第76話 擬似ダンジョンの開始
強い陽射しが落ち着き、セミの声が遠くに消える。
あれから3か月――長い夏が過ぎ、再び日常に戻る僕たち。
明日から始まる2学期に向け、久しぶりとなる寮で僕は準備に追われていた。
新学期も始まるが。
実はついに擬似ダンジョン、そのお披露目が1週間後に迫っていた。
「ライト、今度はその擬似ダンジョン、お姉ちゃんも行ってもいいのよね?」
「うん。調整はだいぶ優しくなっているし、修行にもなるしね。何より姉さまはうちの国民だから。うまくいけばお宝もゲットできるよ?」
実は僕の錬成した魔道具と言うか武器の数々。
アバター作成時に少し仕掛けをして、マイハルドの国民と僕たちに『叛意のないもの』にしか出ない仕組みを構築していた。
当然だけど魔道具による稼働ですよ?
そのたびに僕がおこなうんじゃとてもじゃないけど体がもたないからね。
そういう事も含めた準備期間だったんだ。
という訳で。
何しろこの世界では突出した性能を秘めている僕作成の武具。
もし『疚しい事』を考えているものに渡ってしまえば脅威になってしまう。
それを危惧した陛下自らの勅命により、『そういう人』にはめちゃくちゃ高価な宝石とかになるように調整をしております。
もっともお宝の出現率は通常でも0.1%。
ある程度の物はもっと出るようにはしたけど…
相変わらず『凶悪』な設定だ(笑)
当然だが僕には、その確率をいじる権限はあるけどね。
もちろん内緒だよ?
※※※※※
そんなことを思いニヤリとする僕に、ティアが問いかけてきた。
「…ライト様?課題の方はもう終わったのですか?」
「うん?もちろん。休みの最初の2日間で全て終わらせたよ」
一応僕は学園生だ。
しかも特待生。
その辺は抜かりない。
僕の返答に何故か難しい表情を浮かべるティア。
うん?
何か懸念事項あったっけ?
「実は…この星の南方で歪みが出ていまして…もしかしたら異星の神、そのせいかもしれないのです。お時間があれば一度調査に赴きたいのですが…」
「えっ?…僕は感じないけど…南?……っ!?…ほんとだ…凄いなティア」
魔力を薄くのばし、確認した僕。
確かに南方の深い森の中で、怪しげな魔力と言うか不思議な反応が出ていた。
(これって…ねえ、セイ)
『…はい』
(今リンクしたからわかると思うけど…この反応ってダンジョンなのかな?)
セイは今、この世界全てのダンジョンとつながっている。
ダンジョンの事なら彼女に聞けば間違いはない。
『…どうやら成りかけ、のようです。…安定するまでは侵入することお薦めできません…異次元との繋がり…感知しました』
(…それって…今のタイミング『ちょっかい』はかけない方がいいってことなのかな?)
『はい。過剰な魔力での刺激によりこの世界自体が崩壊する恐れがあります。調査はそのあとがよろしいかと…そもそもこの反応、発生したのはつい先ほどのようです』
ふむ。
じゃあ急ぐこともないかな。
「ティア、セイが言うにはまだ成りかけのダンジョンで、次元が安定していないらしい。今ちょっかい掛けると色々面倒なことになりそうだね」
「っ!?…す、すみません」
「うん?ティアが謝ることじゃないよ?何より僕が気づけなかったことにティアは気づいたんだ…ティアもすごく強くなってくれて僕は嬉しい」
※※※※※
――この3か月。
もちろん僕たちはただ遊んでいたわけではない。
相変わらずある『影の騎士ノワール』への依頼。
そしてルシェード殿下との会話など。
さらにはニニャ救出の時に現れていた魔神クラスの異星の者たちの存在。
その確認のため僕はティアを伴い、かなりの地点の調査を行っていたんだ。
そして。
僕の作った擬似ダンジョン。
お披露目自体は1週間後だけど、すでに完成している。
レベル高位者であるティアとルイ、ミリ、ルザーラナの4人と修行に明け暮れ。
かなり実力を伸ばしていた。
※※※※※
僕の言葉に顔を染めるティア。
やっぱりとんでもなく可愛い。
因みにあれから僕は一度も『魔力による抱擁』は行っていない。
ルイとルザーラナには散々要求されたけど。
僕の真剣なお願いにより、どうにか納得してもらっていた。
誕生日を迎え10歳になった僕だけど。
残念ながらいまだ『男性への成長の兆し』は見えてないんだよね。
何しろあれはやばい。
僕の精神、崩壊しちゃうよ?!
