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第75話 ルシェード殿下との会話

そんなこんながあったものの。

世界は常に動いていて。


僕は久しぶりに訪れた学園で、この前家を訪れたルシェード殿下に呼び出しを喰らっていた。


「…酷いではないか、ライト。…あれから結構な日数が経過しているが。待てどもお前からのコンタクトがない日々。…まさか、忘れていたのではあるまいな?」


確かに僕は、あの後めちゃくちゃ忙しかった。

東の帝国のゴタゴタや、ニニャがらみの騒動。


もちろん忘れていたわけではないのだけれど…


確かに僕の中での優先順位、低かったのは否めない。

なので僕は正直に打ち明け、取り敢えず謝罪を済ませたところだ。


「ふむ。そう言う事か。…仕方ないな。…それにしても君と同じ世界線、しかも時代が異なる来訪者、か。興味深い話であるな…他にもそういうものがいる可能性、否定は出来まい?」


何気に頭の良いルシェード殿下。

彼の読み、まさに核心だ。


「正直まだ『いる』と思います。僕の魔力に反応した魂。…確か数十人には上っていました」

「数十人…ふむ。…で?…ライトはどうするつもりだ?」


この人には既にいろいろと話してある。

何しろあのクソッたれな創世神とは繋がりのない、違う摂理から訪れている御仁だ。


「とりあえずは放置で。…それに今僕は国と協力して『擬似ダンジョン』という仕掛けを構築しているところです。それが完成すれば、色々と話が進むので」


「ふむ?擬似ダンジョン?…面白そうだな…なあライト。それ、僕が挑戦しても良いものなのか?」

「ルシェード殿下が?…まあ。…別に問題はありませんけど」


ルシェード殿下の真の実力、この前こっそり行った“簡易鑑定”では正直分からなかった。


本気の鑑定、それならばそれこそ丸裸にはできるだろうけど…

僕はこの力、むやみには使いたくない。

何しろ心の奥底までわかってしまう“神スキル”。


むしろ彼がダンジョンに潜ってくれるなら、かえっていいかもしれない。


「…ところで殿下?」

「うん?」

「あなたの懸念、今のところ動きはない、そう言う事でよいのでしょうか?」


以前彼が僕の寮を訪れた時の話。


この星にいる彼と同じ世界の摂理の者たち。

その中でも不穏な動きを画策しているモノがいるということだったが…


「ああ。前にも言ったが覚醒していないものが殆どだ。それに覚醒したとしても僕の敵でもないし?何より君が出張れば済む話であろう?うん?ああ、『影の騎士ノワール殿』か」


えっと。


一応それって僕の身分を隠すものなのだけれど。

最近バレまくっていてなんとも居心地が悪い。


「はあ。…一応秘密と言う事になっておりますので…ご内密に」

「そうであったな。何しろ女神さまの婚約者も実はライトと言う事だものな。相分かった。これは僕が秘匿事項に指定しておくとしよう。案ずることはないぞ?」


うう。

不安しかない。


実はこの人、僕たちと微妙に周波数が違うんだよね。

正直負けることはないだろうけど…


もし彼が僕の知らないスキルで攻めてくればきっと苦労はしてしまうだろう。


「なんだ?つまらぬことを思うでない。そんな『勿体無い事』するはずがなかろう。何しろ君と会ってからというもの、僕は楽しくて仕方がないのだから」


満面の笑みを浮かべるルシェード殿下。

鑑定を使うまでもない。


彼はどうやら本気で退屈していたみたいだった。


「分かりました。とりあえず今は調整中です。しばらくお待ちいただきます。…本当にあなたの世界?の摂理のモノ、放置で良いのですか?…今なら協力できますよ?」


「魅力的な提案だな。…うん?…そうか…なあライト」

「はい」

「もしかしたら一つ頼むかもしれん。なあに、簡単なことだ。ライトなら朝飯前であろうな」


うーん。

どうしてもこの人の事、心の底から信じることができない。

間違いなく悪い人ではないのだろうけど…


なんか信念?倫理観?価値観?

どうしても僕とは微妙にズレている。


あっ。

大切なこと忘れてた。


僕は真っすぐにルシェード殿下の瞳を見つめ口を開く。


「…キャルン姉さまへの婚約申し込み…あれは冗談ですよね?」

「うん?…いや。…本気だが…だめなのか?」

「ダメです」


僕の拒絶に、何故か不思議そうな顔をする殿下。

本気で意味が分からないという顔をしている。


「むう。そうか。…だが君の姉上だって貴族でもう11歳であろう?…む?…そう言えば婚約者がいるとか言っておったな。それこそ冗談ではなかったのだな?」


「え、ええ。まあ」


取り敢えずその相手が僕であることは告げていない。

普通に考えて実の姉。


いくらこの世界、婚姻が認められるとはいえ冷静に考えれば少し異常だ。


「…仕方あるまい。…だが彼女が僕に惚れるのなら…それは仕方がない事であるな?まだ婚約状態なのだろう?」


「うぐっ。そ、それは…まあ…」


思わず口ごもってしまう僕。

その様子にルシェード殿下はにやりと顔を歪めた。


「ふむ。承知した……フハハ、燃えるではないか…ライト」

「っ!?は、はい」

「擬似ダンジョン、出来次第教えてくれると助かる。僕も少し修行でもしておこう」


そう言い、颯爽と僕から離れる殿下。

消えゆく背中を眺め、なんだかとっても疲れた僕は大きくため息をついていた。


まあ。

こう言う普通の日常。


実は“ほっ”としている僕だったりするんだけどね。


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