていた。


両サイドに並ぶわが国の貴族たち。

すでに何度目になるか『数えるのをやめた僕』は真っすぐに陛下に視線を向けた。


やがてたどり着く定位置、陛下の御前3メートル。

僕は片膝をつき、臣下の礼をとる。


「わが偉大なる王国の大陽である陛下にご挨拶申し上げる。此度は過分な報奨、まことにありがたき幸せにてございます」


まあね。

こういうの好きではないのだけれど。


従わないわけにはいかないよね。


何しろ僕は年に不相応な莫大な権利とお金、そして地位をすでに得ている。

正直参列する重鎮の中には、僕に対し暗鬱な魔力を向けているものがいるくらいだ。


「ふむ。面を上げよ」

「はっ」


「直答を許す。何か言う事はあるか?」

「御意に従いますれば」

「ふむ」


一連の流れ。

まあ貴族にとっては“通過儀礼”みたいなものだね。


そして宰相が功績をつらつらと口にする。


「この度ライト・ソガ・ガルデス卿は陛下の孫であり、ロキラス公爵家の長女シャルルを陰謀より守った功績があげられる。なにより……」


(長いな?!…早く終わんないかな)


正直僕は内容を知っている。

だから途中から聞くのをやめていたんだけど…



やっぱり僕は迂闊だったんだ。


「おおっ」

「なんと?」

「そのような…」


はいはい。

いつもの驚愕ね。


そんな風に聞き流していた僕。

突然陛下に問いかけられた。


「ライトよ」

「…はっ」


「そう言う事でよいのだな?」

「…はっ」


(そういう事?…えっ?…こんなの事前に聞いていないのだけれど?…何か聞き落とした?)


突然背中に搔きまくる、いやな冷たい汗。

僕は恐る恐る陛下の顔を見た。


僕と目が合うと、やたらといい笑顔を向ける陛下。

思わず身震いしてしまう。


「聞いたな皆の者。これにてライト・ソガ・ガルデスには我が国最高位である大公爵の爵位を叙爵する。つまりライトは今の瞬間より、この国の王である私に唯一対等に話の出来る存在。ゆめゆめ忘れるな」


「はっ。御意に」


跪き、賛同の意を表明する重鎮の皆さん。

なぜかやれやれという表情を浮かべているロキラス公爵?


え?

ええっ?


大公爵?


聞いてませんけど?!!


「さらには此度結ばれた、我が娘、第3王女であるリュイネとの婚約、そして我が孫シャルルとの婚約、正式なものであると認めよう。異論のあるものはこの場で申せ」


えっ?

ええ~?!


第3王女のリュイネはともかく…

何でシャルルとの婚約まで?


すでに僕はパニックに陥っていたんだ。


「さらに大公爵であるライトには、王宮の横のビザイド宮を与え、領地としてハイネルド地方を割譲する。報奨金として白金貨5000枚、目録を後で宰相より受け取るように。以上」


「…はっ。ありがたき幸せ」

「より一層の忠心、期待しておるぞ?」

「……御意」


やられた。

完全にはめられた。


ていうか何?

大公爵に宮殿?

ハイネルド地方?


うう、僕のスローライフ…


風前の灯になっていた。



※※※※※



既にフラフラの僕は、控室で待っていたサルツさんに丸投げし、寮へと転移して行ったんだ。


気付けば。

僕にはすでに、11名の婚約者が正式に認められていた。



※※※※※



一度帰った僕なのだけれど。

サルツさんからの通信で、また僕は王宮の一室にいた。


実は先ほど言われた婚約者である第3王女。

面通しが予定されていたのだった。


確か第3王女のリュイネは今8歳。

僕の二つ下、シャルルの一つ下だ。


言っておくが僕は幼女には反応しない。

しないったらしない。


ここは譲れないんだ。


「ライト様…また盛大にやらかしましたね…ビザイド宮殿と言えば…いまだかつて公開すらされていない最上級の宮殿です。…むしろ王宮より豪華かと」


「…マジですか」


「それにハイネルド地方ですか…この国最大の面積を誇る『我が国の食糧庫』ともいえる生命線になる、小麦を生産する農業特化の領地ですね。ダンジョンもありますし、何より希少金属の産出される鉱山。…陛下、本気でいずれライト様に王位まで押し付ける気じゃないですか?」


「…勘弁してください」


もう笑うしかない。

僕はこれで名実ともにこの国のトップに上り詰めていた。


実は大公爵、今まで叙爵した記録は数百年前に現れたとされる『勇者』のみだ。


まあ。

なったものは仕方がないので。


こうなったらすべての力を有効活用しようと、この時僕は思っていたんだ。


コンコン。


そんな時部屋がノックされる。

いよいよ第3王女、リュイネとの顔合わせだ。


「どうぞ」


僕の代わりに返事をし、ドアを開け招き入れてくれるサルツさん。

何気に優秀な彼には本当に頭が上がらない。


「失礼いたしますわ」


現れた第3王女。

うん。

確かに可愛い。


「お初にお目にかかります。リュイネ・ニラリス・マイハルドでございます。以後お見知りおきを」


さすがは王女。

美しいカーテシーに僕は思わず見とれていた。


「コホン。僕はライト・ソガ・ガルデスです。えっと大公爵?です。…よろしくねリュイネ」


カーテシーを解き、僕を見つめるリュイネ。

そして花がほころぶような、魅力的な笑顔を僕に向ける。


「はあ♡ライト様…お慕い申しております♡」


ハハハ、ハ。

うん。


どうしてか知らないけど。

この子既に目がハートだ。


僕は背中に寒いものを感じていたんだ。


さらにその数分後。

何故かロキラス公爵に連れられシャルルまでもが乱入。


いきなり僕に抱き着き、全く育ってない胸を僕に押し付けてきた。


「ライト様♡んんー♡」


いきなり口を突き出すシャルル。

もちろんキスなんてしないよ?!


「まあ。シャルルお姉さま。…えっと♡…わたくしも…んん―♡」



カオスだ。


カオスが広がっていた。


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