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第91話 シャルル旋風

良く晴れ渡った気持のよい朝。

遠い山々の新緑が目に美しい。


今日は学園の入学式の日だ。


僕たちが学園に来てもう1年。

早いものだ。


因みに9歳になった僕の弟ルードリッヒ。

ルードは正式に辺境伯家の跡取りとして、学園よりも領地経営の勉強のため父上と一緒に行動することにしていた。


取り敢えずルードは中等部からの入学予定だ。


ルードもすごく優秀なんだよね。

洗礼の儀式で『領主の魂』と言う珍しいスキルを得ていた。


もちろん魔術も2系統で第7位階までの才能。

そして剣豪と言う、剣聖に継ぐスキル。


我が弟ながら、まさにチートだ。


そんな感傷にふけっていた僕だけど…



※※※※※



「ふふっ。ライト様、かっこいいです♡」

「うう。なんか着慣れないから…ねえティア…派手過ぎじゃない?」


入学式にあたって、僕はまだ2年なのに在校生代表挨拶を任されたんだよね。

なので式典用の、特別にあしらわれた制服を着用しているのだけれど…


「当然よ。ライトの学力は中等部レベルでも断トツの一位なのよ?むしろ高等部でも一位でしょ」


目を輝かせ僕をうっとり見つめそんなことを言うキャルン姉さま。

なぜかココナも目を輝かせているし?


確かに僕は10歳だけど。

とんでもない長い経験があるからね。


元々地球では、一応『国立大』を卒業していた僕だ。

出来ないわけにはいかない。


「はあ。さすがライト様。…お似合いですよ」

「サルツ兄さんまで…」


なぜか目に涙を浮かべ、喜んでいるけど。


うう、マジで恥ずかしい。

サルツ兄さん、『感動しい』のところ、あるんだよね。


まあ。

せっかくなので。


イベント、楽しみますかね。


なんだかんだ言っても今の僕の生活はすべて初見だ。

何より前の世界の時には間違えた僕。


もうヴィエレッタのようなひどい目に、誰も合わせる気はないんだ。

僕は一人、気合を入れていた。



※※※※※



多くの新入生と従者、親御さんたち。


講堂は『びしっとした格好』の皆さまで埋め尽くされていた。


実は僕の擬似ダンジョンの噂が広まり、このマイハルド王国への移民の申請、とんでもない事になっているんだよね。


なので今回の幼少部。

僕たちを上回る、320名がピカピカの制服に包まれ参列していました。


うんうん。


初々しいね。


そして厳かに始まる入学式。


要人や国王代理の挨拶へ経て、いよいよ学園長先生の挨拶。

昨年はすっごく長かったけど…



「…えーですから…という訳で―…」


やっぱりか。

相変わらず長い、学園長レイダニースさんの挨拶。


…もしかして。


これって伝統?



僕は遠い目をし、そんなことを思っていた。


…パチパチパチ…パチ…


おいおい。

何か寂しいな!?


ものすごーく長い学園長先生の挨拶が終わり、いよいよ在校生代表挨拶の順番だ。

僕は名を呼ばれ、壇上へと歩を進めた。


ざわめく新入生とその親御さんたち。

まあ。


僕は今ちょっとした有名人だ。

苦笑いを隠しつつも僕はにっこりとほほ笑んだ。


「きゃあああああああ――――――――♡」

「ライト様よ――――♡」

「可愛い――――♡」


うん。

まあ。


途端に沸く黄色い声。

慣れたとはいえちょっと照れる。


余りの黄色い声援と、興奮しすぎて倒れる生徒が続出。

進行が一回停まる騒ぎになりましたが。


どうにか無事再開となりました。


「皆さま、ご入学おめでとうございます……えー……」


取り敢えず、あたり触りのない事を宣った僕の在校生代表挨拶。


季節の挨拶に来賓へのお礼、そして保護者への祝いの言葉…

…なんかおっさん臭い?


