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第86話 ヴィエレッタとの魔力抱擁

寮のリビングルーム。

まだ学園では授業が行われている時間。


いきなり消えた僕に、ティアが慌てふためいていたけど…

僕はティアに念話をとばし、僕の寮に誰も入れない結界を構築していた。


『ライト様?なにがあったのです…『隠蔽』は施しておきましたが…わ、わたくしもすぐに戻り…』

「ありがとう…ティア?」


『っ!?…は、はい』

「ティアはさ、ココナと帰ってきてくれる?ゆっくりね…僕は今、物凄く後悔しているんだ。…だから“けじめ”をつけたい」



『ライト様……あとで教えていただけるのですよね?』

「うん。もちろんだよ…だから…」



『…承知いたしました……馬鹿…』



ごめんティア。

僕は傲慢だ。


今から僕は自ら望んで封印していた魔力抱擁を行う。


全力で。




「コホン。お待たせヴィエレッタ。…何か飲む?」

「うん。ありがとう…ふう、ライト優しい…新鮮…」


可愛らしく頬を染め、にっこり微笑む彼女。

僕の鼓動はまるで早鐘のように鳴り響いていた。


「ミルクティーだよ。どうぞ」


「うん。……はあ。美味しい。…『セイ』の時は何も食べることができなかったし…味も分からなかったんだよね」


「ねえヴィエレッタ。君を転生させたのって…創世神なの?」


「うん。でもあのお爺さん、イジワルだよね。…『運が良けりゃ出会えるじゃろ?まあ数千年後かもしれんが』とかいうし。しかも本当にあたし4000年も待っていたんだよ?」


彼女はミリの居たダンジョンのコアだった。


そして4000年と言う長き間、僕との邂逅を待ってくれていたんだ。

ヒューマンの姿になった今でもその権能は保持している。


…むしろ強まった?


