第78話 ダンジョン攻略の様子1
街のいたるところに植えられた広葉樹が色づき。
銀杏の黄色い絨毯が美しい今日この頃。
僕の作った擬似ダンジョン。
公開されすでに2か月が経過していた。
陛下による各国への通達や、実際に手に入れた“お宝”の情報などが出回り始め、連日大盛況となっていた。
日々訪れる、各国の実力者たち。
擬似ダンジョンの情報も多く共有され始め、僕の目論見通りこの星の住人達もその実力を伸ばし始めていたんだ。
そして。
「…さすがです。ライト様。…それにしても…いつの間にあんな凄まじいポーション類…おつくりになられたのですか?」
擬似ダンジョン最下層。
僕のもう一つの目論見。
そう、“秘密基地”の作成だ。
誰も訪れることの無い、凶悪な魔物が跋扈する魔境。
擬似ダンジョン最下層100階。
僕はそこに設置した「モニタールーム」で攻略者たちの様子を見やり、ニヤニヤと顔を緩めていた。
「うん?…えっと…べ、別に隠してなんかいないよ?ほ、ほら、例の“侯爵の奥様”に処方した薬…ティアだって覚えているでしょ?」
「………はい」
なぜかジト目のティアリーナ。
コホン。
若返る“秘薬”。
どんな呪いも解除し、さらにはそのものの最適な状態へと回復させる超絶薬。
実は一度『影の騎士ノワール』の依頼で使用したんだよね。
女性たちのネットワーク。
甘く見ていたのは否めないのだけれど。
そんなわけで今、それを求める高貴な女性たちからの依頼を受けた冒険者たち。
かなり増えていたんだ。
さらには高純度の宝石の数々。
見たことの無い超絶武具など。
まさに『餌につられ、やってくる多くの者』たち。
僕は改めて、“にやり”と顔を歪めていた。
…何故かティアはじっとりと僕を見ているけど?
解せぬ。
※※※※※
始まりのフロア――ボッタクル商店。
6人の男たちは今、驚愕の表情を浮かべながら沸き上がる興奮に包まれていた。
『鑑定しますか?…料金は20万ゴールドです』
「っ!?20万?!…やべえ。……きっとお宝だ」
イスタール帝国で冒険者をしているルガナードたちは目を輝かせる。
彼等は『とある高貴なもの』からの依頼でこの擬似ダンジョンに潜っている冒険者だった。
彼らは実に38階層を制覇。
初めて目にした“銀色の宝箱”から出てきた『剣?』を鑑定に出しているところだ。
「お、おい。でも俺達今20万ゴールドも持っていないぞ?…と、取り敢えず、これは売っちゃわねえ?」
「…う―――ん」
腕を組み悩むリーダー“ルガナード”。
実はこのダンジョンで取得した武器や道具類。
所持上限内のものなら現実世界に持ち帰ることが可能だった。
今回彼らが手に入れた武器。
現実世界だとおそらく“伝説級”に匹敵するであろう。
正直売り飛ばすのは惜しい。
大分改善されたとはいえ。
この擬似ダンジョンは常に死が付きまとう悪辣なダンジョン。
浅い階層でも『クリティカル』と言う攻撃が、極小確率ではあるものの設定されている。
それこそ『野ウサギ』に首を刎ねられることもあるのだ。
当然彼らもその憂き目には散々遭っていた。
全滅すれば装備品やゴールドは確率により失われてしまう仕様。
何度悔しさに涙したものか…
「…どうする?…俺達の今の所持金73000ゴールド程度だろ?…こいつを売れば目的の秘薬『若返りの秘薬』…届くぞ?」
ダンジョンの公開が始まり2か月。
多くの実力ある冒険者などが攻略に参加した結果。
今ボッタクル商店は質の良い武器類や魔法の品などラインナップが充実。
実際に自分たちで獲得せずとも“ゴールド”があれば購入することが可能になっていた。
今彼らが鑑定をしようと獲得した武器。
恐らく売値40万ゴールド。
現実世界でならきっと金貨数十枚にはなるはずだ。