コホン。

一応擬似ダンジョンの責任者としても、一言付け加えておきました。


何しろ今回、新入生を始め生徒が増えた一番の理由。


間違いなくそれは。

擬似ダンジョンが『カリキュラムに含まれている』ことが原因だった。


という訳で。

僕のお勤めはどうにか終了しました。


無事挨拶を終え、席に戻った僕。

なぜかとんでもない視線が先ほどから注がれていたのだけれど…


この魔力…もしかして…


『続きましては…今年の首席入学、シャルル・イラド・マイハルド』

「はいっ!」


元気よく手を上げ、壇上に向け歩き出す少女。

美しい金髪に青い瞳。


高貴な雰囲気を纏う美少女。


(…ん?…シャルル…マイハルド?…あれ、この子って…)


そんな様子をニコニコ見ていた僕。

突然危機感知が仕事をする。


背筋に冷たいものが噴き出した?!


「コホン。わたくしシャルル・イラド・マイハルドと申します。…以後お見知りおきを…」


…勘違い?

取り敢えず問題なく進む挨拶。


でも嫌な予感はますます増していく。


「…と言う事を学んでいきたいと思います…」


よどみなく続いていた挨拶。

突然それが止まった。


ざわつく会場。


『緊張しちゃったのかな?』とか

『元王族…忖度なんじゃないの?』とか。


そんな声がちらちらしていると、マイクから大きく息を吸う音が聞こえた。


「ライト様っ!!!」


うお?!


「結婚してください!!!!」


ひいっ?!!


突然のプロポーズ。


これか?!

これなのか僕の危機感知?!!


「ぜえ―――――ったいに…のがしません事よ!!!…終わります!」


パチ…パチ……パチ…


あー。

まあ、そうなるよね。


そんなことを考えている僕。

シャルルが突然飛びついて来た。


「うあっ?!!」

「やっと会えましたわ♡…ダーリン♡」


ざわつく会場。

頭を抱えるロキラス公爵。



カオスだ。



※※※※※



因みにこの春ロキラス殿下は晴れて王籍から除籍。

新公爵『ロキラス・イラド・マイハルド公爵』と叙爵されています。


どうやら『イラド』は公爵位、つまり『王位に継ぐもの』っていう意味があるらしい。

もちろんこの国限定での話だよ?



※※※※※



そして始まるシャルルの猛アタック。


「ライト様っ♡」


もちろん毎朝僕たち2年生の部屋に顔を出し…


「ライト様っ♡」


昼食時も突撃してくる。


「ライト様っ♡」


放課後は待ち伏せしているし?


「もう♡ライト様♡」


そして僕の腕に抱き着いてくる。


はあ。


確かにシャルルは。

流石にロキラス殿下、いやロキラス公爵の娘さん。


9歳とはいえ間違いなく美形だし、僕と『結婚するためだけ』にいくつもの学びを終えていた。


『我が娘はしたたかだぞ?』


以前話をしたときにロキラス公爵が言っていた言葉。

僕はそれを実感していたんだ。


そしてそんなラブコメみたいな展開は突然終わりを告げる。


原因は他国の馬鹿。


その一人、と言うか一族が、シャルルに手を出そうとした。

もちろんシャルルは無事だし、その『バカ者ども』にはご退場いただいた。


詳細は。

まあ良くあるパターン。


『連れ去り軟禁し、純潔を奪う』


はあ。

どうして悪い奴らの行動パターンって同じなんだろ。


当然だけど全て事前に掌握。

シャルルは連れ去られる事すらなかったんだ。


だから僕は迂闊だった。

シャルルは叙爵したとはいえ元王族。


そしてあの陛下の孫。


今回の事、僕は家族以外誰にも言わなかったのだけれど…

なぜか『感の良すぎる』シャルルが僕の居ぬ間にココナを問い詰めた。


まあね。

ココナは僕の婚約者とはいえ元孤児だ。


元王族の追及。

逃れられるわけないよね?


結局知られてしまい、痛く感銘を受けた陛下。


という訳で。

今日僕は王城に呼ばれているのだけれど。

しかも“大至急”。


嫌な予感しかしない。



どうしてこうなった?!


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