コホン。
「ライト~。私も行きたい♡」
「ニニャ?…えっと。…君ダンジョン嫌だって言ってなかったっけ?」
「うん♡だ・か・ら♡…ライトと一緒に行く♡…守ってくれるでしょ?」
そう言い僕に抱き着くニニャ。
思わず顔が赤くなってしまう。
「むう。ズルいですニニャさん。…わ、私も…いきたい♡」
その様子にココナまでもが僕を見つめ呟く。
まあ。
確かに彼女たちにも力はつけてあげたい。
いつ異星の神たちが来てもおかしくないからね。
何より力は邪魔にはならない。
僕は頭の中で彼女たちの訓練プランを思い浮かべていた。
※※※※※
翌朝。
良く晴れた秋晴れに、色とりどりの花が咲き誇る。
久しぶりの登校だ。
僕は相変わらず減らない女生徒の壁に苦笑いを浮かべつつも、どうにか教室にたどり着いた。
「おはようライト」
「おはようミャルナ」
相変わらずにこやかに挨拶してくる、この国の第4王子である彼。
実は擬似ダンジョンの設定で、彼には随分世話になっていた。
何しろ僕は強すぎる。
そんな僕の思いが詰まってしまったダンジョン。
既にエクストラを超えるまさに極悪な難易度になっていた。
そんなわけで。
この世界でも『中の上』くらいの強さの彼の、常識と言うか良識。
凄く参考になっていたんだよね。
「いよいよ1週間後だね。…なんだか僕もドキドキしてきたよ」
「ハハッ。ミャルナのおかげで調整はうまくいったようなものだからね。本当にありがとう」
「お役に立てたようでうれしいよ」
実は擬似ダンジョンについては既に国民には周知済みだ。
何しろ絶対に死なずに、経験を得られるチャンス。
しかも1か月3回までは無料で入れるとあって、すでに『国民専用予約枠』は数か月待ちの状態だ。
他の目的もあるこの擬似ダンジョン。
もちろん国民を鍛えることも重要だけど、本来の目的に支障をきたしてはいけないもんね。
本来の目的。
異星の者たちをあぶりだすこと。
すでに僕の魔力で包み、女神であるティアリーナが完全に復活した今の状態。
恐らく襲来するであろう本体が来る前に、この星の中の懸念は払拭しておきたい。
さらには若い力の安全な訓練。
既に学園長先生とは協議をし、陛下の勅命により学園のカリキュラムにも組み込む予定だった。
(…ああ。だから今日の女生徒の壁、何気に男子も多かったのか)
実は先ほどから僕に向けられる視線、いつもよりも確実に増えているし、何より男子の視線も多かった。
擬似ダンジョンの総責任者である僕『ライト・ソガ・ガルデス侯爵』の名前は、今やマイハルド王国において知らないものはいないほど周知されてしまっていた。
10歳で侯爵とか…
まあしょうがないけどね。
そんなざわめきの中、ウェレッタ先生の声でどうにかホームルームは始まっていった。
※※※※※
さて。
一応完成した僕の擬似ダンジョン。
その概要を簡単に紹介したいと思う。
【擬似ダンジョン概要】
・階層数:100
・宿泊:馬小屋(5分で回復)
・通貨:現実では使用不可(絆酒場で保存可)
・アイテム:持ち込み・持ち出し可
・セーフティ:死亡時に経験半減+アイテム一部喪失
・入場料:銀貨3枚(国民半額/月3回無料)
…ざっとこんな感じです。
後は強さによって階層が変動仕組みだけど…
新たにエレベーターを設置することにしました。
よく考えたら、強くても下層でゲットできるお宝ないと、先に進めないんだよね。
ハハハ。
ちなみにボッタクル商店の鑑定の金額、そのモノの50%に落としておきました。
これで鑑定での破産は無くなった。
正直僕は――それすらも醍醐味だと思っていたのだけれど…
陛下に『ものすごくいい顔』で押し切られました。
何よりセイとティアにも怒られたしね。
罠も大幅に減らし、宝箱の罠も当初の50%…
…………………まあ。
しょうがないよね?!
コホン。
因みにすでに国民専用枠の予約はパンク状態。
国民は無料で入れるとあって、死ぬことなく強さとお宝をゲットできるチャンス。
まあ…当然だよね。
それから授業のカリキュラムの場合には無料だし、僕の関係者と近衛兵、許可のある兵士も当然だが無料だ。
一番の目的である異星のもののあぶり出し。
支障をきたしちゃいけないもんね。
因みに擬似ルーム、いわゆる100人は入れる僕の作った施設。
全く足りないため今は既に10か所にそれぞれ建設済みです。
最大収容人員、現在では3000人までその数を増やしておきました。
ああ、それからこのシステムの運営についてはなぜかミリがメチャクチャやる気を出してくれていて。
『どうせわらわは普段学園にもいかんのじゃ。わらわに任せるとよい…フフフッ、滾るのう…ダンジョンマスターの血が騒ぐわ』
とか言っていたのでシステム含め、彼女に丸投げしました。
おかげで僕は自由。
もちろんマスターである僕はいつでも干渉できるようにはなっているけどね。
※※※※※
そして1週間後。
ついに擬似ダンジョン、開業したんだ。
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