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第72話 蠢きだす異星の神の眷属たち

この惑星ミラリルス。

実は文化レベル、そこまで高くはない。


幾つかの近代的な国家はあるものの、基本魔術の流用。

科学技術と言うものはまだまだ発展途上だ。


そんなわけでこの世界、地図はあるものの。

実際の地形と言うか、ヒューマンの住んでいない地方については結構出鱈目だった。


もっともこの世界は僕が以前いた世界『ルードイーズ』に比べハードモードだ。


あの世界よりも強い魔物も多くいるし、どうやら違う世界の神や、異星の神たちのちょっかいと言うか“悪ふざけ”が所どころに残されていた。


まあ以前の大戦?

数千年前の女神ティアリーナや前の魔王たちの活躍と言うか献身により、取り敢えず彼らの繋がりを『絶つ』ことには成功していたのだけれど…


僕の魔力と女神の復活。

それにより活性化し始めていたんだよね。


その一つ。


ダンジョンコアである『セイ』が感知した場所。


絶海の孤島にある隠しダンジョン。

僕の目的『ニニャーレグス』がおそらく封印されているダンジョンだ。


もっとも『ただそこにある』という訳ではない。


どうやら何かの秘術?

でたらめ技術?


幾重にも次元が交錯し、奇跡的に今そこから繋がれる状況。


だから実は――時間はひっ迫していたんだ。



※※※※※



荒涼の大地。

草すら生えぬ、殺伐とした情景。


まるで昔地球のテレビで見た『火星のような状況』に僕はごくりとつばを飲み込んでいた。


「ねえライト?ここにダンジョンなんてあるの?…ただの荒野じゃん」

「うんうん。…変な魔力?…なんか包まれてるというか隠蔽されているというか…」


同行しているルイとルザーラナが僕に声をかけてきた。


確かにダンジョンの入口は感知できている。

でも。


「ライト、これって…っ!?…」


突然吹き上がる魔力。

それに反応したキャルン姉さまが声をあげた。


荒野の先…


どうやらここを守るというか、邪魔をしているものがいるようだ。

マジで面倒くさいな。


僕は全員を伴い、その元凶の場所へと転移したんだ。



※※※※※



我は目覚めた――


使命とともに託された我が存在意義。


ここの死守。

それは譲れない。


「ふむ。どうやら『招かれざるもの』が来たようだな…っ!?強い、な――だがっ!!」


異形の化け物。

体を覆う鱗のような物。


身の丈は5mを超える、まさに魔神。

僕の目の前で魔力を揺蕩らせるもの。


僕はそいつに声をかけた。


「…ねえ。君は何?…僕はさ、ここにあるダンジョンに入りたいんだけど?…邪魔しないでくれるかな」


「ほう?貴様、強いな…我は目覚めた。そして使命がある。…ここは我が神のテリトリーだ。早々に立ち去られよ」


確実に異星の者。

そして内包する圧倒的な魔力。

余りの強さに空間が揺らぐ。


「ライト様…こいつら…以前攻めてきた異星の者…その中でも実力のあるもののようです」


臨戦態勢をとるティア。

つられるようにルイとルザーラナ、そしてキャルン姉さまは魔力を練り上げ始める。


「ふん。引かぬ、か。…それもまた一興。我が目覚めし力、存分に思い知るがよい!!」


爆発的に迸るそいつの魔力。

瞬間僕は結界を構築し、皆を守る。


「くうっ?!」

「うああ、ラ、ライト?!」

「…やばいよ?ライトキュン」


あー、マジで面倒くさい。

ていうか邪魔するなよな?


僕は構築した結界から一人出て、そいつに近づいて行った。


悪いけど問答する時間すら惜しい。

僕は全力の魔力を纏い、そいつを睨み付けたんだ。



※※※※※



絶海の孤島。

我が神より与えられし我がテリトリー。


すでにここに存在し、幾重にも紡がれた悠久の時間。

我はここにある『ワームホール』でもあるダンジョンを守る使命を授かった。


その使命、果たさぬ理屈はない。

すなわち目の前のこの少年、敵だ。


我は濃密な魔力を噴き上げ、目の前の小さな侵入者を睨み付ける。

そして紡ぎ構築する究極の術式。


油断しているのか何なのか。

目の前の少年はただ我に近づき、微動だにしない。


(強い。その姿からは想像も出来ぬ極限の鍛錬…尊敬に値する――ならばこそ。最初から最大の奥義…それがせめてもの礼よ)


「くらえっ!!我が奥義『獄魔灰燼覇(ごくまかいじんは)!!』」


ズドオオオオオ――――――――ンンンン!!!!!!


全てを滅ぼす激しい破壊の衝撃が少年を巻き込む。

確実にとらえた。


確かな手ごたえに思わず顔が緩む。


「……ふふん、チリも残らぬ……っ?!はあっ!?」


そこには無傷の少年が佇んでいた。


「……なに?もう終わりなの?…悪いけど僕、急いでいるんだよね…さよならだ」

「ば、ばかなあああっっ!!ぶべらっ!?」


ありえない衝撃と濃密な魔力が我を蹂躙する。


そして消えゆく意識…

わ、我は…



※※※※※



一瞬で滅ぼしたおそらく魔神クラスの強敵。

僕は消えゆくそいつを鑑定しながらも、読み取った術式を展開させていた。


「…す、すごい…」

「うあ、ライト…えげつな!!」

「ライトキュン♡…好き♡」


突然弾け飛ぶ結界陣。

僕たちの目の前には隠されていたダンジョン、それがぽっかりと口を開いていた。


「…ビンゴ。…どうやらさっきのアイツはここの守護を任されていたようだね。…みんな、行こうか」


「…ライト様?さっきのアイツ…メチャクチャ強かったような…」


「うん?ああ。まあレベルは600くらいだったかな。…ティアとルイなら問題なく勝てたけど…ごめんね?僕、今はそんな余裕ないんだ」


いつにもまして焦るライトのその様子。

彼を想う女性4人に複雑な心境が渦巻く。


今から行く先に待つもの。

恐らくライトが“愛を捧げる女性”だ。


過去のライトですら叶えられなかった、数万年紡がれたライトの想い。

もちろん共有している今、彼女たちは知っている。


でも。

4人は前を向く。


たとえその女性をライトが愛そうとも。

すでに4人は。


『何があろうとライトを愛しぬく』



その覚悟は既に決まっているのだから。



※※※※※



「ふん。どうやら時が来た…そう言う事か…っ!?…バルモラ?…反応が消えただとっ?!!」


遠く離れた秘境の地。

人里から離れ、凶悪な魔物が跋扈するヒューマンの足が届いていない魔境。


目を見開く異形の者。


「…なんだ?このとんでもない魔力は…くうっ、不味い…まだ本体はしばらくここには来ぬ…隠れなければ…」


姿とともに自身を包む魔力を霧散させるそれ。


(くそっ、ダメだ…我らの悲願…まだだ…)


闇に溶ける異形の者。


いずれ邂逅するライト。


その時を少しでも引き延ばそうとそいつは完全に姿を消していた。


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