第71話 「どうか私を弟子にっ!!」「無理っ!!」
イスタール帝国。
皇帝の居城、その謁見の間。
今ここに攻めようと来た3人が跪き、皇帝の言葉を待っている状況だ。
「ふむ。ライ…コホン。…ノワール殿。…こやつらはもう脅威ではない。そういうことであるな?」
「ああ。陛下のいう通りだ。この3人はどうやら仕える主を模索している様子。我が彼らの精神の奥深くまでしっかりと確認した。問題はないと約束しよう。――可能ならこの帝国の力になりたい、そう申しておる」
どうにか説得?し、それを承知(魔術で)させた僕。
だってさ。
コイツら…
前世で残念な人生を歩んでしまった3人。
僕は思わず可哀そうなものを見る目をしてしまっていた。
※※※※※
1999年…
小学生低学年だった僕ですら『あの予言』にはドキドキしていた。
信じる者も…
まあ…かなりいたと認識している。
「…お前たちの目的は何だ」
「…えっと。正直俺は…この世界でゆっくりと暮らしたいんだよね。…確かに俺たちはレベル200くらいだ。この世界では強者だろう。…以前俺たちは間違えた。だからやり直したい」
扇夢太が言葉を漏らす。
「わ、私は…これは“運命”だって…そう思って…」
俯き呟くように話す青柳節子。
「…ノワール殿」
ようやく気絶から回復した等々力。
目をギラギラさせながら何故か僕の前で跪いた。
「ど、どうか…わ、私を弟子にっ!!」
「あー、無理」
僕は時間を置かず圧を伴いさせ、即座に拒絶した。
僕は忙しいんだ。
何よりこんなごついゴリラ、僕が教えることなんてない。
当然この先訪れるであろう異星の神とその眷属。
その対策として鍛えるのはやぶさかではない。
でも。
残念だけど彼らはすでにほぼ上限。
と言うか『今のレベルがマックス』のような転生を果たしていたんだ。
「な、な、な…そ、そこを何とか…」
「くどい」
瞬殺。
何よりまずは話し合いでしょうに。
僕はばっさり切り捨て、椅子に腰を掛けなおした。
バツが悪そうに立ち上がる等々力。
彼も恐る恐る席に着く。
「コホン。…で?…君たちどうやって転生してきたのだ?…神様とか、会話とかしたのだろうか?」
僕の問いかけに何故かぽかんとする3人。
ようやく再起動した夢太が遠慮がちに声を出す。
「ええっ?…神様…ですか…ノ、ノワール殿はロマンチストなんですね」
「…うんうん」
なぜかその言葉に大きく頷く節子。
うん?
創世神じゃない?
「…ふむ。悪いが手っ取り早く覗かせてもらうとするか。…ああ、ダメージとかは無いし、必要以上には覗かないと誓おう…」
僕は魔力を練り、真っ直ぐ彼らの瞳を見つめる。
「の、覗く?…あうっ♡」
えっと。
そういう意味じゃないからねっ!!
僕は問答無用で彼らの意識に干渉を始めた。
※※※※※
結果彼らはただの『イレギュラー』だった。
恐らくこの宇宙という広い世界。
その中には多くの実力者がひしめき合っているのだけれど…
基本的には波長――周波数が違う場合認識することはできない。
でもどこにでも『異端』はいる。
そのどこかの実力者。
無責任にもそのとんでもない力、制限すらせずに結果すら分からない癖にそういう術式を解き放っている馬鹿がいた。
つまりは“次元跳躍”と“魂魄の結合”。
強い不満を抱いた、肉体と言う牢獄から解き放たれた魂――
どうやら彼ら3人その力によって、この宙域で強い力を内包する此処『ミラリルス』へと飛ばされ。
元々この星で生活していて、命を無くしたものに憑りついていた。
僕は大きくため息をつく。
まあ。
あのクソじじいではなかったが…
どうやら絶対者、性格破綻者が多いようだった。
「…分かった、確認は終了だ。ありがとう。…それで君たちこれからどうするのだ?」
おおむね把握した彼らの精神性。
別に悪とかではなく、とりあえず自己顕示欲が他の人よりもちょっと強いようだ。
まあもともとそれなりには優秀の3人。
何より3人とも某一流国立大学出身のエリートだ。
そして残念ながら対人スキルが低かったようで。
新興宗教に騙され、全てを奪われていた。
金も地位も、そして愛する家族たちの財産までをも。
いわゆる終末思想?
