第70話 『我が究極奥義は無敵だ!』…はあ?!
ヴィラさんとの会談を終え寮に戻った僕とティア。
すぐに皆との共有を済ませ、早めに寝ることにした。
当然だけど待っていたルイとルザーラナとは魔力抱擁していないよ?
ものすごくジト目と無言の圧を頂いたけど…
悪いけど僕に今そんな余裕はない。
一秒でも早くダンジョンに行きたいからね。
そんなわけでサルツさんに1週間休学する手続きを頼み、今僕とティアは変装を済ませたところだ。
恐らく今日の朝、イスタール帝国の皇帝の居城『ガルグ・イア・シフィール宮殿』に攻めてくるであろう異世界人の3名。
(…話し合いになればいいけど…はあ…)
昨日流れてきた情景。
“夢太”という人物なら話は出来そうだけど…
他の二人…
多分間違いなく脳筋で重度の中二病患者。
それにあの時流れてきた『強い信念なのにまるで虚像のように儚い』…そんな心情。
僕は大きくため息をつき、ティアの手を取る。
皇帝の居城、第一皇子の部屋へと転移したんだ。
※※※※※
「ほう?今日は影の騎士ノワール殿か。…そちらは美しすぎる従者アラタイト殿…ふうむ。その格好…北に占拠する彼らと同系統なのか?」
「…やめてください。全然違いますっ!」
「う、うむ。すまんな」
訪れたヴィラーリヒ殿下の部屋。
3人の護衛の皆さんも今日は隠蔽せずに控えていた。
「コホン。ところで殿下、彼らは何度か来ているのですか?」
「ああ。最初はいきなり皇帝に会いたいと申してな。当然だが断った。…しかしその後突然宮殿内に現れて意味の分からぬことを喚き散らしてな…」
理解できない。
そんな表情を浮かべる殿下。
「そういう訳で我が国の秘宝である結界のアーティーファクトを常設したのだ。…魔力消費がえげつないのでな。できれば切りたいところだが…」
突然宮殿に乗り込んでくる恐らく異世界人。
しかもここの人たちよりも強い。
そしてなぜか覚悟の決まった瞳に意味不明の言葉…
確かに脅威に他ならない。
「っ!?殿下、通信が入りました。…どうやら彼等、数十人の軍勢で宮殿前の広場に現れたようです」
「来たか…ライト…いや、失礼。…ノワール殿、来たようだ。…同行した方が良いか?」
「いえ。取り敢えず僕と…コホン。…私とアラタイトで交渉してみよう。殿下はゆるりと来られるとよい」
「…口調も変えるのか?芸が細かいな…コホン。…分かった。そうさせていただこう」
僕はそっとアラタイトの手を取る。
頷くアラタイト。
僕たちは転移し、軍勢の迫っている宮殿前の広場に飛んだ。
※※※※※
朝だというのに厚い雲に覆われ、やけにどんよりとした空気の中――
転移し、彼らと対面した僕は思わず言葉を漏らしてしまう。
「何これ?」
場を覆いつくす異様な魔力。
身震いするようなその圧に対し、なぜか幾つもの『痛い旗』を掲げたモヒカンたち。
余りのちぐはぐさに、僕は違う意味で背筋が寒くなる。
(――ふざけているのに真剣…きっと彼らは“常識”を知らない)
そんな中、神輿のような物に仁王立ちしている、2メートル位の巨体の男が腕を組み僕を睨み付けていた。
「む…貴様…怪しい奴め――何者だ?」
おっと。
考えるのは後だ。
取り敢えずは話から…かな?
「我は影の騎士ノワール。帝国の殿下の頼みを聞きここにいる。お前たちの目的を聞こう」
「はあっ?何このちび。…坊やはままのおっぱいでもしゃぶってな!!」
口悪っ!?
突然神輿の横にいた派手なローブを身にまとっている女性、おそらく“青柳節子”が口をはさむ。
見た目は結構奇麗なのに…
目がイッチャッテル?!
「コホン。我は話し合いをしたいのだが?…そのような口の利き方――育ちが知れるというものだが?」
明らかに動揺する『セツ』と呼ばれている女性。
『ぐぬぬ』とか言っちゃってるし?
…凄いな彼女…第9位階?…なんか残念臭が…
そんな中、一人の男性が僕に近づいて来た。
「あー、その。…確かに失礼だったね…僕は“扇”と言うものだ。…ノワール殿?とお呼びしても?」
「かまわない。それで?…話し合いという雰囲気ではないが…まさか“侵略する”とは言わぬよな?」
僕の言葉。
それを聞いた、おそらく等々力と言う男が神輿を飛び降り、いきなり僕に対し魔力をぶつけてきた。
「おまっ?!ちょっ…」
「ふん。力こそ正義!!扇よ、心配はいらぬ。――コイツには死をくれてやる!!」
慌てふためく扇。
まあね。
ここまで話が通じないのは少し頭に来ちゃうよね?