僕の魔力が完全に馴染んだんだよね。

コホン。


改めて彼女を見る。


どうやら僕の読み通りで、彼女は今11歳。

何気にルードイーズで初めて会った時と同じ状況だ。


流れる青みのかかった銀髪。

濃い紫色の輝く瞳。


すっきりとしたスタイルで、成長途上。


でも整いとても美しい彼女。


僕はもう欲しくてたまらなかった。


前世での『成長した美しい彼女』の姿が脳裏に浮かぶ。


前の世界でさんざん愛し合った。

確かに最初の頃。

僕は彼女に夢中だった。


それこそ彼女の体、どこに『ほくろ』があるのかも、すべて覚えている。


「ねえ、ヴィエレッタ…ヴィレ。本当の事を話すね…君にはひどい話だと思う。でも知ってほしいんだ」

「…うん。聞きたい…あなたの気持ちも含めて」


顔を染め真直ぐ僕を見つめるヴィエレッタ。

僕はミルクティーを口に含み、ゆっくりと語り始めた。



※※※※※



「…ぶん殴ろう。あたしも殴ってあげる!!」


夕方。

既に数時間、僕のとりとめない話を聞いたヴィエレッタが興奮気味に口にしていた。


「ハハ、ハ。…うん。心強いよ。お願いね」

「まかせて!!」


ありえない話。

荒唐無稽なそれを、彼女は全部信じてくれたんだ。


「でもさ…ズルくない?確かにあたしの知らないあたし…すっごくライトに愛されていた…むう。ズルい、ズルいよっ!!」


「ハハハ、ハ。…ごめん」


僕だって気付かないうちにどんどん心が冷えていたんだ。

でも。


確かに僕は…彼女を全力で愛していた。


全ての心で、優しさで。

彼女を包み込んでいたんだ。


甦るあの日々。

気付けば僕は彼女を抱きしめていた。


「うあ、ラ、ライト?…う、嬉しい♡」

「ヴィレ…ああ、可愛い僕のヴィレ…」


彼女を感じたくて僕は力いっぱい抱きしめる。


「あう…ライト…嬉しい…うあ、頭が…真っ白になっちゃう…」

「ヴィレ…ああ、ヴィレ…」


当然だが僕はいまだ男性の機能を有していない。

だから本当につながることは今の僕では不可能だ。


でも。


思い起こされる彼女との蜜月の数々。

もう我慢できない。


僕そっと彼女を抱き上げる。


「ふわ?…ゴクリ…ラ、ライト?」


「ヴィレ?僕は君を感じたい…魔力抱擁したい…いい?」



「っ!?…えっと…それってこの前…ココナちゃんとした奴?」

「うん。…僕は『大人だった君』も全部覚えている。僕は君の全部を愛したい」


ぶるっと震えるヴィエレッタ。


ああ。

まだ彼女は11歳…


でも。


これは僕のけじめなんだ。


「…いやかい?」

「…う、ううん。…でも…優しく、してね?」


「うん」



※※※※※



僕の魔力抱擁。


今僕たちはお互い『成長した姿』でお互いを慈愛の表情で見つめ合う――


流れ来る情景――


深い愛と思いやり。

二人の意識は解けて混ざり合う――



◆いつか行ったバラ園◆


『まあ、キレイ…ライト様?このバラは…』

『うん。特別な青いバラだよ?君の美しい髪の色に似ている…可愛い』

『あうっ♡』



※※※※※



◆朝焼けに染まる寝室◆


『はあはあはあ……好き…ライト…大好き…』

『ああ、僕のヴィレ…誰にも渡さない…』



※※※※※



◆我が子の出産◆


『オギャア、オギャア――』

『ありがとうヴィレ…君は素敵だ…』


『うん…ああ、私とあなたの赤ちゃん…』



※※※※※



◆いつかの舞踏会◆


『お手を…今宵は私と踊っていただけますか?』

『ふふっ。喜んで…私の王子様…』



※※※※※



◆いつかの冒険◆


『ヴィレッ!大丈夫?』

『へ、平気ですわ…痛うっ!?…』

『っ!?怪我してるじゃないか…ハイヒール!!』

『うふふ。…あなたの回復魔法…優しい♡』



※※※※※



◆そして思いやり、確かめ合った日々◆



『…うあ、幸せ過ぎて…おかしくなっちゃう…』

『おかしくなっちゃえ…。ヴィレ…ヴィレ…僕の女神様…』

『好き…ん…ライト…愛しています…』



※※※※※



「ハアハアハアハア……うあ…ヤバイ…爆発しそう…」


僕の寝室。

渾身の魔力抱擁。


思い出と――

感動と―――


ヴィレへの愛―――


「………ん…ライ…ト………ん……すう…すう…」


僕の横で幸せの表情を浮かべ眠りについているヴィエレッタ。


上気した顔、ほんのり発熱しているすっきりとした体…

愛おしい。


『大人』になっていない今の僕だけど…

無理やり感じてしまいたくなるほど――僕は感動と興奮に包まれていた。


精神がパンクする寸前。

心臓が爆発しそうなほど魔力が猛り狂う。


ああ、僕は―――


『…ライト様?!…やっとつながった…結界、解除していただけますか?わたくしもココナも、キャルンもサルツも。入れません』


「っ!?ごめん。…いいよ。解除した…ねえティア」

『…はい』


危ない…気を抜くと魔力が暴走しそうだ。


「うぐっ…ちょ、ちょっと出かけてくる。…僕のベッドにヴィエレッタがいる…僕の大切な人だ…よろしく…ね」


『…はあ。……あなたは本当に酷いお人です…ええ。承りました』

「ごめん…あとで」



※※※※※



瞬間消えるとんでもなく膨張していたライト様の気配。

そして遥か遠方。


星を包み込み荒れ狂う魔力。

わたくしは思わず自らを抱きしめていた。


(…ライト様…まったく。……いつ『男性』になられるのかしら…コホン♡)



※※※※※



期せずに掃討される幾つもの脅威。

そしてとんでもなく積み上げられるライトの熟練度。



最強の凡人。

最期の覚醒の時は近い―――


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