「うーん。でもなあ。…あの依頼、報酬いくらだっけ?」
「…金貨100枚だな。…武器よりは高額、か」
強い武具――ダンジョン攻略には必須。
もちろん現実世界でもその恩恵は計り知れない。
特に上位武器の場合、多くのメリットがあるのだ。
売るよりもまずは実際に使用した方が格段に攻略の速度は上がるのは明白だった。
そして悩む要素がもう一つある。
このダンジョン内での武器のルールと言うか摂理。
それが影響していた。
例えばロングソード。
通常の記載は『ロングソード』攻撃力+10・攻撃回数1回、だ。
つまり【ストレングス(筋力値)】が5の場合、実際の攻撃力は15。
対象の【ディフェンス(防御力)】に応じてその値は下がってしまう。
そして実は武器には漏れなく“耐久度”と言うものが設定されていた。
ある特殊な魔術か店の鑑定でしか確認することができないその項目。
耐久限界を迎えるとそれは『ガラクタ』となり1ゴールドにしかならない。
売り買いをすればその時点で最大値までは回復するのだが。
そこはやはり厄介な敵がわんさかいるこのダンジョン。
『武器破壊』という、『とんでも攻撃』を仕掛けるモノもいるのだった。
そんなわけで武器のストックは必須。
強い武器ならなおさらだった。
現在確認されている最強の武器『ロングソード+3』
通常のロングソードの数十倍のダメージを与える優れもの。
しかも今この商店の中で一番高く売られている武器だったりする。
その価格何と3,000,000ゴールド。
つまり鑑定額と冒険者側からの売値は1,500,000ゴールドだ。
今回彼らが得た武器(剣?)
鑑定額が200,000と言う事は実際の店頭での売値400,000ゴールド。
恐らくロングソード+1以上の武器であることは間違いがなかった。
※※※※※
「…売ろう。そして一度国に帰るぞ」
「…確かにな…ここに潜ってすでに3週間だ。…金もつきそうだ」
1日の攻略上限は8時間。
それを過ぎると強制的に始まりのフロアに戻されてしまう仕組みだ。
しかもその場合ペナルティとして大銀貨1枚没収されてしまう。
彼等は実に入場とペナルティだけで大銀貨50枚以上、すでに金貨5枚程度失っていた。
「あの方に報酬をもらって、再度アタックしよう。何より俺たちレベルすでに30以上は上昇したんだ。――どこよりも効率がいい」
「そうだな。何より実際に死ぬことがないんだ。…マジでここはすげえ」
「…今度はじっくり攻略しよう。ダンジョンのお宝、外で買い取ってもらえば俺たちは金持ちだ」
実はそういう噂。
“嘘”ではないが少し情報のコントロールをしてあったりする。
実際にダンジョン産の物で儲かった事例は存在しない。
値段がつけられないからだ。
それに本当の超絶武器の類。
国外出身の者にはボッタクル商店では表示すらされない。
せいぜい儲けるとすれば秘薬の類か宝石類だ。
そもそも出現率、実は攻略回数に応じ下がっていく仕組みになっていた。
当然だが公開していないが?
まさに悪逆非道なダンジョン設定。
もっとも?
本来の目的は安全な修練。
そして異性の者たちのあぶり出し。
その目的が果たされる以上、誰も文句は言えないはずではあるが。
※※※※※
(…まったく。我があるじ様は意地が悪いのう。くくくっ。おかげでダンジョンポイント、とんでもなく溜まっておるがな)
最下層、秘密基地の一室。
一人顔をにやけさせる『仮ダンジョンマスター』のミリ。
実はこの成果、将来にとんでもない福音をもたらすのだが。
この時点で気付いているものはいなかった。
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