第84話 セイの秘密
溢れたダンジョン危機を乗り越えた僕たち。
久しぶりに授業を受けながら僕はそっとダンジョンコアの情報の共有を『セイ』と行っていた。
(ねえセイ。…ミリが言っていたんだけど…ダンジョンポイント5億を超えたって本当なの?)
『はい。正確には502,267,340ポイントです』
(…凄いな。…初めて見る桁だ。…確か…100万ポイントで新たなダンジョン構築できたよね?)
『可能です』
うーむ。
確かダンジョンは『超上位のアーティーファクト』のような物だ。
只あるだけでは大した意味はないのだけれど…
ポイントによってその性能は著しく増していく。
(5億…ヤバイ。できない事の方が少ないのだけれど?…っ!?こ、これは…)
脳裏に流れるポイントによる特典。
その最後の方に気になる文言が流れていた。
(……次元跳躍?…実効支配権の構築??…これって…)
『…まだまだこのポイントは加速度的に増えております。何より昨日掌握した16のダンジョン…まだポイント換算しておりません』
(うえっ?!…セイ?)
『はい』
(因みに…換算するとどのくらいのポイントになるの?)
『1ダンジョンのポイント、おそらくとんでもなく改造されていたのでしょう…あり得ない話ですが…およそ10,000,000です。1億6千万くらいになるかと』
(っ!?…そんなに?)
マジでヤバイ。
…待つ必要すらなく、異星の神々。
――掌握する算段が立ってしまっていた。
もちろん僥倖だよ?
何より目立ちたくない僕。
…今更とか言わないで?!
コホン。
実はこの瞬間。
宇宙と言うとんでもなく広い世界。
数多散らばるダンジョン。
そのすべての位置、僕は把握に成功していた。
ダンジョンマスターとしての特権。
ダンジョンを介しての干渉。
僕は既に、創世神ですら半分しか把握できないこの広い宇宙。
そのすべてのダンジョンを支配下に置いていたんだ。
つまり。
創世神が把握していない半分の宇宙。
それを実効支配している超越者リュガリール。
その気になればこの瞬間にでも僕はそいつを『抑えることが可能』になっていた。
(…どうしよう。もう待つまでもない…でも)
僕は一つ不安があった。
強すぎる力。
それにはたかが必要なはずだ。
(…ねえ、セイ?この瞬間僕が掌握するとして――何か問題あるかな?)
『…存在の昇華が起こるでしょう』
(…存在の昇華?…それって?)
『はい。我がマスターが全宇宙の統治者として概念へと昇華いたします。あなた様の物語のスタートです。銀河の覇者、そして『オートルの果て』にある新たな次元…あなたは絶対神となるでしょう』
………は?
(…それって…“僕”が『僕じゃなくなる』ってこと?)
『ええ。あなた様は伝説の存在、すなわちは高次元の支配者となります。…今の生活は続けられませんが…より高貴な、尊い存在へと…届くのです…はあ♡』
なにそれ。
僕は。
そんなこと望まない。
(セイ、却下だ)
『はあっ?!な、なに言って?!…コ、コホン…理解できません』
…今のセイの言葉遣い…
彼女の本音、初めて聞いた。
(セイ?…君は誰?)
『…仰る意味が理解できかねます』
(…もういいよ。もうそんな偽装、いらない。…お願いだよ、セイ…)
『……………はあ。……ねえ、いつから?』
(うん。ごめん。…最初からかな)
『ふう。…そうだとは思ってたけど。ひどいよねライト。あたしがバカみたいじゃん!』
ハハ、ハ。
いきなり存在をすごく近くに感じる僕。
僕はダンジョンマスター権限と、1億ポイントを消費して魔力を込めた。
「召喚っ!セイ!!」
『ひうっ?!な、なにを?!…きゃあああああああ―――――?!!』
もちろん事前に僕は有無を言わさずに転移していた。
ここは僕の擬似ダンジョン、最下層だ。
…クラスのみんなびっくりしてるかな。
ハハ、ハ。
でも。
僕は一秒だって待ちたくなかったんだ。
だって。
セイは――
目の前の空間がゆがみ、光があふれ出す。
光の粒子が集まり、徐々に人の形を形成し始める。
「…ふう。まさか君だったとはね…僕のこと、飽きたんじゃないの?…ヴィエレッタ」
ふくれっ面を僕に向け、ジト目で見つめる女の子。
僕が前の世界で1000回以上結婚した“僕の妻”だ。
「……もん」
「は?なんて?」
「飽きてないもん!!ライトあたしの事嫌いでしょ?…あたしは大好きなのにっ!!」
そして僕に抱き着いて泣きじゃくるヴィエレッタ。
散々触れた彼女の髪の毛を、僕はそっと撫でる。
震える華奢な体、香る懐かしい香り。
「ひっく…ぐす…ひん……な、なんで…ぐすっ…優しく…するの…ひん…グスッ…」
確かに僕は。
余りにしつこく繰り返すあの生活。
途中からまったく感情と言うものに心が動かなくなっていた。
「ぐす。ライトはさ…最初からあたしに…興味ないし…目も見ない…あたしは好きだったのに…触ってもくれないし…えっちの時だって…まるで作業で…ぐすっ、ヒック……うああ、うあああああ――――んん」
泣きじゃくる彼女。
その上に光の粒が現れ思念を僕にとばす。
瞬時にわかるこの気配。
そして伝わる波動。
「っ!?…クソジジイ?」
『……ふん……酷い言い様じゃな…時間がない…事実だけじゃ…お主最後のあの世界での生活、少しでいい、思い出せ…確かにワシのせいじゃろ?それは否定せん。…じゃがな?お主は数億回目なのだろうが…』
ふよふよと浮かぶ思念の光。
徐々に消えゆくそれは、衝撃の事実を僕に伝える。
『……でもこの娘は、ヴィエレッタは…まごう事なき『一度目の生活』なんじゃぞ?――お前、失念しておったろ?…む、時間が………』
そう言い消えるジジイの思念。
目まぐるしく駆け巡る、僕のあの時の生活の情景――
…………え?
一回目?
は?
え?
っ!?
まさか?
僕は蹲り、泣いているヴィエレッタの肩に手を置いた。
「…ヴィエレッタ?…バラ園に行ったよね?」
「……行ってない…なにそれ?…ズルい」
僕は愕然としてしまう。
そうだ。
僕は繰り返した。
そして同じ人たちと会う。
何度も何度も。
それこそセリフまで全部同じだ。
飽き飽きだった。
でも……
彼等は『繰り返してなんていない』んだ。
僕は頭を抱えてしまう。
思い浮かべる最後の僕のあの時の生活。
僕は多分。
――会話すらしていない。
誰とも……
ヴィエレッタの事は妻だったから…
もちろん抱いたし、子供だって儲けた。
でも。
僕は彼女ともまともに『会話すら』していなかった。
「ぐすっ…あたしは…ライトが好きだったの…でも…あなたは私を見てくれない…だから願ったの…死んだとき…もう一度…あなたに会いたい…あなたに頼られたいって……」
なんてこった…
僕は最低の男だったんだ。
思わず立ち尽くす僕。
ただヴィエレッタの泣く声が響いていたんだ。
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