それにどっぷり染まってしまった彼らはその新興宗教への強制捜査を防ぐために国会議事堂へと突撃するよう唆されていたんだ。
どうやら政界にもその魔の手は伸びていたようで…
だから奥までたどり着けたんだね。
…残念過ぎる。
そりゃあ悔しいよね。
「…お前たちの状況、我はおおむね掌握した…辛かったな…でも今世ではその力を良い事に使い、楽しく暮らせばよかろう」
「…えっと…ど、どうすれば…」
「わ、私たち…今冷静になったら…な、なにをすればいいのかな…」
「ううう、ど、どうか弟子に…」
あー。
この人達。
『指示待ち人間』の典型だ。
きっと若い時には勉強一筋。
友達と遊んだり、色々とやんちゃをする他人を横目にひたすらそれに集中してしまっていた。
つまり優秀だが、汎用性に著しく劣っている状況。
そして経験のない『頭でっかちで理想家』――
実に厄介な、まさに『社会問題の詰め合わせ』みたいな人間だ。
僕は思わず唸ってしまう。
正直只解き放つにはコイツらの力は強すぎる。
放っておけば『残念なこと』になるのは目に見えているし…
何よりそのスキル。
扇夢太、彼は『サモナー』と『クリエイション』と言うスキルを保持している。
いわゆるゴーレム部隊を作成でき、それを操る能力者だ。
北の地の建造物も彼のスキルらしい。
弱い小国なら彼一人で制圧できてしまうレベルだ。
青柳節子に至っては第9位階まで習得している超絶魔術師だ。
一人で国家レベルのレギオン魔術までをも使いこなすことができる。
やばすぎる。
さらには等々力竜二郎。
コイツは…
なぜか帝王の素質。
とんでもないカリスマ性を保持していた。
正直僕が手元に置いてちゃんと見なくちゃいけない様なレベルだ。
めっちゃ嫌なんですけど?
僕は思わず頭を悩ます。
「…ノワール様?」
「うん?」
そんな僕に悪魔の、いや女神のささやき…
美しすぎる従者アラタイトが起死回生の提案をしてきてくれた。
「…この帝国に忠誠を誓わせればよろしいのでは?それなりの待遇を与えれば…彼らは喜んで従いませんか?…彼らは道しるべが欲しいのでしょう?」
おお!!
さすがは女神様だ。
ならば…
僕はおもむろに魔力を練り上げた。
そして彼ら3人の精神の奥深い場所。
そこに帝国への忠誠、『何となくのレベル』で植え付けたんだ。
※※※※※
「ふむ。我が帝国に忠誠を、と。…等々力と言ったか」
「っ!?はっ!」
僕の精神魔術のせいもあるのだろうけど。
等々力は陛下の問いかけに何故か目を輝かせ力強く頷いていた。
「…力を貸してくれるか?」
「おおっ!喜んで。この等々力、力の限り陛下に忠誠を!!」
そして習うように頭を下げる3人。
「相分かった。ならばお主たちに我が帝国、最高位の権限と肩書を進呈しよう。どうか弱き民、守ってほしい…ヴィラーリヒよ」
「はっ」
「こやつらはお主の直衛とせよ。今いる3名のうちガリュニアが部隊長を務めよ。残りは居城の警戒につけ。良いな」
「はっ。御意に」
ふう。
どうにかなった。
僕は陛下の決定を聞き、すでに心はダンジョンへと想いを馳せていたんだ。
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