そして僕を包み込む等々力の魔力。
内部に侵入し、組織を壊そうとその力を解き放っていく。
これは…!?
きっと『そういう能力』なのだろう。
僕じゃなくちゃ…
今のこの瞬間、体が四散し死んでいた。
コイツの技。
隠蔽し圧縮した魔力。
それを対象の体に侵入させ、弾けさせる性質だ。
あたかも内部からはじけて死ぬような――
まるで『某アニメの主人公』の技のパクリだ。
「ほう?我が秘術、耐えるほどの力を持つか…ならば」
突然『拳法の型』の様な怪しい舞を踊る。
吹き上がる周囲の色を無くすほどの濃密な複合した魔力。
「…はああああああああっっっ究極奥義『百裂神の拳』!!!ほわたたたたたたたたたたたたたたああああああっっっっ!!!!」
本人は。
うん。
きっと真剣なのだろう。
僕はすでに一度こいつの魔力を経験した。
解析完了済み。
本来なら身体が弾け飛ぶほどの威圧――僕には“そよ風”だけどね。
しかも技名?
アウトじゃないのかなっ!!
「ふっ。…我が究極奥義は無敵だ」
全身から湯気のようにオーラをたぎらせ、決め台詞を言う等々力。
あー。
さいですか?
僕は取り敢えず、コイツの流儀に乗ることにした。
魔力を変換させ身体を膨張させる。
そしてまるでどこかの『皇帝』のように等々力を睨み付け、にやりと顔を歪めた。
…まあ。
仮面してるので表情は分かんないと思うけどね?
「効かぬ」
「な、なあっ?!ま、まさか…き、貴様…秘孔の位置が…」
おいおい?!
どこまで頭の中お花畑なんだよ?
コイツが紡いだのは“魔力”。
決して某アニメのような“熟練された技”ではない。
もしかして…
気付いてない?
本当に自分の力すら分からない雑魚なのか?
それとも…
僕は何となく思いついた答えを得るべく、取り敢えずこの悪ふざけを続けることにした。
「フハハ。我は至高、この世の頂点。…引かぬ・媚びぬ・顧みぬ!!」
コイツらきっと、僕とは違う時代からの転生者だ。
でもおそらく同じ世界線。
――このセリフ、絶対に知っているでしょ?
…いい加減気付けよ?
ここまでヒント出してるんだから。
取り敢えず僕は魔力を込めた拳で、死なない程度に等々力を殴り倒した。
吹き飛ぶ等々力。
そして驚愕の瞳で僕を見つめる扇。
「…で?悉く滅ぼす…それでいいのか?」
瞬間消し飛ぶゴーレムの軍勢。
僕の魔力が圧を伴い、唸りをあげる。
「…ひぐっ?!…そ、その…すまない――は、話し合い…させていただけるだろうか?」
うん。
さすがにこれでも向かってくるのなら殺すしかなかった。
良かったよ。
少しは話の出来そうな人がいて。
僕は魔力を霧散させ、アラタイトが出してくれたテーブルセットに腰を掛けた。
おずおずと座る扇とセツ。
面倒なので等々力は気絶させたままだけどね。
何より僕はこいつにムカついてたんだ。
さっきの技。
僕以外なら死んでいた。
もし僕でなく…ティアだったら…
躊躇なくその力を振るう精神性。
――僕は許せない。
※※※※※
結果として。
彼等はやっぱり僕やルイの時代よりも30年くらい早い時代から来た者たちだった。
と言うか思い出した?
彼等は僕の魔力による惑星の掌握。
どうやらそれで、自分たちが転生者だったこと思い出したようだ。
そしてさらには覚醒した力。
後ね。
この人達、あの世界の“世紀末の人類滅亡予言”。
マジで信じちゃって大散財。
さらには暴走し、何故か国会議事堂に突貫したらしい。
そして『運悪く』何故か奥まで入れちゃって。
時の総理大臣をぶっ飛ばしたとか。
当然現行犯逮捕。
そして失意の中、彼ら3人はなぜか突然死。
まあ、詳しくは今から聞くんだけど…
――おい、創世神?
お前か?
流石にこれは…
笑っていられないのだけれど?
僕は静かに脳内で怒りを湧き立たせていたんだ。
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